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2006-11-23 12:54
米国人と中国人
四条秀雄
不動産業
米国と中国は世界で最もよく似た民族です。それは、両国が歴史的に最も諸民族の混交混住を経てきた経験と、その歴史が言語にもたらした変容に共通性があるからです。英語と中国語は地球の別々の場所で変容してきたにも関わらず構造がとても良く似ていて、両国民の感情表現の様式は非常に似通っています。発想も良く似ています。日本の親中派の人々がよく「日本は米中の仲介を」いう話をされますが、これはトンでもないことで、米中間は日本を挟む必要も無いほどスムーズに直接的に交渉が可能なのです。特にビックビジネスでは手を握りやすい関係にあって、先の戦争も、一面で見ると、米中の大企業家間の結びつきが日米の経済や政治や地政学の専門家の発言力を上回った結果の日本の孤立と敗戦だったと言えます。こういうことは日米中の三カ国間関係を考える時に前提として受け入れなくてはいけません。米中間のコミュニケーションは、日米間を上回るということです。そして、付け加えるなら、位置関係や国力、経済力から、米中は日露を潜在的ライバル国としているということです。現在は、中国の台頭による日米同盟強化が中露を接近させていますが、将来中国はロシアさえも翻弄することになるでしょう。
次に、米国と中国の違いについて考えると、宗教性・精神性において著しい違いがあります。両国人は感情表現などは似ているのですが、精神の根本にある方向性が異なっています。最終的に神やルールに従うかどうかという点では、まるで異なった民族といえます。逆に言うと、神やルールを無視するような局面のあるビックビジネスでは手を握りやすいと言うことです。米国人は、なんとか中国人に宣教しようと懸命なのですが、これは戦前の中国在住の米宣教師がどんなに迫害を受けても中国人を擁護したり、或いは宗教とは異なるのですが、共産主義シンパの米国人が中国を擁護したりした点などによく現れています。この左派系の人々は、戦後は中国派と日本派に分かれているようです。文面上では中国が共産主義の理想郷ですが、実態上では全く違い、日本の方が彼らの理想に近い状態だからです。この辺は、フランスでも同じです。日本はこれらの左派系の人々にも働きかけるべきで、日本と中国を比較できるような研修や旅行の機会を提供すべきです。そうすれば中国の張ってくる日本軍国化キャンペーンに対しても抵抗力となるでしょう。いずれにせよ、米中間には根源的な違いがあり、米国では究極的になにかを信じるということに基づいて、全ての政治・法・行政の制度がなりたっていますが、中国では逆に信じないということが社会の根本的原理です。従って、中国では、最後には必ず政治がルールを破ります。中国人は、ルールに確信を抱けない民族だからです。中国人が政治でルールを破っていく過程は、日中平和友好条約と尖閣諸島の関係で理解できます。そして清国の最大領土を人民共和国の領土とする以上、日中平和友好条約は、沖縄の日本への帰属を認めていません。現在は政治的理由から日本の占領を黙認していますが、やがては中国の教科書に沖縄の領有について記述が載ると思われます。その際に、沖縄の人間が何を考えようが関係はありません。それは台湾の人間が何を考えようが、台湾は中国に帰属し、それを否定するものは軍事力をもって処罰する姿勢を見せていることで理解できます。
それでは日本はどう行動したら良いのでしょうか?言うまでも無いことですが、(1)日本は、米国或いは米国とEUの形成するルール世界に所属するべきです。中国は、中国がルールを形成したいと考え、行動していますが、その世界は政治性が非常に強いため、見通しの悪いルール世界になり、日本にとっては不利な世界だからです。(2)日本は米国やEUと中国市場においてビッグ・ビジネス同士の戦いをすべきではなく(例えばトヨタはGMを脅かすべきではなく)、日本は中国市場で主要なプレーヤーであるべきではないと思います。日本は取引の当て馬にされるだけです。(3)米中が接近して困るのは、日本だけではなくロシアも同じであることを認識すべきです。日米中の三国で考えるのではなく、最低でも日米中ロの4国を全体とした枠組みで考えるべきです。(4)日中友好で最大の利得を得るのは中国であることを認識すべきです。特に、あと10年も経つと日本は貿易赤字の国になり、安定した供給国が必要になります。日本周辺の中進国にとっても日本は中国以上に魅力的な市場になります(5)中国に文化交流は通用しない。中国は、日本に対して文化交流を仕掛けてきますが、中国は主要時間帯でのマンガ規制のように必ずコントロールしてきます。彼らが中国国内で行う防御行為は、逆に言うと、中国が日本に仕掛けている工作行為なのです。(6)対中関係は、必ず米国EUと協調行動を取り、日中2国間での交渉はしない。対中関係の基本は、交流ではなくルールの遵守を求めること。以上のようなことだと思います。重ねて強調しますが、どんなに交流を進めても日中外交には効果はありません。そればかりか、交流政策が通用する諸国に対する資源を割いてしまっている結果、日本の外交能力は半減してしまうのです。例えば、交流政策はロシア向けの方が中国より有効だと思います。外見的特徴から、対中外交と対露外交が逆転してしまっています。ロシアとは韓国同様、領土から始めるべきではなく、また現状の暴力的傾向から経済外交も控えるべきですが、人的交流は拡大すべきです。対中外交で無意味な交流外交を続けず、資源をロシアやインドなどに振替えるべきです。そして、極端なことを言うと、日中外交にはほとんど外交資源を割くべきではなく、米国EUの対中外交に相乗りするだけで済ますのが最も効率的でしょう。現在の日本の対中外交は、本当に無駄で馬鹿げています。
最近の報道では、安部首相は民間企業1000社を組織して、中国の省エネと環境改善に協力するということですが、このような日本的心情から発した思い込みと自己満足の対中外交は世界を不安定にするだけでしょう。現在の日本のやっていることは戦前となんら代わりがありません。中国の成長は、日本の高度成長と違って、資本移動が自由で資金調達の制約が緩い時代に起きています。日本企業が財政規律を学んだ国際収支の天井のようなものはないのです。それに匹敵するものは唯一、日本の対中投資の変動だけです。中国にとって何が本当に必要であるかを考えず、技術に溺れた対中経済外交を続けても、関係を保ったが故に憎しみの対象となる結果を生むだけでしょう。現在の政権になってから、日本の対中外交には思い上がりがあるように思います。日本の技術が有効性を発揮するのは、資源の多くが市場で取引されるような状況であり、もし対中外交に省エネ省資源技術を組み合わせるなら、中国の資源獲得行動を市場調達志向に変更させる政策とセットでなければ合理的でありません。安部政権の対中外交は非常に危険だと思います。戦前日本の絶頂であった日露戦争1905年から30年後あたりから日本には暗雲が立ち込め始めましたが、ニクソンショックから30数年後の現在、日本は同じような道を歩こうとしています。
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