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(連載2)移民政策と植民地主義の共通点 ← (連載1)移民政策と植民地主義の共通点  ツリー表示
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・男性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-16 05:54 [修正][削除]
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3446/3446
 そして、今日、こうした傲慢な植民地主義が、グローバリズムという‘美名’をもって再び全世界を闊歩しているように見えます。かつての植民地主義程には露骨ではなく、外国人労働者の移住に強制力を伴うものではないにせよ、経済的目的を全てに優先させ、受け入れ国社会の負の影響を無視して人を移動させようとしているからです。

 東インド会社の如くに世界大でのビジネス拡大を目指す民間企業であれ、余剰人口を覇権主義的戦略に利用したい中国のような国家であれ、‘グローバリズム’は、移民政策、否、世界規模での移転を伴う‘人材利用’を推進するための格好の口実となっているのです。なお、周辺の諸民族を支配したソ連邦も、統制経済の下で‘計画的’に領域内の民族を定住地とは異なる他の土地に強制的に移住させたことで知られています(共産主義も新自由主義も、そのサイコパス的、かつ、合理的冷酷さにおいて共通点がある…)。

 このように考えますと、日本国の入国管理法改正案も、新たな植民地主義の顕れなのかもしれません。そもそも、同法案の発案者が日本国の政治家であったのかさえ不明です(年内成立は外国、あるいは、国際組織から命じられたミッション、あるいは、密約?)。人手不足を根拠としている点は経済利益優先であり(農地集約化が進む中での農業分野での外国人労働者の受け入れ拡大もプランテーション化の徴候か…)、また、日本社会における長期的なマイナス影響を無視している点も、植民地主義と共通しています。現代という時代は、近代にあって宗主国の地位を得ていた欧米諸国も、体よく‘植民地’にされている時代なのかもしれません。

 あまりに多くの問題とリスクを含むため、与党からも疑問の声が上がり、国会の審議にあっても紛糾が予測されるため、同法案が国会ですんなりと可決されるかどうかは不透明です。今であれば、将来における移民問題の発生を未然に防ぐことができます。欧米諸国にあって反移民・難民の世論が勢いづく中、本法案は廃案とし、これを機に、人類史を踏まえた上で移民政策を抜本的に考え直してみるべきなのではないでしょうか。(おわり)

(連載1)移民政策と植民地主義の共通点  ツリー表示
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-15 20:02  
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3445/3446
 今般、政府から提出された入国管理法改正案は、特定技能2号の設置により外国人労働者の定住化をも視野に入れ、さらに多文化共生主義の元での地域受け入れ態勢の整備をもセットとしているため、事実上の移民政策とする評があります。先進国におけるグローバリズムに伴う移民問題の発生は近年来の出来事であるため、同問題は現代社会が抱える固有の問題の一つと見なされがちですが、人類史を俯瞰しますと、人の移動は戦争や内戦、あるいは、奴隷制度など様々な禍の元凶ともなってきました。

 アジア・アフリカにおいて植民地化された歴史を有する諸国を見ましても、人為的な人の移動は今日に至るまで癒しがたい傷跡を残しています。例えば、昨今、国際社会の関心を集めているミャンマーのロヒンギャ問題の背景には、英東インド会社による同地帯の支配があり、同社から領土を引き継いだ大英帝国の負の遺産とも言えます。歴史的経緯からすれば、ミャンマーを追われたロヒンギャの帰還先も、出身地であるバングラディッシュとする見方もできるわけですので、国際社会がロヒンギャの人々はミャンマーに‘帰還’すべきと決めつけ、ミャンマー政府を一方的に批判するのは、どこか不条理なようにも思えます(既に東インド会社は解散しており、真の責任者は常に歴史の背後に隠れているという問題もある…)。

 ミャンマーよりも深刻な問題を抱えたのは南太平洋のミニ国家の一国であるフィジーです。同国では、英領時代にあって、砂糖プランテーションの契約労働力としてインドから労働者が強制的に送り込まれました。この結果、インド系住民の人口の増加によりフィジー系が56.8%、インド系が37.5%となり(2007年時統計)、1995年には初のインド系首相も誕生しています。現在では、フィジー系とインド系との融合も進んでいるとはされますが、外部からのインド系住民の流入により、フィジー島の社会が大きく変質せざるを得なくなったのは否定し難い事実です。

 上記の二つの事例は、移民側も受け入れ側も双方とも植民地の住民であり、東インド会社、あるいは、宗主国が、現地社会の混乱や負担、並びに、長期的な影響を全く考慮せず、経営者、あるいは、統治者の立場から、支配地の人々を人為的に移動させた結果として発生した問題です。こうした問題は、両国に限らず、植民地支配を受けた諸国に共通してみられ、移住させられた側に‘侵略’の意識はなくとも、異質なものに対する本能的な警戒心や拒絶感から、現地住民との間に軋轢や対立が生じてしまうのです。植民地支配の罪深さは、その経済優先主義による植民地社会の破壊と混乱にあり、入国管理権を失った側は、絶え間ない外部からの人の移入というリスクに晒され続けるのです。(つづく)

(連載2)試練を迎えた中国の新聞学院 ← (連載1)試練を迎えた中国の新聞学院  ツリー表示
投稿者:加藤 隆則 (非居住者中国・男性・汕頭大学長江新聞與伝播学院教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-13 07:49 [修正][削除]
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3444/3446
 では、学生はどこに就職するのか。教師は何を教えればよいのか。実は新聞学院の就職率はトップクラスに入るほどよい。従来のメディアだけでなく、ネット業界から企業の広報部門、教育機関まで、重宝されている。文章が書け、コミュニケーション能力があり、問題意識も高いとの評価が定着している。だが、学生やその両親からすると、「新聞(=ニュース)」の名前はあまりにも古く響き、理系のほか、法学部や経済学部の方に目が行ってしまう。確かに、将来記者になるつもりのない学生たちに、記事作成やインタビューの技術を教えても、興味がわかないのは当然だ。文章、交流、洞察の能力を高める伝統的新聞教育の核心部分は大事にしながらも、時代の変化に応じた変革をしなければ、業界とともに学界も衰退していくしかない。

 学部内での会議ではしばしば、伝統派と革新派が激しく対立する。育った年代の差でもある。そして最後は、大学とはなにか、なにを教える場なのか、という論点に帰結する。就職にすぐ役立つ技術を教えるだけでは、専門学校と同じではないのか。実際、単位は3年で履修し、4年目はインターンシップに追われる現状を見る限り、その指摘も外れてはいない。大学教育の定義は、人によって千差万別で、義務教育のような指導要領があるわけではない。要は教師が全身全霊を捧げ、自己の理想とする学びを実践する場なのだ。私はといえば、異なる文化と経験を学生と分かち合いながら、メディア、ニュースといった身近なキーワードを通して、自分を見つめ、周囲との関係を問いただし、独自の社会観、世界観、ひいては人生観を模索すること、を教育の柱としている。主体と客体を明確に分け、情報伝達を刺激と反応として機械的にとらえる従来のコミュニケーションモデルはもう古い。

 個人を機械の歯車の一つとして扱う大衆理論は、インターネット空間の分析にふさわしくない。心と脳、身体を分離するデカルト以来の二元論ももはや時代遅れだ。人は独立、孤立しているのではなく、周囲の環境と不可分に存在している。客観的に、機械的に情報を受発信しているのではく、主観的に情報をやり取りしている。理性と同時に感情や無意識の役割にも気を配らなければ、自分はなにか、という問いにも答えが出せない。人工知能(AI)がますます進歩し、人間の知能を超えるのではないかといわれる。だからこそ、長い進化の中で生まれた身体の役割をもっと深く認識しなければならない。

 ネットをはじめARやVRなど、バーチャルな空間が拡大しているからこそ、現場にいることを実感する身体の意義は重い。AI研究をはじめ、脳神経学、生物学、認知科学、情報工学、進化心理学、行動経済学など、各学問領域の成果を大胆に取り込み、過度に専門化した学術界の弊害を取り除かなければならない。新聞学院は、読んで字のごとく「新しく聞いたもの」を扱う。それはニュースに限らない。厳格な専門分野を持たず、雑多だからこそ、学際的な役割を担うのにふさわしい。私の夏休みの課題はまさにこの点にあった。前学期は、ロボット3原則にならってAI5原則を起草したが、今学期はこの内容をさらに深め、2・0版に挑んでみようと思う。(おわり)

(連載1)試練を迎えた中国の新聞学院  ツリー表示
投稿者:加藤 隆則 (非居住者中国・男性・汕頭大学長江新聞與伝播学院教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-12 14:01  
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3443/3446
 9月、2か月余りの夏休みを終え、勤務する中国の汕頭大学新聞学院(ジャーナリズム学部)に戻った。新入生を迎える準備で大忙しだ。亜熱帯地方で日差しが厳しいが、下から横からと熱気に包まれる東京の暑さに比べれば、緑が多い分、過ごしやすい。東京では連日、自宅近くの図書館に通い、新学期の準備をした。中国の新聞学院は本来、記者養成の機関だが、メディア環境の変化によって、存在意義が問われ、生き残りの試練に立たされている。教師は学生以上に学ばなければ取り残されてしまう。中国共産党は剣(軍事)と同様に、ペン(宣伝工作)を重んじ、その伝統が今に引き継がれている。「党の喉と舌」となる人材を育てる新聞学院は、非常に高い位置を与えられた。中国の主要大学にはもれなく新聞学院が設置され、様々な報道機関に人材を輩出してきた。

 だが、インターネットの発展によって新聞やテレビといった伝統的メディアの足元がぐらついている。いまだにメディアが戦時体制の寡占状態に守られている日本とは異なり、中国は市場化の進み方が激しく、紙媒体は続々と淘汰されている。新聞学院でももはや紙の新聞を目にすることはない。日本ではしばしば、党や政府の意向を代弁した中国メディアの報道が伝えられるが、実を言うと、そうした官製報道を目にしている学生はほとんどいない。新聞購読者は皆無で、みな携帯のSNSを通じて多種多様なニュースに接し、時には自ら発信者となっている。こうした双方向の情報受発信が一般化するにつれ、従来の記者像に大きな変化が起きるのは避けられない。

 伝統的メディアは就業の機会も減り、そもそも希望者が激減している。待遇も決してよくはなく、業界の発展も望めない。新聞学院の試練もそこから来ている。6月の卒業と同時に新聞社に就職した卒業生からは、早くも不動産業界に転職したとの知らせが届いた。集権化を徹底させる習近平政権は、当然のことながら言論・イデオロギー統制も強化しており、「党の喉と舌」を担う官製メディアの画一化が際立つ。簡単に言えば、新聞は『人民日報』、通信社は『新華社通信』、テレビは『中国中央テレビ(CCTV)』のそれぞれ1社があれば十分だ、ということになる。あとのメディアは、せいぜい補助の役割しか担わされない。

 ネットに進出しても、ニュースはもうからないので、多数のアクセス数を稼ぐことのできる娯楽性の強い映像が幅を利かせる。専門性は度外視されるので、記者の就業機会が狭まるのはやむを得ない。こうした情勢を受け、各大学の新聞学院は、伝統的な記者養成のカリキュラムを変更し、ネットでのニュース発信を想定した「新媒体(ニューメディア)」学科を増設している。御多分に漏れず、私が籍を置く広東省の汕頭大学新聞学院でも、従来のジャーナリズム、映像、広告の各学科に加え、「インターネット・ニューメディア学科」が誕生した。募集枠もいきなりジャーナリズム学科を超えた。(つづく)

韓国大法院「徴用工判決」はウィーン条約26条違反   
投稿者:加藤 成一 (兵庫県・男性・元弁護士・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-10 20:37 [修正][削除]
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3442/3446
 韓国大法院(最高裁)は、10月30日、日本による朝鮮半島統治時代に「強制労働させられた」として、「元徴用工」の韓国人4名が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、同社に賠償を命じた2審判決を支持して同社の上告を棄却した。これにより、原告の請求通り計4憶ウオン(約4000万円)の賠償を命じる判決が確定した。日本政府は、「元徴用工」個人の請求権問題は1965年の「日韓請求権協定」で解決済みとの立場であり、同社も同様の主張をした。しかし、韓国大法院は、「元徴用工の損害賠償請求権は、不法な植民地支配や侵略戦争遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為によるものであるから、日韓両国間の債権債務関係を政治的合意で解決した日韓請求権協定では消滅していない」との判断を示して、同社の主張を退けた。韓国では日本企業を相手取った同種の訴訟がほかにも14件あり、請求額は計232憶ウオンに上るが、日本側の敗訴が相次ぐ公算が大きい。のみならず、今回の判決により同種の訴訟が新たに数多く提起されることが懸念される。
 
 しかしながら、周知のとおり、日韓両国は、1965年に日韓の国交正常化のために戦後賠償に関する「日韓請求権協定」を締結している。この協定に基づき日本が韓国に無償3憶ドル、有償2憶ドルを供与し、さらに、民間借款3憶ドルの融資を行った。民間借款を加えた合計8憶ドルは、当時の韓国の国家予算3億5000万ドルの2倍を超える巨額である。この結果、韓国は驚異的な経済発展を成し遂げた。協定書2条には、「両締約国は、両国及びその国民の財産、権利、利益及び請求権の問題が、完全且つ最終的に解決されたことを確認する。」と明記されている。したがって、この条項には、明らかに「日韓両国国民個人の請求権」も含まれており、この条項により、「元徴用工」個人を含め、日韓両国国民個人の相手国及び相手国企業に対する財産、権利、利益のみならず、請求権も消滅したと解すべきである。なぜなら、「日韓請求権協定」締結当時、日本政府も韓国政府も共に「徴用工問題」がこれに含まれると解釈し合意しており、無償3憶ドルはそのための資金でもあったからである。

 ところが、1991年8月27日柳井俊二外務省条約局長は、参議院予算委員会で「日韓請求権協定は個人の請求権を国内法的な意味で消滅させない。日韓両国間で政府として外交保護権の行使の対象にしないとの意味である。」と答弁した。これは誤解を生じさせる答弁であったと言えよう。なぜなら、これ以降、韓国から個人請求権を根拠とした訴訟が相次ぐようになったからである。仮に、この「柳井見解」によるとしても、「両国間で請求権問題等を完全且つ最終的に解決した」協定書2条の趣旨からすれば、「日韓請求権協定」によって「元徴用工」個人を含め、相手国及び相手国企業に対する個人請求権はもはや消滅し、自国政府に対する個人請求権のみ消滅していないと解するのが相当である。今回の韓国大法院判決の多数意見は、前記の通り、「徴用工の損害賠償請求権は、不法な植民地支配や侵略戦争遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為によるものであるから日韓請求権協定によっても消滅しない。」としている。しかし、仮に、百歩譲って上記の「事実関係」が真実であったとしても、「日韓請求権協定」の締結に当たって、韓国政府は韓国国民を代表して、上記の「事実関係」を把握し認識したうえで、無償3憶ドル、有償2憶ドル、民間融資3憶ドルによる解決を承諾し合意しているのであるから、締結から50年以上経過した現在に至って、国の機関である韓国大法院がこの合意を無効にすることは、後記ウイーン条約26条に定める「条約順守履行義務」に違反し、国際法上も到底許されないと解すべきである。のみならず、韓国大法院の上記「論法」を使えば、あらゆる条約や協定の効力を後からいつでも無効にすることが可能となり、国家間で条約を締結して問題を解決する意義がなくなり、条約や協定による合意が全く無意味になるだけでなく、国際法上の「法的安定性」を著しく阻害するであろう。このことは、韓国政府が事実上「反故」にしている日韓両国間のいわゆる「慰安婦合意」についてもまさに同じである。このような事態が繰り返されれば、国際社会において「約束を守らない国」としての韓国の否定的な評価が定着するであろう。

 日本国憲法98条2項の規定と同様に、大韓民国憲法6条にも、「この憲法に基づいて締結、公布された条約及び一般的に承認された国際法規は国内法と同等の効力を有する」と規定され、条約及び国際法規の順守履行義務が定められている。のみならず、韓国も加盟している、条約法に関するウイーン条約26条には「効力を有するすべての条約は当事国を拘束し、当事国はこれらの条約を誠実に履行しなければならない。」と規定されている。韓国大法院にも国の機関として国家間で締結された条約や協定の順守履行義務があることは明らかであるから、今回の大法院判決は、大韓民国憲法6条及びウイーン条約26条にそれぞれ違反し、韓国国内法上のみならず、国際法上も違法無効の判決であると断ぜざるを得ない。したがって、韓国政府は、「日韓請求権協定」に基づき、日本から無償3憶ドル、有償2憶ドル、民間借款3憶ドルの給付及び融資を受け、著しい経済発展を成し遂げたのであるから、すべて韓国政府の責任において「徴用工問題」を解決すべきは当然のことである。万一、韓国政府がこれを履行しない場合は、日本政府としては「日韓請求権協定」に基づき、国際司法裁判所への提訴も重要な選択肢であろう。なお、日本共産党は、今回の韓国大法院判決に関して、前記の柳井俊二外務省条約局長の答弁などを引用し、「日韓請求権協定」によっても、元徴用工個人の請求権は消滅していないから、日本政府は韓国政府と話し合って「徴用工問題」を解決するよう求めている(「しんぶん赤旗日曜版」11月11日号)。これは、「元徴用工」個人の請求権問題等を含め完全且つ最終的に解決した1965年の「日韓請求権協定」を完全に無視し、国際法違反の韓国大法院判決を支持するものであり、前述の理由により重大な誤りであるだけでなく、日本の国益を著しく害する主張であると言えよう。

先の日印首脳会談の考察   
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-08 13:41 [修正][削除]
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3441/3446
 インド人学者と、日印首脳会談の成果などについて懇談した。その内容を紹介したい。同学者は「10月末にモディ・安倍両首脳の会談が行われ、26の覚書が交わされた。日米関係と同じく、閣僚級2+2の立ち上げ、印における新幹線への円借供与など、環境、衛生、農業、宇宙など幅広い分野での相互協力がうたわれた。明文化されていないが対中国が狙いだ。印は、中国の益々ひどくなる強圧ぶりに危機感を強めている。印の周辺国は、中国の援助・融資などで取り崩され、印が自分の経済圏とみなしていたアフリカ東沿岸諸国も浸食されている。ただ、日本と微妙に異なるのは、同じ民主主義国同士として、ある程度の連携はするがまだ途上国として、中国とも歩調を合わせるということだ。AIIBのメンバーであるし、新開発銀行(通称、BRICS開発銀行、NDB、本店は上海)には、総裁を出している。中国から資金援助も受けている。最近、米国は、対中戦略の一環で、とみに印へすり寄ってきている」と述べた。

 また安全保障に関して、同学者は、「米国は、印のことを”Major Defense Partner”と呼びだしたり、『太平洋軍司令部』を『インド太平洋軍司令部』に呼び名を変えたりしている。しかし、印は歴史的経緯もあり、米国には全面的には寄り掛からない。武器。装備の大半は依然ロシアからだ。対中国でも、是々非々の対応を目指す。刺激しないように極めて慎重にふるまっている。印中の経済力は、30年前に鄧小平が『改革開放』を開始したころから比べるとだいぶ差が開いてしまった。米の関係者は、中国は人口的にも老いていく、今世紀の中ごろには印が凌駕している可能性もあるなどとおだてるが、やってみなければわからない。中国は、北の国境線では、軍隊が対峙し、隣国パキスタンへ『一帯一路』に名を借りて630億米ドルのインフラ支援などを行い、印を苦しめている。しかし、日本が移動通信システムの第5世代(5G)突入時代を迎え、政治の話を抜きに中国、韓国と商用化に向け共同歩調を進めようとしているように、中国とは連携できるところは手を結んでやってゆくのだ」と述べていた。

 さらに同学者は「一方、あらゆる面において対中警戒感は緩めないのだ。米の安全保障関係者と話していて、彼らの対中防衛での日本への期待は大きいが、日本の法的未整備による情報の漏洩を恐れている。日本に来て、軍人の社会的地位の低さに驚愕した。中国の影響力が増しているとして沖縄ばかりが騒がれているが北方の都市の友好団体などの取り込み工作については鈍感だ。中国の南の海上シルクロードにばかり日本の目が行っているが、グローバルな展開を目指す中国は、対北米、あるいは、北極海ルートを通じての欧州への進出も狙っているのだ。北海道太平洋沿岸の港湾は、中継地として是非確保したいところだ。日本人は共産党の人民工作のすごさを軽視している。極めて早い時期から、中国がアイスランドを取り込んでいたことを忘れてはならない」とも述べていた。

 最後に日印首脳会談の成果について、同学者は「会談で、安倍首相は『日印両国は核兵器のない世界の実現目標を共有した』と述べ、モディ首相は『核兵器のない世界を目指すことは共通の目標』と対応したが、これはあくまでも日本国内向けの言葉だ。現実として印は核を持つパキスタンと対峙している。報道によれば今年に入り尖閣周辺の接続水域に初めて中国の潜水艦が入ったといわれている。これに対しての、大部分の日本人の鈍感さを米の関係者は心配していた。現在の科学技術の水準において、日本が真に海洋安全保障を、印、米と取り組むならば、原子力潜水艦を使えないということは大きなハンデを負う話になる。今回の協力プロジェクトの内、安全保障関係者が注目しているのは『物品役務相互協定(ACSA)』で、米も期待しているようだ。気の早い印のメディアは、日本の海軍が間もなく印の港にきて給油を受けたりするのだと書き立てたりしている。こうした期待感が裏切られた時の幻滅は大きい」と述べた。

バチカンにみる中国の対台湾外交攻勢   
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-06 11:44 [修正][削除]
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 カトリック教徒の台湾外省人学者などと、バチカン問題について懇談した。その内容を紹介したい。

 同台湾外省人学者は「台湾は、現在の蔡英文政権が登場した時には外交関係は22か国あったが、この2年余りで、サントメ・プリンシペ、パナマ、ドミニカ共和国、ブルキナファソ、エルサルバドルと中国の対台湾外交攻勢で5か国が国交断絶に至った。中国は金銭外交や脅しその他の手段で、これら諸国の内政経済に介入し、思うが儘にふるまっている。台湾は欧州に唯一、バチカンとの国交をもっているが、これは心理的にも極めて重要なことだ」と述べていた。

 また「バチカンと中国とは司祭の上の階級である司教の任命権について意見の対立が在り、ずっと両者は背を向けていた。中国政府は地下教会の神父などを恣意的にとらえ牢獄に入れたりしている。しかるにこの9月現フランシスコ法王は、中国の司教任命権を認める形で暫定合意をしたようだ。全貌が公表されていないので不明だが。これが即、中国との国交樹立、台湾との断絶に進むのかは分からない。バチカンからは、台湾の教会関係者に台湾を見捨てることはないとの連絡もある。宗教はアヘンだと排除してきた共産党が、使えるものは何でもということで、台湾への外交攻勢の一環として、どう出るかは予断を許さないものがある」と述べていた。

 さらに、この話題に興味を持つ米の学者と話をした。彼は「フランシスコ法王は、南米アルゼンチンの出で、南米は軍事政権などの強権政治が多く、その中でクリーンな要素を持つのは、左派、共産主義者などといわれる。それで、法王は共産党に幻想を抱いている。EUなどは、台湾問題などには興味を持たないが、米は、ニューヨーク・タイムズなどが一面で、危惧の念を持った記事を載せたりしている。法王は、また、2代前のポーランド出身のヨハネ・パウロ2世が、冷戦末期ポーランドの民主化運動のグループであるワレサなどの指導する連帯などと組んで欧州における民主化、冷戦終結に多大な功績を残したので、それにライバル心を持つとの見方も出来よう。また、中国においてカトリック教徒の数は,新中国登場の70年前には、プロテスタント教徒数より多かったのに、いまや9対1の割合で引き離されている。それに焦りを持っているのかもしれない。法王はイエズス会の会員で、日本に対し極めて思い入れが深い。この5月には法王選出の選挙権を持つ枢機卿に、大阪の前田大司教を任命した」と述べていた。

日韓は薄氷の関係に   
投稿者:岡本 裕明 (非居住者カナダ・男性・海外事業経営者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-06 10:15 [修正][削除]
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3439/3446
 徴用工をめぐる韓国最高裁判所の判決に、日本のメディアは大きく反応しました。判決そのものについては報道で十分カバーされているので少し視点を変えて考えてみます。韓国の憲法裁判所が近年、それまでの常識を覆した判決は2011年8月の元慰安婦の個人請求権に関してであります。「韓国政府の不作為は違憲である」としたのです。これを受けて韓国国会は同年9月に日本政府に対して元慰安婦に対する公式謝罪と被害賠償を求める議案を通過させました。時の大統領は李明博で彼は「感情の仮面」を取り去り、対日外交姿勢を急転回させ、竹島に行き、天皇陛下に日王と称し「ひざまずいて謝れ」と言ったことはあまりにも有名であります。

 韓国社会において憲法裁判所の判決は三権分立のさらに上に立つともされ、誰もがその内容に服従しなくてはいけないという枠組みの背景があります。今般の徴用工の裁判には時間がかかり、数日前には朴槿恵政権下の担当官が裁判の「時間引き延ばし工作」をしたとして逮捕されました。思うに朴元大統領もこの判決が出れば自身の対日外交政策に非常に重くのしかかると想定していた節はあるのでしょう。元慰安婦の判決がもたらした日韓関係の悪化は言うまでもありません。同判決を受け、慰安婦像を国内のみならず、海外にも建立し、その勢いが止まらない中、安倍首相は2015年、朴元大統領政権下の韓国と日韓合意をします。この時、慰安婦問題が「最終的、不可逆的に解決される」とし、財団を設立し、10億円の基金をでスタートさせることになったのです。これは世界中が注目し、全ての人がその証人として何が合意されたか理解しています。が、その合意は破られ、財団さえ解散されようとしているのです。

 慰安婦問題の時は当事者が日本政府であったことと内容が内容だけに見て見ぬふりをする日本の方は多かったはずです。ところが今回の徴用工問題は多数の民間企業とビジネスという要素が含まれることからその影響力は慰安婦問題の時とは比較にならないマグネチュードがあると考えています。今回の憲法裁判の内容が国際常識に照らし合わせて無茶苦茶であることは言うまでもありません。勝手な想像ですが、裁判官らは仮に日本に有利な判決をした場合自分たちが血気盛んな韓国人から血祭りにされることを恐れた世論同調型の判決(「国民情緒法」とも揶揄される)であったことは否めません。判決ありきの裁判でした。手法としては今後、国際司法裁判所への提訴もあり得ますが、これは両国が同意しなくてはならず、韓国政府がそれをするとは思えません。(竹島案件でも同意していません。)同意しないのは自国の最高機関の司法判断が仮に覆された場合の威厳の崩壊を気にしているのでしょうか。

 実際の対策としては、徹底的な民間ベースでの事業断絶と情報のシャットダウンをするしかありません。つまり裁判や外交といった公的なプロセスに過大に期待せず、企業が韓国への信頼度を再度検証した上で「コリアリスク」を経営指標に取り込み、毅然たる態度をとることであります。また、今後どれだけ同様判決が出ようとびた一文払うべきではないでしょう。日本政府はそれら企業を守るリーガルシールド(法的防御策)を急ぐべきでしょう。当然ながら日韓の外交は冷たい時代を迎えます。その向こうの北朝鮮も日本に厳しい姿勢を続けているのですから北朝鮮外交云々以前の問題に引き戻されてしまったと考えています。

国による行政不服審査請求「適格性」の法理   
投稿者:加藤 成一 (兵庫県・男性・元弁護士・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-05 19:54 [修正][削除]
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3438/3446
 石井啓一国土交通大臣は、平成30年10月30日米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に関し、沖縄県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回処分の効力を一時停止した。これは、国(防衛省沖縄防衛局)が10月17日行政不服審査法2条及び25条に基づき、国土交通大臣に対して承認撤回の取り消しと執行停止を求めた行政不服審査請求に基づくものである。同大臣は効力停止の理由として「工事を行えない状態が継続すれば経済的損失のみならず、普天間飛行場周辺住民らが被る危険性の除去や騒音などの被害防止の早期実現が困難になる。」(10月31日付け「産経新聞朝刊」)と述べた。これは普天間飛行場の早急な危険性除去等の観点からしても妥当な判断であると言えよう。効力停止決定を受けて沖縄県の玉城デニー知事は、10月30日「結論ありきで法治国家にあるまじき対応だ。」と反発し、近く国地方係争処理委員会に不服を申し立てる意向を示した(前掲新聞)。

 今回埋め立て承認の撤回をした沖縄県の玉城知事や、共産党などの一部野党、普天間飛行場の辺野古移設に反対する行政法学者・研究者らは、いずれも、行政不服審査法は一般国民の権利救済を目的とするものであり(同法1条1項)、国はその「固有の資格」で処分を受けたから不服審査請求をする「適格性」はなく違法であり、法制度の乱用であると批判している。これに対して、上記効力停止決定では、「適格性」について、「審査請求をなし得る者は、行政庁の処分に不服がある者であり(同法2条)、申立人のような国の機関であっても、<固有の資格>においてではなく、一般私人と同様の立場で処分を受けたものであるから、当該処分について審査請求をなし得る。」(10月30日付け効力停止決定書)と判断している。

 この判断は、仲里利信衆議院議員の「国が行政不服審査請求を行うことの適格性等に関する質問主意書」に対する平成27年7月21日付けの閣議決定された「政府答弁書」の見解と同じである。同答弁書は「一般私人と同様の立場において処分の相手方となる場合には、不服審査請求ができるものと考える。」と答弁している。今回の不服審査請求において、国は「私人と同様の立場」の理由として、国は仲井真元知事から通常の事業者と同じ手続きで埋め立て承認を得たことを指摘している。確かに、公有水面埋立法42条によれば、たとえ国であっても、埋め立てには県知事の承認が必要とされており、この点においては一般私人と変わりはない。そうすると、国は、埋め立て承認を得たのちに今回承認撤回処分を受け不利益を被ったのであるから、当該処分について一般私人と同様の立場で行政不服審査法2条に基づく不服審査請求が可能であるとの法解釈も不合理とは言えないであろう。
 
 ところで、日本の行政法学の権威であり元最高裁判事の藤田宙靖東北大学名誉教授は、平成8年9月17日法務省訟務局での「行政主体相互間の法関係」に関する講演で、「我国の実定行政法においては、行政上の権利義務の主体である行政主体と私人という単純な二元論のみでは成り立っていない。様々な法律・法制度では各種の行政主体が私法上の財産管理行為にとどまらず、通常の私人と全く同じ法的立場で他の行政主体との法律関係に入るケースが広く登場している。ドイツやフランスの行政法学でも同じであり、国が行政主体でありながら、私人と同様の法的立場に立つことが広く認められている。行政主体と私人を区別する概念として<固有の資格>があるが、固有の資格は、法律がその事業等の規制にあたり、私人であるか行政主体であるかを区別せず、同じ規制で行っているかどうかで判断すべきである。」と述べておられる。「固有の資格」に関する上記判断基準は合理的であり、本件についても適用し得る「法理」と言えよう。したがって、公有水面埋立法42条に基づき国が一般私人と同様の手続きを経て県知事の埋め立て承認を得たのちに、後任の県知事から承認撤回処分を受けた以上は、一般私人と同様の立場での行政不服審査請求も法的に可能であると解すべきであろう。ただ、この点に関する最高裁判例は存在しない。

文大統領の苦しい国家運営と支持率の関係   
投稿者:岡本 裕明 (非居住者カナダ・男性・海外事業経営者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-02 19:19 [修正][削除]
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 安倍首相の訪欧と時を同じくして文大統領も訪欧し、同時期に違う主張を聞かされる欧州首脳がどういう反応をするのか、メディアはあまり報じないのですが、なかなか興味深いものがありました。結論からすると安倍首相の勝ちです。双方の圧倒的相違点は北朝鮮問題で、文大統領の今回の目的の一つに北朝鮮との融和を韓国が主導し、演じることで北朝鮮への制裁緩和を求めるというものでした。ところが欧州の首脳はCVID(完全かつ検証可能で不可逆的)方式にこだわりました。特に国連安全保障理事会の常任理事国である英国とフランスに韓国式非核化プロセスと対北朝鮮支援策に理解を求めようとしたようですが、同意を得ることはできませんでした。

 むしろ、フランスのマクロン大統領においては、そのあと会った安倍首相にCVIDだよね、と双方の確認をしています。文大統領は金正恩委員長と直接対話をしており、「もっとも北朝鮮を知る男」として「ぜひ、私にやらせてほしい」と訴えたかったのだろうと察します。ところが欧州諸国は連れない返事で青瓦台(韓国大統領府)は今回の訪欧は70点ぐらい、と評しています。70点とはスコアでCです。つまり、ほとんど及第ギリギリだったわけでめぼしい成果はなかったとみるべきでしょう。その中で韓国側が唯一、自慢するのがローマ法王の北朝鮮訪問への道筋ができたと主張する点です。これは金正恩委員長からのローマ法王の北朝鮮招待を口頭で述べたのに対しての返事とされます。青瓦台は「ローマ法王が文大統領が要請した訪朝に対し予想を超えるほど積極的な返答をした。法王庁の動きも国際社会の世論形成に大いに役立つだろう」(中央日報)とありますが、これはいくつかの英語圏をチェックする限りそんなに進展があった話ではなく、社交辞令の域を超えていないように見えます。

 そんな文大統領、韓国国内では引き続き人気があり、世論調査では波があるものの65%程度を維持しています。なぜだろう、と思う方も多いでしょう。私の考えは国内経済がさっぱりでどうしても左派政権にすがる、ということではないかと思います。不思議なもので国内の景気が悪くなると国民はその責任を現政権に押し付けます。そして往々にして右派系与党の政策がうまくいかなくなり左派系に政権交代する、という流れをとることが多いのです。日本でも自民党から民主党に政権交代した時は日本がドツボにはまっていた頃です。幸いにして日本はすぐに政権担当能力がない、と左派を切り捨てることができたのですが、韓国はその前に右派そのものを潰してしまい、国民に選択肢を与えようがなくなってしまった、というのが私の見方です。

 韓国の中央銀行が発表した18年経済成長率の見直し版は0.2%ポイント下方修正の2.7%で、潜在成長率を維持できない状態になっています。若年層(15-29歳)の失業率は10%を超えます。さらにサムスンが破竹の勢いで伸ばしてきたメモリー部門、モバイル部門、ディスプレー部門全部に黄色信号がついています。国民にとって経済が不振となればそのストレスを発散する何かが必要であり、その切り札が北朝鮮との終戦を含む関係強化であったはずです。しかし、東西ドイツが合体した時、西側ドイツがどれだけ苦しんだかは歴史が物語っています。つまり、ドイツほどの国家ですら、経済格差がある国との統合は容易ではないことは明らかです。文大統領が今やらなくてはいけないのは自国経済の立て直しでありますが、左派の彼には厳しいものがあると思います。そして右派をつぶしてしまった今、朝鮮半島の軋みが聞こえてきそうです。

「元徴用工」判決が生む無際限なリスク   
投稿者:松田 純 (長野県・男性・法科大学院生・20-29歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-01 14:31 [修正][削除]
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3436/3446
 韓国の元徴用工が新日鉄住金に損害賠償を求めていた裁判の結果に、多くの日本人が衝撃を受けたに違いない。韓国最高裁は 10月30日、ひとりにつき1億ウォン、日本円にしておよそ1000万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。韓国の最高裁判事らは、自分たちが確定させた判決が日韓関係を土台から破壊する効果を持つことを当然理解しているであろう。法曹というものは、駆使する国内法こそ各国固有のものであれ、習得しているそのリーガルマインドに関して言えば国境を超えて普遍性があるものである。少なくとも私はそう信じてきたが、最高裁が確信犯的に政治的影響力を行使せんとしたとしか思えない今回の判決はそうした期待を破壊された思いである。

 いわゆる「徴用工」問題自体について語ることはしないが、少なくとも法学上明らかなのは、1965年に締結された「請求権・経済協力協定」によって「完全かつ最終的に解決された」同問題については条文上の多義性も一切なく、解決済みとする日本政府(更には韓国政府)の解釈はゆるぎようがない。また、今回の韓国最高裁の判決を養護する第三国は一切いないであろう。そのようなことが認められれば、条約による請求権の確定が死文化されてしまい、かつての列強と旧植民地との外交関係は抑制が効かなくなってしまうからだ。外交上も、同協定に基づき日本政府は韓国政府に総額5億ドルの経済協力を実施し、韓国政府がこの資金を運用して徴用で死亡した人にひとりあたり30万ウォンを支給した歴史的事実があり、日本の道義的責任は果たされたと言えるだろう。

 左派の盧武鉉大統領ですら、「徴用工」問題を外交問題化できないか検討を行ったが同協定の法的な効力を否定することはできず「解決済み」と結論づけている。つまり、「徴用工」問題を法律的に蒸し返すことは明らかに無理筋なのである。ところが本判決では、日韓併合条約を「国際法に反する強占」と一方的に断じ、「植民地支配に基づく不法行為などは請求権協定の対象に含まれない」とし、新日鉄住金に賠償を命じたのである。この論旨の意味するところは、日韓併合後に日本の資本によって行われた朝鮮半島でのあらゆるビジネスが不法行為と認められる状況が生まれたということである。字義通りに解釈すればあらゆる朝鮮半島住民が損害賠償を求める請求する道筋ができたと言えよう。戦前から続く歴史ある日本企業は軒並み無歳限の損賠リスクを負わされることになる。

 韓国最高裁の確定力が及ぶのは韓国国内に過ぎず、新日鉄住金の日本国内の資産が差し押さえられたりすることはないが、韓国国内に資産があればそこから補償を強いられることになろう。だが、司法府自体には執行力はないため、新日鉄住金が自主的に原告に補償するでもしなければ、行政府が判決に基づいて強制執行を行うことになる。そうなれば、韓国政府が矢面に立つ事になり日韓両政府間で紛争が生じることになろう。それを踏まえて、同協定には、「協定の解釈及び実施に関する紛争は、まず外交上の経路を通じて解決する」とする条文があることを思い出されたい。最高裁からの無理筋な援護射撃を受けて青瓦台がどう動くのだろうか。合理的に考えれば協定に基づいて韓国政府が新日鉄住金に代わり「再」救済するのが穏当であろう。他方、日本が国際法上明らかに有利であるからと言って法律論で押し切ろうとすると足元を救われかねない。第二次世界大戦絡みでは日本は世論戦で失敗しがちである。日本政府が「毅然として対応」し国際世論を味方につけることが肝要だ。本判決で日韓関係は極端に悪化するであろうが、可能であれば早期に日韓両政府が「外交上の経路を通じて解決」することを望む。

安倍総理訪中から考える   
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-01 12:28 [修正][削除]
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3435/3446
 安倍総理の訪中が終わった。この訪中について論じると、10月30日付けの姉妹政策掲示板「百花斉放」に掲載された杉浦正章氏の「中国の対日大接近は『強国路線』の一環」の結論「安倍は日米同盟関係を維持しながら、対中関係改善で経済的利益を最大化するという、サーカスでの“空中ブランコ”を演じなければならないのである」に尽きるであろう。いつもながらの杉浦氏の分かりやすい、しかし中心をぐさりとさす筆力には感心する。プロ野球の選手に挑む少年野球のつもりで、思うところを述べたい。

 今回の総理訪中では、日本から多くの財界人が参加し、第三国での中国の推進する一帯一路への日本の協力をはじめとする52案件以上の調印がなされた、一方、歴史問題、尖閣問題などには言及されなかったとの一部の非難もある。この「歴史問題」について、一言述べると、日本はこれからも百年、二百年とこの問題を抱えて過ごさなければならないということだ。日本人は、何でもきれいさっぱりとしたい習性があるが、世界ではそれでは生きてゆけないのだ。中国が、これからも国内問題から国民の目を逸らすために常に利用してくることを覚悟しなければならないのだ。総理の訪中直前の10月25日の中国の国際紙「環球時報」の社説では、「歴史問題ではずっと先鋭化し、敏感さも増し、不正常な方向に発展したが、これは日本の右の輩が故意に挑発したもので、かれらは悪びれることがない」と述べている。面白いと思ったのは、次の部分で、中国の対日融和態度の狙いだろうと思われる。「中国の人々は、日本には技術革新から緻密な管理に至る、我が国が学ぶべきものがたくさんあることに気づく」だ。森本元防衛大臣が雑誌で述べているが、米はいま中国の軍事産業に寄与する技術などの日本から中国への移転に神経を尖らせているようだ。経済界の人間は、かって東芝機械のココム違反事件で、東芝グループがいかに苦しんだか思い起こすべきだ。

 「日中関係は、日米関係だ」と喝破したのは、戦前の国際ジャーナリスト松本重治氏だが。現在においてもそうだ。ペンス副大統領のハドソン研究所における10月4日の演説につき、知人の米学者が解説してくれたところでは、「副大統領は『中国がいわゆる屈辱の世紀において、怒り苦しんでいるとき、米は中国のために戦った』と述べているが、米が1844年中国と結んだ望夏条約の内容は、アヘン戦争で敗北した中国が仕方なく英国と締結した関税自主権なし治外法権アリの不平等条約内容をなぞるものであり、今の米政権の知性のなさに悲観していた。また、同副大統領は『米国人宣教師が中国へ福音を伝えた』『信仰を広めただけでなく、中国に初めての一流大学など設立し(文化面でも寄与した)』など述べている。今の政権は、サウジに劣らぬ、宗教国家になるのか」と、怒っていた。

 彼によると、米のプロテスタントの福音派の一部は中国でのキリスト教普及に熱心で、現在の中国でのキリスト教信者数は公的、地下信者を合わせ1億人以上といわれその9割がプロテスタント信者とのことだ。ちなみに韓国の信者は1300万人以上で、仏教徒の数より多く、日本は2016年の数字で190万人で極めて少なく、今のトランプ政権の見方からすると「異質な社会」と見えるそうだ。韓国の徴用工判決につき今日本では怒りが充満している。韓国相手にするなとの声も大きい。しかし、日本はこうした重荷を背負い、それでもしたたかに生きてゆくべきだ。戦前の日本のように、じり貧より、どか貧がよいのだと、単細胞的に真珠湾へ突っ込んでいった轍は踏んではいけない。この問題は今後、議論の戦場が米国に移る可能性の見方もあることを念頭に置かねばならない。米の世論に訴えるとともに在米日本企業から金をむしりとろうとの狙いからだ。松本重治氏の名言、「(日韓)日中の問題の主戦場は米国だ」ということを常に忘れてはいけない。

沖縄県に対する行政不服審査請求は違法か?   
投稿者:加藤 成一 (兵庫県・男性・元弁護士・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-31 10:49 [修正][削除]
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3434/3446
 国(防衛省沖縄防衛局)は10月17日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に関して埋め立て承認を撤回した沖縄県への対抗手段として、行政不服審査法2条に基づき直近上級行政庁である国土交通大臣に不服審査請求をし、同法25条に基づき撤回の効力と執行の停止を申し立てた。これに対して玉城デニー新沖縄県知事は先の知事選で勝利したことを背景に、「国民の権利保護のためにある行政不服審査法に基づく国による不服審査請求は違法であり、法治国家にあるまじき行為である。」と国を強く非難し徹底抗戦する構えを示している。

 確かに、行政不服審査法は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し・・・国民の権利利益の救済を図る・・・ことを目的とする。」(同法1条1項)と規定されている。そして、同法7条2項には国の機関や公共団体がその「固有の資格」において受けた処分等については、同法は適用されないと規定されている。普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する行政法学者・研究者らは、国は私人とは異なりその「固有の資格」において公有水面埋立法に基づく埋め立て承認を受けたのであるから、今回の国による行政不服審査法に基づく不服審査請求は、国民の権利救済を目的とする同法の趣旨に反し違法であり許されないと主張している(10月27日付け「しんぶん赤旗」)。

 しかしながら、行政不服審査法1条1項には、「この法律は・・・行政の適正な運営を確保することを目的とする。」とも規定されている。すなわち、「行政不服申立制度は、一面において国民の権利利益の簡易迅速な保護救済を図ると共に、他面において行政の客観的な適正を確保する手段としての意義を持つ」(佐賀地判昭和39・4・9行裁15-4-711)のである。加えて、国土交通大臣は、処分行政庁である沖縄県から独立性を持った行政機関であり、行政機関相互のチェックアンドバランスの側面もある。したがって、不適正な行政行為によって国益が著しく侵害され、簡易迅速な救済の必要性が極めて高い場合には、国には「固有の資格」に基づかず私人に準じて行政不服審査法による不服審査請求が可能であると解すべきである。

 そうだとすれば、今回の沖縄県による埋め立て承認撤回が、(1)普天間飛行場の辺野古移設がすでに確定した最高裁判決により容認されているにも拘らず、撤回理由が単なる「手続き違反」「軟弱地盤」「活断層」「環境保全」など、いずれも、もっぱら辺野古移設を阻止妨害することを目的とするものであり、法的根拠に乏しいこと(9月6日付け「百家争鳴」掲載拙稿「辺野古埋め立て承認撤回は法的根拠に乏しい」ご参照)、(2)普天間飛行場の辺野古移設が、日米同盟の強化によるアジア太平洋地域の平和と安定、普天間飛行場の危険性除去、地政学上も日本の安全保障に必要不可欠であることを考慮すれば、沖縄県による埋め立て承認撤回は、不適正な行政行為による国益の著しい侵害に該当し、簡易迅速な救済の必要性が極めて高く、したがって、国による不服審査請求は適法であると解すべきであろう。ちなみに、国による行政不服審査法に基づく不服審査請求が、「固有の資格」により不適法であるとの最高裁判例は存在しない。行政法学者・研究者らによる反対意見は単なる意見に過ぎず、法的拘束力が全くないことは言うまでもない。

相次ぐ謎の要人拘束は習主席の悪あがき   
投稿者:田村 秀男 (東京都・男性・ジャーナリスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-30 11:26 [修正][削除]
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3433/3446
 中国では要人の行方不明、拘束、さらには引退劇が相次いでいる。謎だらけのようだが、筆者は米中貿易戦争で追い込まれた習近平政権の悪あがきだとみる。ここ数カ月間で行方をくらましていた多くの要人のうち、何人かの消息が最近判明した。注目度ナンバーワンが、人気女優の范氷氷(ファン・ビンビン)氏(37)で、今月3日、脱税などの罪を認め、追徴金など8億8300万元(約146億円)を支払うことで赦免された。中国のネット情報によれば、彼女は北京市内などに保有する約40軒の超豪華マンションを売却して支払いに充当する。「カネで刑務所行きを免れるとは許せない」との批判がネットで渦巻いている。

 中国政府は7日、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の孟宏偉総裁の身柄を拘束していると発表した。中国の公安省(警察)次官でもある孟氏は、ICPO本部があるフランスのリヨンから中国に向けて9月25日に出発した後、行方不明となっていた(10月8日付の英BBCニュースから)。フランス・リヨンに本部のあるICPOのトップを拘束するという異常ぶりに、世界があぜんとしているが、習政権にはそんな国際的反響などに構っていられない事情がある。

 孟氏は隠然とした影響力を持つ江沢民元党総書記・国家主席派に属するといわれる。習氏が追及する党長老たちの巨額資金の対外持ち出しに関与していると疑われたのだろう。9月10日頃には、ネット・ビジネスで大規模な流通革命を起こした中国を代表する民営企業、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)氏が来年9月に会長を退任するという衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。巨万の富を築いた本人は後継者も指名し、あとは大学教授として後進の育成にあたると言い、もっともらしいが、真に受けてはいけない。馬氏もまた、巨額の金融資産を海外でも築き上げている。女優の范氏の資産も中国国内の超豪華マンションだけというはずはない。海外に莫大な資産を配置しているに違いない。

 范氏、馬氏に限らず、中国の大富豪、実力者たちがよく使う資産逃避ルートは必ずといってよいほど、香港経由である。香港こそはICPOによるマネーロンダリング(資金洗浄)の最大の監視ポイントである。孟氏がその職権を利用して、要人たちの資金逃れを手助けしていたと習政権が疑っているかもしれない。このシナリオからすれば、孟氏を拘束する目的はただ一つ、中国からの資金逃避ルートを暴き、遮断することだろう。習政権はトランプ米政権による貿易制裁を受け、苦境にさらされている。株価の急落に歯止めがかからないばかりではない。制裁関税に伴う輸出競争力減を補うために人民元安が不可避だが、資本逃避が加速する。それを止める最後の手段は何か。答えは上記の「事件」にあるはずだ。

(連載2)金正恩になびく文在演とトランプの警鐘 ← (連載1)金正恩になびく文在演とトランプの警鐘  ツリー表示
投稿者:斎藤 直樹 (神奈川県・男性・山梨県立大学教授・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-25 08:45 [修正][削除]
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3432/3446
 この間、文在演は形振り構わず金正恩を擁護し代弁している感がある。文在演は金正恩の言わんとする非核化が半ばまやかしであることを知りながら、金正恩に理解を示しているのではなかろうか。その背景には金正恩と真っ向から対峙することは朝鮮半島での軍事衝突の危機を覚悟しなければならないとの認識が文在演にあろう。そうであるとすれば、非核化を事ある度に吹聴する金正恩の言葉を真摯に信じているかのように文在演は振舞い、金正恩を盛り立てるのが当面は得策であると考えているのかもしれない。しかしトランプとしてはこれ以上、文在演が金正恩になびくことをよしとしない。この間、文在演は金正恩の片棒を担いでいると受け取られる発言を繰り返している。「金委員長は若い年齢にもかかわらず、非常に率直で冷静な面があり、年長者を尊重して配慮する礼儀正しい姿を見せた」と文在演は高く評価している。また幾つかの点を挙げ、金正恩による非核化は真正であると文在演は力説した。文在演が指摘した根拠なるものは、1.金正恩が「経済建設に総力集中する新路線」に政策転換を行った。2.相次ぐ首脳会談において金正恩は非核化を世界に向けて公約した。3.核実験場とミサイル・エンジン実験場を廃棄した。4.第三回南北首脳会談で金正恩が核兵器のない朝鮮半島を公式化した。5.非核化を遵守しない場合に想定される米国による報復に北朝鮮は耐えることはできないなどである。さらに「北朝鮮は制裁の影響で経済的困難に直面していて、追加の制裁に対応できない」と、経済制裁の追加措置によって北朝鮮の体制が瓦解しかねないような意味合いのことを文在演は示唆している。

 とは言え、その一つ一つが本当であろうか疑問が湧かざるをえない。金正恩が「礼儀正しい」人物であるかどうかは別にして、2011年122月に権力を継承して以降、非道かつ残虐極まる手段でどれほど多くの指導者達を粛清してきたであろうか。金正恩は叔父であった張成沢の粛清や実兄の金正男の殺害を命じた人物である。また非核化が真正であるとしてその根拠なるものを文在演が列挙したとしても、これらの根拠なるものいずれをとっても確たる事実に基づくものではなく文在演の希望的観測に過ぎないようにしか映らない。金正恩が核リスト申告と工程表を提出すれば済む話であり、これらの提出がない限り非核化に向けての道筋は開けないといわざるをえない。さらに経済制裁の追加措置によって北朝鮮の体制が瓦解しかねないというのであれば、その確たる証拠は何なのか明らかにする必要が文在演にあろう。日々伝えられる文在演の言動を耳にすれば、文在演はもはや金正恩の代弁者となった感がしないわけではない。習近平国家主席が安保理事会決議に基づく対北朝鮮経済制裁の解除に向けて動き、プーチン大統領が続こうとしている中で、文在演が独自制裁の解除を決断するような事態ともなれば、対北朝鮮経済制裁網はいよいよ綻び始めよう。その意味で、対北朝鮮経済制裁はまさしく正念場を迎えようとしている。

 今後、トランプは文在演を自らの陣営に引きとどめるために尽力するであろうが、文在演がこれ以上金正恩への擦り寄りを続けるようだと、文在演への姿勢を再検討せざるをえない局面にトランプが迫られる可能性がある。言葉を変えると、越えてはならない一線を文在演が越えようとしているとトランプの目に映っているのではなかろうか。文在演が独自制裁の解除、北朝鮮への大規模な経済支援、朝鮮戦争の終戦宣言に向けて動こうとすれば、文在演とトランプの対立は決定的となる可能性がないわけではない。そうなれば、対北朝鮮経済制裁網が綻ぶだけでなく米韓同盟さえも空洞化を避けられなくなるであろう。すなわち、もしそうした文在演に見切りをつけ在韓米軍の撤収をトランプが真剣に検討するようなことがあれば、韓国の安全保障は根底から揺らぎかねない。韓国の安全保障の根幹は国軍たる韓国軍だけでなく在韓米軍の駐留と米韓連合軍の連携に基づく米韓同盟に根差している。この根幹が揺らぐような事態があれば、どのようにして韓国は自国の安全保障を確保するのかという問題を文在演は真剣に考えたことがあるであろうか。

 何にも増して南北融和を優先する文在演が既存の韓国の安全保障政策をないがしろにしかねない。北朝鮮の非核化が完遂する一方、経済制裁が解除され、中国や韓国による莫大な経済支援により北朝鮮経済が再生に向かい、北朝鮮が市場経済の導入と大規模な外資の導入を通じ通常の国家になると、文在演が考えているとすれば、それは幻想でしかない。金正恩が核を放棄することはないし、市場経済の本格導入を決断することもない。こうした現実に反し、文在演の行っていることは眼前の利益確保を最優先し、長期的な展望を見据えた国家の安全保障を毀損しかねないのである。そうなれば、北朝鮮危機は朝・中・露・韓と米・日の対立構造に推移しかねない危険性があることに留意しなければならない。それこそ金正恩が目論む狙いではなかろうか。こうした中で鍵を握るのはわが国である。中国やロシアに続いて韓国といった関係諸国がなし崩し的に経済制裁の緩和や解除に向けて動きかねない中で、わが国は非核化の完遂まで経済制裁の手綱を緩めるべきではないとする路線を堅持すると共に、トランプ政権に制裁の継続に向けて働きかねなければならないのである。(おわり)

(連載1)金正恩になびく文在演とトランプの警鐘  ツリー表示
投稿者:斎藤 直樹 (神奈川県・男性・山梨県立大学教授・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-24 21:38  
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 2018年9月中旬に開催された第三回南北首脳会談において採択された「平壌共同宣言」は、金正恩朝鮮労働党委員長が目論む非核化の骨子を世界に周知させることになった。非核化についての同宣言の記述によると、「北側は米国が6.12朝米共同声明の精神に従って相応措置を取れば、寧辺核施設の永久的な廃棄のような追加措置を引き続き講じていく用意があることを表明した」とある。9月20日に金正恩が文在演大統領を前にして「はやく非核化を行い、経済に集中したい」と述べたというがその意味するところは、非核化の具体措置として応じることができるのは寧辺核施設の廃棄であると金正恩が考えていると受け取れる。もしそうであるとすれば、寧辺核施設の廃棄の外に廃棄対象はないとも解釈できよう。あるいはトランプ大統領がさらに相応の見返りを与えるならば、他の核関連施設の廃棄にも応じるとも解釈できないわけではない。

 6月12日の米朝首脳会談で採択された「共同声明」において「完全な非核化」を金正恩が約束したはずであるが、それから約3ヵ月後に採択された「平壌共同宣言」の中身が寧辺核施設の廃棄であったとすれば、「完全な非核化」とは程遠い内容であり、はなはだ不十分であると言わざるを得ない。こうしたからくりを金正恩が目論み、これに文在演が理解を示したことを物語る。いずれにしても、同宣言を通じ総ての核関連活動の全容を盛り込んだ、いわゆる核リスト申告の提出と、申告→査察→廃棄→検証という手順を盛り込んだ工程表の提出には応ずるつもりはないとの金正恩の意思が確認されたと言えよう。こうした中で10月7日に行われた金正恩とポンペオ国務長官の会談を通じ極めて重大なことが明らかになった。米国が提供すべき「相応措置」とは朝鮮戦争の終戦宣言だけにとどまらずなんと経済制裁の解除であると金正恩は断言したのである。その上で、トランプ政権が求めてきた核リスト申告の提出に対し「信頼関係が構築されていない状態でリストを提出しても、米国が信用できないと言うだろう。再申告を求めかねない。そうなれば争いになる」と釈然としない事由を根拠に、金正恩は提出を拒否した。

 いずれにせよ、こうした流れから金正恩の目論む意図や狙いがみえてくる。できるならば可能な限り多くの見返りを金正恩はトランプから頂きたいであろうが、トランプの要求する「完全な非核化」に応じるつもりは金正恩に毛頭ない。もしもそうであるならば、米国から特段の見返りは期待できないことを金正恩は理解しているのではないか。金正恩にとってむしろ喫緊の課題は北朝鮮との貿易において圧倒的な比率を占める中国が国連安保理事会決議に基づく経済制裁の解除に応じることであり、それにロシアが続き、開城工業団地の閉鎖などの独自制裁の解除に韓国が応じることを現実的かつ当面の目標と金正恩が捉えている節がある。他方、ポンペオも黙っていたわけではない。朝鮮戦争の終戦宣言には寧辺核施設の廃棄だけでは不十分であるとし、すべての大量破壊兵器の廃棄、核弾頭、ICBM、移動式発射台の廃棄や国外搬出を行うことが終戦宣言に応じる条件であると、ポンペオは言い返したのである。こうしたことから非核化を巡り米朝関係は予断を許さない状況にあることが示される格好になった。この間、対北朝鮮経済制裁を巡り関係諸国では激しい綱引きが繰り広げられている。中国やロシアは安保理事会決議に基づく経済制裁の実施の緩和を求めている。こうした中で康京和(カン・ギョンファ)韓国外相が独自制裁の解除をほのめかしたところ、「韓国は米国の承認なく制裁を解除しないだろう」とトランプは独自制裁の解除に待ったをかけた次第である。

 そうすると、文在演はフランスやイギリスなど安全保障理事会の常任理事国の首脳達に対し北朝鮮への国連経済制裁の解除を訴えた。その背景には中国やロシアに加えフランスやイギリスなど他の常任理事国からの内諾が得られれば、安保理事会決議に基づく経済制裁を形骸化できるであろうとの読みが文在演にあるのであろう。文在演政権に警鐘を鳴らしているトランプ政権ではあるが、トランプ政権の姿勢にも曖昧かつ不透明なところが散見される。確かに、トランプ政権は非核化の完遂まで経済制裁を解除することはないと事ある度に明言しているとは言え、トランプは遠くない将来の第二回米朝首脳会談の開催に前のめりとなっている感がある。非核化の履行を巡り米朝間でこれだけ齟齬があるにもかかわらず、第二回首脳会談においてトランプは金正恩と何を討議するのか。真正面からあくまで核リスト申告と工程表の提出の要求にトランプは拘るであろうか。それとも金正恩の意向を尊重するかのように、寧辺核施設の廃棄と引き換えに相応の見返りをトランプは与えるであろうか。それをもって金正恩と手打ちをすることはないであろうが、首脳会談の開催に前のめりとなっているトランプの姿勢にも不透明なところがある。(つづく)

INF全廃条約離脱の真意は対中国?   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-23 19:56 [修正][削除]
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 トランプ大統領は、今月20日、レーガン政権下のデタントの時代に旧ソ連法との間に締結した中距離核兵器の相互廃棄に関する二国間条約であるINF全廃条約からの離脱方針を表明しました。その主因として挙げられたのがロシア側の条約違反行為なのですが、その真の狙いは、急速に核戦力を増強しつつある中国にあるのではないかと思うのです。核関連のニュースとして、先日、NHKのニュースウオッチ9でアメリカの新たな核戦略の策定について報じておりました。その中で、同番組のキャスターは、‘たとえ他国が核の拡大に動いているとしても、力を以って力で対抗するのはどのようなものか’といった趣旨の発言をしています。アメリカの新核戦略の理由が中ロに対する対抗であることを批判しているのですが、仮に、アメリカが対抗措置を採らなかったとしたら、国際社会がどのような状況に陥るのかを想像しますと、背筋が寒くなります。何故ならば、この問題は、‘巨大な犯罪組織が暴力手段を増強させているにも拘わらず、警察の武力が前者よりも劣っていた場合、社会、あるいは、人々の安全はどうなるのか’を問うに凡そ等しいからです。

 力が‘ものを言う’状況は、地球上で最も知性に優れた生物である人類にとりまして決して望ましいものではありませんが、残念ながら、現実には、どの国も軍事力を備えざるを得ない状況に置かれています。今日の国際社会における拘束力は‘力’、‘合意’、‘法’が混在していますが、国家間の合意や一般国際法が存在しない、あるいは、これらが拘束力を失った状況下にあっては、平和を実現する方法は凡そ二つあります。その一つは、国家間の合意や国際法を全ての諸国に守らせ得る軍事力(警察力)を有する国、あるいは、国際機関が出現することであり、もう一つは、諸国間にあって力の均衡を保つことです。 戦後の国際社会を概観しますと、国際レベルの警察力として国連が設立されつつも、アメリカが事実上の筆頭警察官の役割を果たす一方で、各地域には力の均衡を実現すべく二国間、あるいは、多国間の同盟関係が結ばれています。

 今般のアメリカのINF全廃条約に対しては、核兵器の全面廃棄に向けた流れに逆行するとして落胆の声も聞かれますが、上記の観点からしますと、アメリカの主張にも一理があります。ロシアによる米ロの二国間合意であったINF全廃条約の違反は、最早、‘合意’は拘束力を喪失していることを意味しますし、中国に至っては、そもそもINFの廃棄を義務付ける条約さえありません。一般国際法であるNPTにおいても、中ロの核軍拡は、核保有国の軍縮義務に反しているのです。いわば、中ロは両国とも率先して‘合意’や‘法’を無力化し、‘力’が全てとなる野蛮な時代に人類を強引に引き戻すかの如きです。そしてそれは、中ロ両国が暴力手段に日々磨きをかけ、アメリカを上回る先端的な軍事力を備える日が刻一刻と近づいていることを意味します。

 ここに、アメリカのINF全廃条約からの離脱問題は、先の問題提起としてリフレインされるのです。‘暴力国家が警察国家を力で凌駕する場合、国際社会は、どのような事態に直面するのか’という…。この問いに対する答えは言わずもがななのですが、中国の国有企業である中国航天科技集団は、既にミサイル防衛網を突破可能な超高速飛行隊の実験に成功したとされ、同飛行体には核兵器の搭載も可能です。核戦力を含む中ロの軍事的脅威が増す中で対抗措置を採らないという選択は、力が支配する世界にあっては、他者をして自らの死を招くという意味において自殺行為ともなりかねません。これを‘平和’と呼ぶならば、‘平和’とは、暴力による世界支配と言うことになりましょう。マスメディアは、トランプ政権批判に躍起になっておりますが、どちらの選択が真の平和を実現するのか、しばし考えてみる必要があるように思えるのです。

ブレット・カバノー氏のスキャンダルについて   
投稿者:佐藤 七海 (徳島県・女性・NPO・20-29歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-22 14:19 [修正][削除]
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 米中間選挙が近づいてきて、世間ではその結果に対する関心が高まっています。そのような中、性的暴行を受けたと3人もの女性に訴えられた最高裁判事候補のブレット・カバノー氏のスキャンダルは、共和党の試練を象徴するかのようです。10月6日、米上院において50対48票で性犯罪の疑いを受けていた最高裁候補ブレット・カバノー氏が承認されました。極めて僅差でした。一部党のコンセンサスと逆の投票をした議員もいたようですが、ほぼ共和党と民主党が物別れしたことを意味する投票結果です。カバノー氏に対するFBIの調査報告書の是非について投票直前まで紛糾するなどアメリカではかなり大きな問題となりました。

 ただ、「#METOO」運動真っ只中のアメリカにあって、一時はトランプ大統領と共和党に地獄を見せるのではないかと言われていたこの政治問題。民主党の面目躍如となるかと思いましたが、人事的には思いの外あっけなく決着しました。むしろ、上院多数党院内総務を務めトランプ大統領との対立で紙面を賑わせたこともあるミッチ・マコーネル氏が、ワシントン・ポストの取材に「カバノー氏の性的暴行疑惑は単なる政治的妨害である」と一蹴したのが印象的でした。民主党が粘りを見せれば政局としてはまだ続くでしょうか、現在のところ、共和党の結束が確認され、トランプ支持者の熱狂はこの手のスキャンダルでは剥落しないことが明らかになっただけように思います。

 とはいえ、性的暴行疑惑が払拭されないままに押し切られるように人事的決着がなされたのは、残念なことでした。女性の人権を重視する多くの民主党支持者や「#METOO」運動に賛同する多くのアメリカ人は全く納得していないでしょう。上院司法委員会の委員長であるチャック・グラスリー氏が10月4日の朝に「司法委員会とFBIは、女性たちの主張を裏付ける証拠は見つけられなかった」と声明を出すなど幕引きを狙いましたが、民主党が主張する通りFBIの捜査は期間が1週間に限定されていたり詳細が示されないなど不完全で不誠実な感が否めません。

 確かにカバノー氏の人事が上院をパスすることは事前にある程度予想されていたことでしたが、共和党が所属議員を締め付けて公正さが疑われるFBI捜査をもって押し切った上院での戦術は、プロセスとして不適当でした。今回多くの人々が、共和党議員が女性の性的自由に鈍感で自由主義的理念よりも党利党略に影響されやすい側面をもっていることを再認識したことでしょう。今回の件が共和党の支持基盤を崩すかはわかりませんが、中間選挙に向けて共和党のイメージアップにつながらなかったことは確かでしょう。

「日本はガチンコ外交に備えよ」を読んで思う ← (連載2)日本はガチンコ外交に備えよ  ツリー表示
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-22 12:30 [修正][削除]
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 10月18日付の本欄への岡本裕明氏の投稿「日本はガチンコ外交に備えよ」を読み、一言述べる。同氏は外交を、野球に例えれば直球、正攻法で勝負せよ言っているように見受けられる。私は、緩いカーブを投げたり、間合いを十分に取り相手をじらせたり、みているほうはスカッとしない様々な手法も大事で、国民もそれを理解できることが必要だと考える。思い起こせば、1937年に日本は「日独伊三国防共協定」を結び、昇竜の勢いだったドイツと手を結び、当時日本にとり最大の敵だったソ連を抑えれると考えた。ドイツはヨーロッパ諸国を電撃攻撃で、フランスまで降伏させた。今から見るとこの後、ドイツの動きはとん挫してしまった。じっくりと国際情勢をみきわめてもよかったのだ。日本が39年にソ連とノモンハンで悪戦中に、8月にドイツは突如「独ソ不可侵条約」を締結し日本を裏切ったのだ。

 外交は、最終的には国と国民を守るのが基本だ。目の前の格好良さなどにとらわれると大変なことになることは、第二次大戦の苦い経験から学んだことだ。今月26日に安倍総理は訪中し、日中平和友好条約締結40周年記念の会談を習近平と行う。この条約の締結時に、日本が苦慮したことは、中国が突き付けてきた「対ソ連敵対宣言」、すなわち「覇権条項」だ。ワーデングをソフトにしたりして、何とか締結にこぎつけた。それが、その後80年代の日中関係友好の黄金時代につながったとも言われる。ソ連は、今や中国の最大の友好国だ。まさに昨日の敵は今日の友である。千変万化するのが国際情勢だ。世界情勢の隅々に目を光らせじっくりと見ていくことが大事なのだ。

 10月上旬の中国の報道によれば、中国南部の厦門で、中国と台湾の関係者による尖閣諸島についての会議が紹介されている。会議では、「尖閣の主権が中国に属すること、歴史的、地理的、法律的にそれは十分な根拠がある」、「ハーグの仲裁裁判所の国連海洋法条約の解釈には誤りがある」、「ウィーン条約及び国連海洋法条約の関連規定とも矛盾する」などと述べている。米国は今、トランプ大統領が中国へ貿易戦争を仕掛けているが、日本のマスコミは、それがサイバー戦争など全分野に及び中国が崩壊するまで続くなど大はしゃぎだ。私の米国の知人は、中国が本当にぽしゃると、米だけでなく日本、西欧も打撃を受けるだろうし、米企業は中国に多大な利権を持ち、長い目で見れば、米の先鋭度合いも鈍ってゆくと見ている。また彼は、この6月米の大使館に当たる在台湾協会(AIT)の台北事務所の豪華な新庁舎が、米国国務省次官補を派遣し華々しく披露されたが、その後は、実際には機能していないことについて、対中配慮だと述べていた。

 安倍外交は全世界に目を向け奮闘中だ。在バチカン大使には、職業外交官ではなく、経団連副会長だった中村氏を充てている。2014年に安倍総理はバチカンで、フランシスコ法王に謁見し、日本訪問を要請した。カトリック教徒の知人の話では、法王は、今年乃至は明年の訪日を望んでいるそうだ。本年の新年の説話で米の写真家が原爆投下の後しばらくのちに長崎で撮影した「焼き場に立つ少年」の写真を信者に配布し、原爆の悲惨さ、世界平和の大切さを訴えたそうだ。ごく最近文韓国大統領も謁見し、金正恩からの訪問要請を伝え、法王は乗り気だったようだ。

古色だったビットコインの発想   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-19 21:09 [修正][削除]
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3427/3446
 ビットコインと言えば、金融工学の最先端から誕生した新時代の通貨というイメージが先行しています。このため、‘新しもの好き’の人々が飛びつき、値上がりを期待した投機の対象となっているのですが、この現代のコイン、案外、その発想は旧式なのではないかと思うのです。何故、ビットコインが古色であるのかと申しますと、第一に、そのモデルは、紙幣の誕生以前にあって希少金属から鋳造された硬貨にあるからです。ビットコインの獲得には、大量の電力消費を伴う‘マイニング’に成功する必要があります。言い換えますと、この‘マイニング’こそ、金や銀といった希少金属の採掘を意味しており、‘マイニング’に従事している人々は、古来の採掘事業者と変わりはないのです。違っている点があるとすれば、前者の事業者は、難題を解くためのITの専門知識と電力コストを負担し得る資金力を備える必要がありますが、後者は、世界各地で起きてきたゴールドラッシュに見られたように、鶴嘴を持参すれば身一つでも誰もが参加することができる点等です(ただし、個人が採掘した金塊は硬貨鋳造事業者や政府に売却する必要があった…)。

 第二の理由は、その有限性にあります。しばしば、ビットコインのプラス面として、ビットコインの初期設定において発行高が予め決められており、通貨価値の下落リスクがないとする説明が為されています。今日、凡そ全ての諸国や地域が採用している管理通貨制度にあっては通貨発行の量的枠が存在しないためにインフレを起こし易く、インフレリスクにおいてビットコインは遥かに安定的な資産であるとされているのです。しかしながら、ビットコインの有限性は、プラス面であると同時にマイナス面でもあります。何故ならば、インフレは起きなくとも、発行高が設定された上限に達すれば、深刻なデフレ=通貨不足が発生する可能性が極めて高いからです(もっとも、実際にビットコインが決済通貨として一般に流通しなければ、この問題は発生しない…)。この有限性に基づくマイナス面は、金や銀といった硬貨との共通点でもあります。

 以上に主要な二つの旧来の硬貨との共通点を挙げて見ましたが、これらの諸点は、ビットコインの限界をも示しています。中世にあって、ヨーロッパは、東方貿易における赤字により金銀の流出に直面しており、貨幣不足が経済の停滞を引き起こしていました。この難局を打破したのが紙幣の発明であり、確実なる支払いが約束されている信用性の高い手形、金匠の預り手形、並びに、金兌換の保障の下で金融機関が発行した銀行券等が紙幣として流通し、市中の貨幣不足を補ったのです。紙幣の登場は、必ずしも希少金属資源に恵まれていたわけではなかったヨーロッパの急速な経済な発展を支えることとなりますが、それでは、ビットコインを準備とした紙幣発行はあり得るのでしょうか。金や銀といった希少金属は、実体を有する‘もの’であり、それ自体が使用、並びに所有価値を有します。それ故に、金本位制や銀本位制も成り立つのですが、ビットコインには、こうした通貨としての価値を支える多重的な裏付けがありません。

 そもそも、ビットコインには発行元となる中央銀行も存在せず(もっとも、中央銀行が発行するのは公定通貨としての銀行券であり、硬貨を発行する権限は政府にある…)、一定のビットコインと交換価値を持つ‘ビットビル’や‘ビットノート’といった‘ビット紙幣’を発行することはできないはずです。あるいは、民間金融機関が自らが保有するビットコインを準備として独自に各種紙幣を発行するという方法もあるのでしょうが、‘無’から生じたビットコインには価値の裏付けがないに等しいため(各国が発行する信用通貨の価値を支える総合的な国力とは違い、‘マイニング’という私的で個人的な労力は信用価値を生まない…)、これを元にした‘ビット紙幣’が広く一般に決済通貨として流通するとも思えませんし、単一通貨でもありませんので両替のコストもかかります。このように考えますと、ビットコインは、金貨や銀貨よりも紙幣創造力において劣っており、ビットコインの限界を越えるためのビット紙幣の登場は、夢のまた夢なのかもしれません。ビットコインから生まれたフィンテックについては、金融テクノロジーの一つとして将来的に活用されることはありましょうが、少なくともビットコインについては、リスク回避のためにも、政府であれ、個人であれ、その限界を知ることは重要なのではないかと思うのです。

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