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(連載1)北朝鮮危機に対する習近平指導部の姿勢の変化   
投稿者:斎藤 直樹 (神奈川県・男性・山梨県立大学教授・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-18 11:49 [修正][削除]
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3223/3223
 間断なく続く金正恩指導部による核・ミサイル開発に歯止めをかける上で習近平指導部が鍵を握るとトランプ大統領は認識してきた。2017年4月2日にトランプは「中国が北朝鮮問題を解決しなければ、我々が解決する」と言明した。すなわち、金正恩指導部の核・ミサイル開発と軍事挑発を止めるためには北朝鮮経済の存立にとって鍵を握るとされる習近平指導部が実効性ある圧力を加えなければならないこと、もしも中国ができないようでは米国が自ら解決すると明言した。金正恩を動かす上で実質的な梃子を持ちえるのは中国であるとのトランプが認識しているからに他ならない。このことは中朝貿易額が北朝鮮の全貿易額の九割以上に及ぶことに加え、北朝鮮が消費する石油のほとんど総てを中国からの輸入に依存していることをみれば明らかである。

 こうした現実を踏まえた際、もしも習近平指導部が北朝鮮への全面的な石油供給制限を決断することがあれば、北朝鮮の備蓄燃料は遅かれ早かれ枯渇し、これに伴い北朝鮮経済は麻痺しかねないことが考えられる。朝鮮人民軍の活動も一般の国民生活も甚大な打撃を受けかねず、これにより金正恩体制が動揺を来たすことが想定される。もしも同体制の基盤が揺らぎ出せば、危惧されるありとあらゆることが現実に向かいかねない。北朝鮮国民の生活が絶望的状態に陥ることになれば、膨大な数に上る北朝鮮国民が大挙して中国との国境に殺到する可能性もある。習近平指導部とすれば、北朝鮮との国境を統制する必要を感じるであろう。また体制崩壊の危機に直面し自暴自棄となった金正恩指導部は韓国への軍事侵攻を断行するかもしれない。しかし朝鮮人民軍による軍事侵攻は米韓連合軍による猛反攻を招くことは必至である。その結果、朝鮮半島中央部で大規模の軍事衝突に発展する可能性が高い。もしも米韓連合軍が南北を分ける軍事境界線を突破し北進することがあろうものならば、習近平指導部も中国人民解放軍の軍事介入を真剣に検討せざるをえなくなりかねない。

 はたまた国家存亡の危機をいとわない金正恩につくづく愛想を尽かした軍の一部が反旗を翻し、軍事クーデターを決行するかもしれない。あるいは数十年に及び抑圧されてきた北朝鮮国民が一斉蜂起に打って出る可能性もないわけではないであろう。習近平指導部にとってそうした道筋はまさしく「パンドラの箱」を自ら開けるようなものである。全面的な貿易の遮断や石油供給制限は北朝鮮の体制崩壊をもたらしかねないとの危惧を習近平指導部は真剣に抱いている。したがって、習近平にとって北朝鮮との貿易を全面的に遮断したり、石油の供給を停止するような行動を躊躇せざるをえないのである。とは言え、2017年を通じ核・ミサイル開発に向けた金正恩指導部の狂奔が続く中で、北朝鮮に対する習近平指導部の基本姿勢は大きく変わりつつある。金正恩指導部が習近平指導部に2017年4月中に第6回核実験を行う予定であると通告したところ、強い危機感を覚えた習近平指導部がもしも核実験を強行することがあれば、石油の供給制限を含む中朝間の貿易を全面的に遮断すると、かつてない圧力を掛けた。これを受け、金正恩が不承不承、4月中に核実験を強行するのを思い止まった。石油供給の制限という脅しは金正恩をして核実験を取り止めさせるだけの実効性を持っていることを物語った。

 その後、国連安全保障理事会での対北朝鮮経済制裁を巡る審議において習近平指導部は採択へ消極的な持論を展開しながらも最終的に決議の採択を支持した。7月4日の「火星14」型ICBM発射実験を受け、8月5日に採択される運びとなったのが決議2371であった。同決議の採択を巡る審議においても習近平指導部は当初、反対の意思表示を繰り返したが、最終的に姿勢を一転させ採決への支持に回った。決議2371の骨子は北朝鮮による石炭、鉄、鉛などの輸出の全面禁止、海産物の輸出の禁止、外国への北朝鮮労働者の追加派遣の禁止、四機関と九個人を新たに制裁対象に加えるなどであった。これにより、石炭、鉄、鉛などに加え海産物といった北朝鮮の主な輸出品目の輸出が全面的に禁止されることになった。(つづく)

「北朝鮮ミサイルと漁船漂着は国難」を読んで思う   
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-15 22:21 [修正][削除]
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 12月14日付けの姉妹e-論壇「百花斉放」に掲載された赤峰和彦氏の投稿「北朝鮮ミサイルと漁船漂着は国難」では、「日本政府の口先だけの『圧力』と外務省の事なかれ主義は北朝鮮に何の影響力も与えていません」と手厳しい指摘がなされていた。この点について、第3者の立場からコメントする。知り合いの外務省事務官は、担当地域との時差の関係で毎日徹夜仕事だ。「忙しい時は自宅には着替えを取りに帰るだけだ」と青い顔をしながら話していた。外交の仕事は、特に海外では交際に金がかかる。例えば、情報を得るために背伸びしてセレブが入会しているクラブの会員になるなどするが、それには公費が使えないから自費になる。妻も自宅での接待をはじめ金も体力も使う。そして夫婦ともよれよれになり日本へ帰る。しかし、そうした外務省の人間に対して、日本の論評は「外国で遊んでばかりいる」と手厳しいものが多い。ベストセラーの「バカの壁」などに代表される見方である。

 次に自衛隊についてである。日本では、まだ一部の教師が、自衛隊の子供を税金泥棒の子供だなどと平気で悪口を述べたりする。他の国で認められている祖国を守る軍人としての名誉や地位が認められていないのが現状だ。こうやって冷遇しておきながら、何かの時には、お前らが最後の頼みだといわれても、人ごとながら虫が良いと思わずにはいられない。国難に対し、真剣に取り組んでもらうには、彼らの環境整備も整えるべきだろう。今、北朝鮮問題で巷間ささやかれているのは、「トランプは商売人なので、やはり『取引』をやるのではないのか。ティラーソン米国務長官と不和といわれるが、裏ではティラーソンの述べている通り『前提条件なし』の米朝交渉へ進もうとしているのではないか」、ということだ。

 別の情報では、北朝鮮がミサイルを日本上空経由太平洋へ飛ばしたとき、トランプは何故日本は撃ち落さないのかと手厳しい発言をしたとのことだ。米は、北の暴発も怖いが、それより「拡散」の方がより怖いとしているようだ。一部メディアに報道されたが、安倍政権が米と組んでシャカリキに実施している北への制裁は、だいぶ穴があるようだ。中国はじめ東欧、旧ソ連諸国から、北は技術、技術者、軍事用品などひそかに入れている。それどころか、東南アジア経由などで、日本をはじめ先進国の汎用品が多く流れており、その部品が核、ミサイルの完成に転用されているようだ。北を最近訪問した日本人が、現地の商店で、多くの日本製品、日本の食物が置かれているのを見たそうだ。赤峰氏は、金正男が来たときに何故田中真紀子外相は人質にしなかったのかと指摘しているが、知り合いの意見だと、それは米の意見に従ったとのことだ。

 このように、国際問題はキツネとタヌキのバカしあいのような面があるし、対北朝鮮、対中国というより、主戦場は米という面もあるのだ。米の内部も分断しているので、我が国へ好意的な人脈をしっかりと作り上げてゆかねばならない。そして、日本国内の北や中国を利する動きにも注意が必要だ。最近日本では「トランプは韓国無視だ」、「文大統領は中国で冷遇された」、「韓国は、日本とは少女像問題などあり、孤立している」などとの論評がある。だが韓国は、米の第二次世界大戦後朝鮮戦争や米が苦しんだベトナム戦争を共に戦い血を流しているのだ。いわば戦友の側面もある。ぎりぎりの場面では、米の議会はじめ社会の中から、韓国擁護に立ち上がる人たちがいるのだ。平和をぬくぬくと楽しんできた日本とは違うのだ。

改元ムードの中で考えるべき経済政策   
投稿者:田村 秀男 (東京都・男性・ジャーナリスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-15 20:03 [修正][削除]
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3221/3223
 物心がついたときにはバブル崩壊不況のまっただ中。高度成長はもちろん、バブルの時代を知らない平成世代が賃金デフレに今なお苦しんでいる。バブル崩壊した後、30年近く経ってもゼロ%前後の国内総生産(GDP)成長率とデフレが続くのは、世界では日本だけである。米国は2008年9月の金融バブル崩壊「リーマン・ショック」を引き起こしたが、恐慌は一時的で、デフレに陥ることなく、堅調な経済成長を続けている。なぜ、日本だけがそうなったのか。

 昭和天皇崩御前の昭和63年(1988年)と、崩御で国民が喪に服した平成元年(89年)。筆者は当時の消費や投資の自粛ムードを思い出す。天皇陛下は譲位のご意向をやんわりと表明された昨年8月の「おことば」の中で、「天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶ」と懸念されている。陛下の御心に甘えて思考停止していては、バブル崩壊とその後の20年以上もの間、今なお引きずる経済空白の真因を客観的に突き止めることはできない。実際に、平成デフレは誰が元凶なのか、アカデミズムもジャーナリズムも真相を突き止めようとはしない。

 いつの世も経済を左右する決定要因は政策である。日本人特有のつつましい一般的な国民心理が作用するとしても、崩御が日本経済凋落の端緒になるはずはない。誤った政策を実行した当局こそが責められるべきであり、当局者は知らぬ顔、マスコミやアカデミズムは批判するどころか擁護し続けている。バブル全盛期の88年央に前年比5・8%伸びていた実質個人消費は、平成に入った89年6月に2・8%に落ち込んだが、ほんの一時で、同年末には5・8%まで回復している。バブル期に実質で前年比15%以上増えてきた民間設備投資は89年3月の25%増をピークに急減し始め、91年にはマイナス水準まで転がり落ちた。設備投資こそは日本経済のダイナミズムのエンジンなのだが、完膚無きまでに打ちのめしたのは政策である。日銀は89年5月、公定歩合を年2・5%から一挙に3・25%に引き上げたのを皮切りに、矢継ぎ早に利上げを繰り返した。日銀副総裁、総裁として主導した「平成の鬼平」こと三重野康氏は日経平均株価を89年暮れの3万8915円からわずか9カ月で2万0983円に暴落させた。

 大蔵官僚も竹下登内閣を動かして89年4月に消費税導入を実現させた。さらに橋本龍太郎蔵相(当時)をたきつけて90年3月、銀行に対し土地融資総量規制に踏み切った。日銀を含む政・官のエリートたちが「改元」という時代の転換点をテコに、偏狭な視野で正義の味方然とした。その平成も31年、2019年4月末で終わり、5月1日に新しい元号の時代が始まる。改元ムードに便乗する官僚の策謀は止まない。消費税再増税は新元号元年の10月1日に予定されている。

スタートアップ(起業)ビザの「創設」   
投稿者:鈴木 馨祐 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-14 18:23 [修正][削除]
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 12月8日、私が個人的にこの一年ほど力を入れ、様々なところで提唱し奔走していた「スタートアップ・ビザ」の「創設」が盛り込まれた「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定されました。アメリカにおける起業・ベンチャーの多くが外国人によってなされている一方、日本においては、これまではどこかと雇用関係を持たない外国人起業家に対してビザが下りることは非常に難しく、結果として起業・スタートアップ自体が盛り上がりを欠いてきたという実態がありました。

 少子高齢化、人口減少に直面し、またデフレマインドがはびこる中で、新たな可能性を求めての挑戦、リスクテイクがあまりなされていない日本の状況を考えたとき、我々は女性の活躍はもちろん、優秀な外国人材が日本でより活躍できる環境を創ることが急務です。折しも、トランプ政権下のアメリカにおいては外国人への規制強化の流れがあり、またシンガポールにおいても金融関係の法制を中心に規制強化の流れが、そして香港は中国の影響力強化により自由が失われつつあってビジネスセンターとしての魅力を落としているという現状があります。今こそ、外国の優秀な人材を日本に引き入れるチャンスであるとの問題意識のもと首相官邸とも連携しながら、経済産業省や法務省とも調整を続けてきたのがようやく日の目を見たという状況です。

 今回のプログラムにおいては、「外国人起業家の更なる受入れ拡大に向けて、起業に向けた準備のため最長一年間の在留期間を付与する等の入国管理制度上の措置を講じるとともに、起業活動実施状況の確認、相談体制の構築等の管理・支援施策を実施するなど、起業活動を支援する「スタートアップ・プログラム(仮称)」を来年度中に開始する」と明記していただきました。今後必要なことは、例えば知財であったり資金計画であったり、真にハイレベルの起業家を選別できる仕組みを作りつつ、外国人材にアプローチをすることであり、成功例をつくることであり、スタートアップのエコシステムをきちんと構築することです。当然そのためには意欲的な自治体との協力も必要です。

 日本を真に世界で一番起業しやすい国にするためのチャレンジは、まだまだこれからです。しかし、これまで政府に難色を示されることが多かったこのスタートアップビザの案件が、第一歩をようやく踏み出すことができたことは極めて意義深いものだと思います。日本をよりオープンによりイノベーティブに変えていく。これが今後の日本にとっては致命的に重要な課題です。わかりやすいストーリーとして世界に発信できるものとなるよう、今後ともしっかりと実務的により良い政策となるよう努力してまいります。

中国は平和主義国家なのか   
投稿者:倉西 雅子 (東京都・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-13 19:50 [修正][削除]
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3219/3223
 あくまでも核・ミサイル開発の放棄に応じようとしない北朝鮮問題に対して、アメリカは、軍事的圧力を強めると共に、武力行使をも辞さない構えを崩しておりません。その一方で、中国は、話し合い解決を主張しております。交渉による解決は、国連憲章も推奨する平和的解決手段の一つであるために、各国の左派勢力をはじめ、一定の賛同者を得ています。軍事力=悪と捉える絶対的な平和主義者の耳には、中国の主張の方がよほど心地よく響くのです。それでは、中国は、平和主義国家なのでしょうか。

 建国以来、中国は、自国を平和主義国家と見なしてきました。中華人民共和国憲法にも、平和五原則―主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存―が掲げられています。この原則は、1954年6月に周恩来首相とインドのネルー首相との間でも合意され、翌55年4月にはアジア=アフリカ会議において平和十原則へと発展し、非同盟運動の柱ともなりました。しかしながら、中国が、現実の国際社会においてこの原則通りに行動したのかと申しますと、御世辞にも模範的であったとは言えません。そもそも、上記の平和五原則も、中印合意の2か月前に「中華人民共和国とインド共和国の中国チベット地方とインド間の通商・交通に関する協定」の前文に記されたものであり、1951年に発生した「一七条協定」の調印強要とその後の人民解放軍によるチベット占領によって、インドと国境を接するに至ったために締結されたものです。チベット侵略という軍事行動を起こしながら平和五原則を唱えたのですから、厚顔無恥としか言いようがなく、中国の平和主義は、その始まりからして欺瞞に満ちているのです。この一例を見ても、中国が語る美しい言葉を迂闊に信用してはならないことは明白です。

 過去においては、弱小の国に対しては常に軍事力を以って“解決”してきた中国は、今日でも、習近平国家主席は“中国の夢”の実現を唱え、人民解放軍を戦える軍隊に改組した上で、世界一の軍隊に育て上げることを“人民”に誓っています。その一方で、北朝鮮問題に対しては、話し合い路線が既に行き詰りを見せているにも拘らず、平和主義的な立場からアメリカの武力行使に反対しているのです。ここで、北朝鮮問題に拘わらず、中国があらゆる問題において本心から対話を金科玉条とするならば、将来に向けて軍事力を増強する必要はないのではないか、とする素朴な疑問が湧いてきます。そして、この矛盾にこそ、平和と云う美名に隠れて自らの利益拡大を狙う中国の強かな狡猾なる善性悪用戦略が見え隠れするのです。

 中国の行動パターンからしますと、中国の平和主義は、現時点でアメリカが北朝鮮に対して武力行使した場合、北朝鮮、並びに、自国には勝ち目がないという判断に基づく打算に過ぎないのでしょう。おそらく、中国は、当問題については、“勝てない戦争はしない”、もしくは、“可能な限り阻止する”、あるいは、“一時的に和解して味方に回り、協力の対価を得る”といった戦略で臨んでいると推測されるのです。仮に、トランプ米大統領の訪中時に米中合意が成立したとすれば、一時的和解の路線であり、最終手段としてアメリカの対北武力制裁を認めつつも、戦後処理や台湾問題など、その他の分野で“漁夫の利”を得ようとしているのかもしれません。言葉と行動が一致しない国は信用ならず、ゆめゆめ中国を平和主義国家と見なしてはならないと思うのです。

「習近平思想」ではなく「習近平の新理念」 ← 習近平の中国は文革時代に近づいているのか?  ツリー表示
投稿者:金井 進 (千葉県・男性・無職・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-09 17:22 [修正][削除]
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 第19回中国共産党大会で党規約に付加された『習近平新時代中国特色社会主義思想』(中国語)を日本のメディアでは「習近平の新時代における中国の特色ある社会主義思想」と邦訳し、短縮して「習近平思想」と伝えているが、一つの異論を述べたい。
 
 習近平は「思想」ではなく「理念」という用語を使用しています。つまり、「理念」とは行動の導き手であり、行動の全体、基本、方向、未来をつかさどり、構想、方針、重点がまとめて表されたものです。発展が成功するか失敗するか、それはひとえに発展の理念にかかっている、と述べています。そして5大発展理念(イノベーション『創新」、グリーン『緑色』、開放『開放』、分かち合い『共享』、調和『協調』)の中核には「人間『人民』の全面的発達」があり、最終目標はその実現であるとしています。又、国内外の安全面で多くの問題を抱えていることから、安全『安全』の発展理念を追加し、6大発展理念が新時代の発展理念であると唱えています。
 
 発展理念には思想的根拠があり、6つの理念にはそれぞれ、異なった思想的根拠があります。例えば、『調和』の発展理念には3つの思想的根拠があります。まずは中国古代の『中庸』思想です。次にマルクス主義唯物弁証法です。3つ目は毛沢東の調和的統括や江沢民、胡錦涛の科学的発展観という政治思想です。
 
 12月2日付の本欄への加藤隆則氏の「習近平の中国は文革時代に近づいているのか?」の中で、加藤氏は「習近平思想」は思想のつまみ食いと述べておられますが、「習近平の新理念」はつまみ食いというよりむしろ、新旧思想の弁証法的統合と思います。日本のメディアが、皮相的に「習近平思想」として習近平の独裁集権化と捉えず、「新理念」の中身を正確に報道することを望みます。
                                

平成30年度予算編成の基本方針について   
投稿者:鈴木 馨祐 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-09 04:53 [修正][削除]
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 12月5日、自民党政務調査会の全体会議が開かれ、平成30年度予算編成の基本方針案等について議論されました。昨年のものに比べても、プライマリーバランス黒字化目標をはじめ、財政健全化に関する取り組みが後退した内容となっているため、私から次のような趣旨の発言をさせていただきました。一部先日の税制調査会や先日の他の全体会議で発言した内容も加えていますが、趣旨とすれば以下のとおりです。

「まず、財政健全化について、自分は財政健全化至上主義はもちろん正しくないと思っているが、それにしても、今の経済環境を考えれば、①外的な経済ショックも5年以上なく、マクロ指標を見ても景気拡大が継続しており金融環境の信用収縮もない、②日銀やGPIFが大量の国債の買い入れを行っているために長期金利がいわば人工的に低く抑えられている、こうした状況下で言ってみれば財政的には最も恵まれた状況にあるという意識を持つべきである。そのような中で財政健全化努力を今やらないでいつやるのか。いつできるのか。いつか必ずやって来る景気後退時には需要創出せねばならないが、その時の余裕を確保するためにも財政健全化するタイミングは今なのではないか。また財政出動などの公需で経済を支えるという話があるが、一瞬水増ししても意味がなく持続可能ではない。今のデフレマインドの一番の問題は企業がリスクをとることができずに内部留保ばかりが増えている状況にあるわけで、この状況を変えるためには人や企業の新陳代謝を促し、リスクをとることが報われる社会環境を創るための労働市場改革などを断行せねばならないのであって、それをせずに財政で国民の税金で需要創出を行うというのは正しい判断とは思えない。我々が進めるべきは官主導公需主導の経済成長ではなく真に民間が主役の経済成長であるべきだ。」

 「そのようなことを考えれば、財政健全化への取り組みを今行うべきと考えざるを得ない。2018年は骨太2015に書かれた歳出改革の集中期間の最終年であるが、その中では2018年度末のプライマリーバランスの対GDP比を1%以下とするという中間目標が定められている。そんな中、2016年度末にあってはGDP比2%をはるかに超えており、安倍総理の発言以前にも予測を下回ってしまっている。そのことが明らかである以上は、2018年度予算においても、この財政健全化目標に沿った歳出とするべきではないのか。今回の政権公約における人生100年時代の全世代型社会保障への転換という国民との約束も、これまで優先順位の低かったこども子育て、教育への国としての歳出を増やし優先順位を上げるということであったはずで、単に従来の社会保障に新たに上乗せをして歳出を拡大するということではなかったはずだ。当然既存の社会保障で削るものが出てくるということにならなければ議論がおかしな話となってしまう。こうした観点をしっかりと踏まえて政策や予算の決定をしてほしい。」

 以上のような発言を行ったところです。我々若い世代の政治家は10年後、20年後を見据えて政策立案をすべきであり、その場その場の近視眼的なバラマキをすべきではありません。党内の少数派ではありますが、しっかりと将来を見据えた視点を政策の軸に据えられるよう引き続き全力で頑張ってまいりたいと思います。

高村副総裁の「日中関係」記事への所感   
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-08 11:39 [修正][削除]
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3216/3223
 最近の専門誌『外交』所載の日中関係をめぐる高村自民党副総裁のインタビュー記事は、「一帯一路」についてなどで全面的に賛成できない部分もあるが面白かった。「小泉さんの(毎年の)靖国参拝について、考えは多様かと思いますが、客観的に見て日中関係は悪化」については、その当時現地にいた実感から、その通りだ。

 「当時の中国では、対日関係で過去にとらわれるのではなく、未来思考を重視する”新思考”の動きが生まれており・・・」については、小泉氏の毎年の参拝は、結果として馬立誠氏などの「新思考」派の出鼻をくじき、比較的親日派と目されていた胡錦涛主席、温家宝総理の立場を弱めたのだ。小泉氏は結果的に中国の反日勢力を助長させた。アジアでの日中対決はいずれ避けられないにせよ、その時期を大分早めた。それも、日本国内での諸々の準備もなしにだ。現地にいると、現地法人の日本人責任者が、中国側の社長、重役とアポがすぐ取れていたのが、次の年には部長以下、その次には課長以下としか会えなくなった。トップダウン社会の中国では交渉は悲惨なこととなる。

 当時よく「政冷経熱」、政治は冷めていても経済は好調だと言われた、実際は表面的なビジネスではそこそこの利益があったものの、将来のもうけが期待できる経済の根幹部門への参加は排除された。それは、欧米に押しのけられた。72年の国交開始から、営々と積み重ねてきた日本各方面の諸努力がふいになったのだ。独などの親中先進諸国のみならず、米の中国各地の文化センターなどでも、第2次大戦中の日本の進攻、それに対抗する中国への米支援のプレイアップなど宣伝をしていた。

 最近、ある大学名誉教授(政治学者)の内輪の話で、戦後のポプュリストの代表として小泉氏を挙げておられたがうなずける。小泉氏は、田中派憎し、反橋本龍太郎で当時靖国神社遺族会会長だった同氏への面当てに毎年の参拝をくりかえしたのだとしか思えないのだ。現役を退きフリーハンドとなった今、小泉氏はさっぱり参拝をしておられない。対中政策には、ソフト路線、いわゆるパンダ・ハガーとハード路線、ドラゴン・スレイヤーがあるが、第3の道、ドラゴン・ハガーもありうる、その道を安倍政権は取ろうとしているやに見えるが、それには、憲法改正をはじめとした諸準備が必要だ。

北朝鮮のミサイル発射実験への対応   
投稿者:鈴木 馨祐 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-08 00:34 [修正][削除]
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3215/3223
 11月29日の未明、北朝鮮のミサイル実験が再び行われ、我が国の排他的経済水域に着弾しました。ロフテッド軌道での実験も三回目で、過去最高の高度に到達したとの分析があります。迎撃しづらくなるロフテッド軌道でのミサイル発射ですが、最も大事な点は、過去の実験と比べて、どの程度大気圏への再突入技術が進歩しているのかという点に尽きます。北朝鮮の弾道ミサイル技術が、再突入時の熱等に耐え、弾頭が正常に作動するという技術水準に早期に到達する可能性が高いのであれば、北朝鮮をめぐる事態は新たなステージに変わりつつあると言わざるを得ません。

 一言でいえば、対応が遅くなればなるほど、その分だけ日本をはじめとする周辺諸国のリスクが確実に高くなるということです。特に金正恩という予見可能性が著しく低い指導者が、レベルの高い運搬手段を伴った大量破壊兵器を大量に保有している状況は安全保障上極めて深刻です。軍事的オプションを選択することなく北朝鮮の非核化が実現するのであれば、それに越したことはありませんが、今の状況を考えれば、その可能性は極めて小さいと言わざるを得ません。

 解決をズルズルと先に延ばすことが、日本の安全にとってプラスなのかどうなのか、そろそろ希望的な観測を排したシミュレーションをきちんとしておく必要があります。北朝鮮に係る影響を最小限に抑えたい、それは日本はもちろんのこと、韓国や中国、アメリカ等関係国すべての共通の願いです。しかし、時間の経過に伴って北朝鮮との交渉が結実しなかった場合のリスクがどんどん大きくなっているという現実も直視せねばなりません。

 そして、これまでの出来事を時系列でみてみれば、外交的な手段によって事態が解決に向かう可能性は日に日に低下していると言わざるを得ません。今回のような状況下にあっては、事態が動くときは一気に動きます。我が国としても、起こりうる様々な可能性に備えた対応を進めておく必要があります。

北朝鮮問題の平和的解決は可能か   
投稿者:加藤 成一 (兵庫県・男性・元弁護士・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-05 06:52 [修正][削除]
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3214/3223
 北朝鮮は、11月29日新型大陸間弾道ミサイルを日本海に向けて発射し、日本の排他的経済水域に落下させた。これにより北朝鮮は、核弾頭搭載可能の大陸間弾道ミサイルが米国本土全域を射程に収めた、と宣言している。その真偽については諸説があるが、いずれにせよ、もはや看過できない事態と言えよう。問題は、度重なる国連決議に違反して、北朝鮮が計6回の核実験と長距離弾道ミサイルの発射を繰り返し、もはや事実上の「核保有国」として、一定の「核抑止力」を獲得したとみられる北朝鮮に対し、果たして平和的手段すなわち国連等の経済制裁と対話のみによって、核とミサイルを放棄させることが可能かどうかは冷静に分析する必要がある。その場合、北朝鮮の核・ミサイル開発の究極の目的を検証する必要がある。

 核・ミサイル開発の目的が、北朝鮮の体制維持のみであれば、米国が体制維持を保証すれば、放棄の可能性はあろう。しかし、北朝鮮の亡命外交官太永浩元イギリス大使館公使は、11月1日米下院外交委員会公聴会で、「北朝鮮指導部は、南ベトナムからの米軍撤退の経過を研究している。現在の韓国を南ベトナムに見立て、そこから在韓米軍を撤退させるため、核やミサイルで圧力をかける。圧力に屈した米国が在韓米軍を撤退させれば、外資が引き上げ、南ベトナム同様に韓国の体制崩壊につながる、というのが金正恩委員長の狙うシナリオだ。」(11月2日ワシントン時事)と証言している。仮に、この証言内容が事実とすれば、北朝鮮による核・ミサイル開発の究極の目的は、体制維持ではなく、北朝鮮主導による「朝鮮半島統一」であることは明らかである。

 そうすると、北朝鮮に対しては、核とミサイルを手段とする「朝鮮半島統一」の目的そのものを放棄させない限り、北朝鮮に核とミサイルを放棄させることは不可能ということになる。しかし、北朝鮮が、平和的手段すなわち国連等の経済制裁と対話のみによって、金日成以来の国是である「朝鮮半島統一」の目的を自ら放棄することはあり得ないであろう。そうだとすれば、あとは軍事的手段による解決しか残されていないことになる。他国による侵害が差し迫ったものであるという「急迫性」の要件と、なされた自衛措置が他国による侵害と釣り合いのとれたものでなければならないとする「均衡性」の要件を充足すれば、特定の攻撃が急迫していると信じるに足りる合理的理由があれば、他国による武力攻撃が発生していない段階でなされる先制的自衛措置も、国際法上許容されると解されている(山本草二著「国際法」新版732頁~733頁、2003年有斐閣刊)。

 歴代日本政府の憲法解釈でも合憲とされる、座して死を待たない「敵基地攻撃能力」もこれに該当すると言えよう。度重なる国連決議を無視して核実験と弾道ミサイル発射を繰り返し、日本及び米国に対して、「日本列島を核爆弾で海に沈める。」「米国本土を灰にする。」などと恫喝する北朝鮮の脅威が急迫し、且つその脅威に対処するため他に選択肢がない、すなわち平和的手段による解決が不可能であると米国が最終的に判断した場合に、米国による北朝鮮に対する先制攻撃は、上記国際法理論によれば許容される余地がある、と解すべきであろう。

エネルギ-・ツァーの座を狙うプーチン   
投稿者:川上 高司 (東京都・男性・拓殖大学教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-04 18:55 [修正][削除]
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3213/3223
 11月30日、ウイーンでOPEC会議が開催された。議題はひとつ、減産を継続するかどうかである。現在の原油価格は1バレル60ドル台にあり、今年7月に45ドルまで下落したことを考えるとかなり持ち直したといっていい。石油は世界が必要としている。そのため石油価格はこれまでは主に産油国に主導権があった。その最も頂点に立っていたのがサウジアラビアである。

 世界の大国であるアメリカですらサウジアラビアには気を遣い、サウジとの関係を良好なものに保ってきた。しかし、時代が変わり、オバマ大統領時代にはアメリカの外交はサウジに配慮することがなくなった。シェールオイルの開発によりアメリカは産油国となりサウジに気兼ねする必要がなくなったのである。その隙間にがっちりと入り込んできたのがロシアのプーチン大統領である。彼はユーラシアに張り巡らされている石油・天然ガスのパイプラインを駆使して地政学を展開してきた。

 たとえば今年8月、ロシアはトルコとイランの3カ国で70億ドル投資してイランの石油・天然ガスの開発をすることで合意した。また、住民投票で注目を集めたイラクのクルド人自治州にあるキルクークへの4億ドルの投資でイラク自治政府と合意した。キルクークの石油はトルコのパイプラインによって地中海へと運ばれることになっている。さらにロシアはイランから1日あたり10万バレルの石油を購入し、その支払いとして450億ドル分の商品を輸出する(ただし半分はユーロで支払い)という協定も結んでいる。アメリカがイランへの経済制裁を強化する中、それをビジネスチャンスと政治的チャンスに捉えてしたたかに中東、そしてエネルギー市場での覇権を固めつつある。

 いまでは、OPECのメンバーではないロシアがウイーンのOPCE会議で何を言うか。それが世界のエネルギー市場を大きく左右しひいては世界経済を揺さぶる。かつてのサウジアラビアが担っていた役割はいまやプーチンが手中に収めている。まさに彼は世界のエネルギー・ツァーと言っても過言ではない。アメリカはこのまま中東からプレゼンスを失い本当に「アメリカ・ファースト」の国になるのか。サウジアラビアの不穏な国内情勢も予断を許さない。シリアの内戦も終結したわけではない。イエメンの人道的危機は深まるばかりである。流動的で予測のつかない中東情勢にトランプ大統領はどう外交政策を展開するのか。注目していきたい。

習近平の中国は文革時代に近づいているのか?  ツリー表示
投稿者:加藤 隆則 (非居住者中国・男性・汕頭大学長江新聞與伝播学院教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-02 22:19  
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3212/3223
 東京の雑誌編集者から、「習近平への権力集中はもはや文化大革命の再来と言われている」と聞かされたことがある。日本での報道は「党中央の核心」と権威づけられた習近平を毛沢東と重ね、その集権的、強権的な政治手法を文革に結びつけることで、中国脅威論を煽っているのだろうか。籠の中に閉じこもっていると、妄想ばかりが膨らんでいく。視野が狭まっていることさえ自覚ができなかれば、かなりの末期症状だ。

 まずは文革(1966-76)が起きた国際・国内の情勢を振り返る必要がある。当時、米国によるベトナムへの空爆で中国は資本主義化の危機感を募らせ、一方、フルシチョフのスターリン批判を契機とするソ連との対立で、国際共産主義運動の主導権争いも激化した。米ソの両大国を敵に回した絶体絶命の危機だった。国内は戦争に備え、大都市には防空壕が掘られ、沿海部の軍需・重工業拠点は内陸部に移された。海外との交流は厳しく制限され、事実上の鎖国状態だった。これに毛沢東の主導する権力闘争が結びついて文革は起きた。全国民が毛沢東語録を手にし、神のようにあがめる個人崇拝が極限にまで達した。伝統文化は破壊され、それに毛沢東思想が取って代わった。疑似戦時体制のもと、法が踏みにじられ、人権ばかりが多数の人命が犠牲となった。

 では今はどうか。メディアは米中の対立と衝突ばかりに目を向けるが、50年前との比較にならないほど様変わりしていることを忘れてはならない。ケチをつけるのは簡単だが、大局を見据える視点がなければ世論を誤導することになる。習近平は、海と陸のシルクロード戦略「一帯一路」に代表される全方位的なグローバル戦略を掲げている。ロシアとは過去にない蜜月状態だし、その関係をもとに中央アジアやBRICSとの連携を探っている。米国とは多くの摩擦を抱えながらも、人とモノ、金を通じた相互依存関係はどの国より深いと言っても過言ではない。年間、1億2000万人以上の中国人が海外に行き、1億4000万人以上の外国人が中国に来る時代だ。若者は国内のネット規制を乗り越えて海外サイトと接続し、日本メディアがさかんに引用する人民日報や中央テレビのニュースに目を通している庶民はごくわずかでしかない。つまり、日本の内向き指向とは逆に、過去にない外向き時代を迎えているのだ。ハーバード大やオックスフォード大には中国人留学生があふれ、海外の観光地も中国人観光客でごった返している。いい悪いの問題ではなく、これが現実である。どうして「文革の再来」ばかりが伝えられるのが、不思議でならない。世界を見るフィルターが大きくずれていることに早く気付かなければならない。

 習近平の集権化は北京・中南海での話だ。もちろん中国の政治を見極めるためには中南海ウオッチが欠かせない。党幹部も連日、習近平演説を学ぶのに必死だ。いつ腐敗調査が及ぶかわからない不安と背中合わせである。だが、大半の庶民には縁遠い話だ。いくら習近平用語集を出版しても、それを手に歩いていたら奇異な目で見られるだろう。習近平に対する庶民の高い支持は、強い指導者像と平易な親しみやすい演出の二面からで、個人崇拝というよりは、大衆政治家の人気に近い。中国が今抱えている深刻な課題は、中南海での権力集中とは逆に、社会主義イデオロギーが色あせ、信仰が揺らいでバラバラになっている国民をいかに一つにまとめていくかということだ。できるはずのない幻想を求めなければならないのが、イデオロギー政党の宿命である。そこでたどりついたのが、国民を精神的に団結させるための伝統文化、つまり孔子や孟子から老荘思想まで、使えるものは何でも使うというスタイルだ。思想のつまみ食いから「習近平思想」は生まれない。伝統を否定して一から作り上げた「毛沢東思想」とは大きな違いがある。

「洋の東西」に分ける日本と「東方西方」の中国   
投稿者:加藤 隆則 (非居住者中国・男性・汕頭大学長江新聞與伝播学院教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-02 21:35 [修正][削除]
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3211/3223
 清末から民国にかけての上海を舞台にした最新映画『上海王( Lord of Shanghai)』を見ていて、すっかり忘れていたことに気付いた。マフィアの仲間が一時身を隠すため、「東洋に行く」と話すセリフがある。英語の字幕は「Japan」とある。中国で東洋、東瀛(とうえい=瀛は大海の意味)といえば日本を指す。大陸国家の中国にとって、大海の先にある日本は、伝説に包まれた島国として強く意識されていた。日本での東洋はアジア全域を指し、西洋との対比として誕生した。「洋」とは言っても、海を基準とする厳密な概念ではなく、近代以降、欧米文化の流入によって生まれた文化的な区分を含む。地理的にどこからどこまでと明確な線引きができるわけではない。「西洋(オクシデント)」に対する「東洋(オリエント)」は、いわば借りてきた概念だ。日本人が東洋というとき、自分が含まれているのかいないのか、なにを中心としているのか、どこか座りが悪いのはそのためである。

 中国は、日本人が分ける「洋の東西」について、東方、西方と言う。近代以降、日本から多数の和製漢語を取り入れた中国だが、「東洋」「西洋」は受け入れなかった。西方がユーラシアと陸続きになっている中国は、大海によって世界を分ける発想がないからだ。海洋進出についても、明代の永楽帝が鄭和に遠洋航海を命じ、アフリカにまで到達しているが、王朝の権威を高める朝貢の強要が主たる目的で、領土拡張にはつながっていない。陸戦は重ねてきたが、概して海洋に対しては無頓着である。毛沢東の軍事戦略も海軍建設よりは、核兵器開発と陸上戦の両面をとった。沿海部の軍事工場を内陸に移したのはそのためだ。鄧小平時代以降、中国は沿海部を改革開放の拠点と位置づけ、海の外に目を向け始める。そして今、習近平総書記がさかんに二つのシルクロード経済圏「一帯一路」をアピールしている。

 大陸続きに中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト(一帯)」と、沿岸部から東南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸に至る「21世紀海上シルクロード(一路)だ。中国からみた東方と西方を結びつける発想である。グローバル化の中で、中国が歴史的な発展を踏まえて提示した戦略と位置づけることができる。習近平の父は、かつてシルクロードの中心だった陝西省で生まれ育ち、彼自身も同省の農村で暮らした経験がある。また、沿海の福建、浙江省で長く党・政府の経験を積んでいる。陸と海の両面から世界を把握する発想を持っているとみるべきだ。

 日本はシルクロードの終着点として多くの文物を受け入れ、現代にまで伝える貴重な役割を担ってきた。だが、「洋」にとらわれる地理的な制約から、大陸を起点とする発想に欠けている。陸の向こうに広大な世界が広がっていることにも目を向けるべきだ。そこから目を背ければ、おのずと太平洋をはるかに隔てた米国への一辺倒に向かうしかなくなる。トップ同士がゴルフをしただけで大騒ぎをしている日本のメディアは、頭を冷やし、世界地図を広げながら歴史を回想した方がいい。ヨーロッパは米国の先にあるのではなく、中国の西方に陸続きで存在し、功罪を含め、往来を続けてきた歴史がある。

習近平主席の“皇帝気取り”は自己矛盾   
投稿者:倉西 雅子 (東京都・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-12-01 14:22 [修正][削除]
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3210/3223
 中国では、10月18日に首都北京で開催された中国共産党第19回代表大会を機に、習近平国家主席が権力基盤を固めたとする見方が有力です。その自信の現れか、アメリカのトランプ大統領の訪中に際しては、あたかも“皇帝”のような振る舞いで同大統領を手厚く歓待したと報じられております。特に耳目を集めたのは、紫禁城(故宮)を舞台とした豪華絢爛な接待です。一般の国民には公開されていな特別の部屋において催された夕食会は、かつての紫禁城の主であった皇帝主催の宴会を髣髴させるほど、贅を尽くした宴であったことは想像に難くありません。アメリカに対しては自国の威信を示すと共に、国民に対しては自らの権威を高める絶好の機会と見なしたのでしょう。習主席を主人公とする“中国の夢”への舞台の幕が開いたかのように。

 しかしながら、この過剰な演出は、習主席の自己矛盾を炙り出すこととなったように思えます。何故ならば、今日の中華人民共和国とは、同国の憲法の前文にも謳われているように、過去の中華帝国(封建帝政)との決別と否定の上に成立しているからです。しかも、紫禁城は、漢人にとっては異民族となる女真族が建国した清国の皇帝の居城です。首都北京も、女真族の金朝が燕京として首都とし、その後、元朝のフビライ・カーンが大都を造営しており、異民族支配の色彩が強い都市とも言えます。今日の中国の積極的な海洋進出は、明朝時代の永楽帝による鄭和の遠征を模しているのかもしれませんが、このような習主席の復古趣味は、“中国の夢”とは、それが異民族支配であれ、絶対権力者である皇帝が君臨する帝政への回帰ではないか、とする疑いを国民に抱かせることでしょう。

 加えて、故宮での豪華絢爛な饗宴は、近年、習政権が進めてきた“贅沢は敵”の綱紀粛正政策にも反しています。一般国民や他の共産党員には質素倹約を強要する一方で、自らは、皇帝さながらに贅を極めるようでは、示しがつかないこととなります。中国国内では、習主席の権力掌握と並行するかのように情報統制が強化されており、それは、逆から見ますと、国民の不満が高まっている証ともなります。

 今日の中国は、共産主義が約束した“平等”とは、結局は、プロレタリアート独裁を名目とした、独裁者、あるいは、共産党員という一部の特権階級の出現に過ぎなかったことを、自ら証明しているようなものです。平等が不平等となり、過去の否定が未来の理想となる現実は、中国のみならず、目的地と到着地が逆になり、右に行ったつもりが左に至るといった、今日の政治の世界で散見される“二重思考”、“逆転思考”あるいは、“循環戦略”ともいうべき詐術的政治手法への警戒感を、厭が応でも高めているように思えるのです。

日本は脱石炭に舵を切るべきではないのか   
投稿者:鈴木 馨祐 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-29 20:15 [修正][削除]
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3209/3223
 先般、ドイツのボンでCOP23が開催されていましたが、その場において、カナダやイギリスが主導し、効率の悪い石炭火力発電所を将来的に全廃する国の連合が発足しました。いつも言っていることやっていることが異なる中国はもちろん加わっていませんが、日本も、ドイツやアメリカと並んで態度を保留にしています。私は従来から党内の様々な会議で、日本のエネルギー基本計画等の議論において石炭にあまりにも重点が置かれてきたことに異を唱えてきました。実際、多くの国が2030年までに石炭発電の比率を0%に、アメリカですら2030年に7%にするといっている中で、日本の計画では2030年時点で26%が石炭火力からのエネルギーということになっています。

 このエネルギー基本計画を実現することが不可能なことは、国際社会の潮流を見ればほぼ明らかです。むしろ、日本政府が石炭発電に関する態度を経済界への配慮で先に延ばせば延ばすほど、実際に石炭火力発電に投資を考えている電力会社の判断を誤らせることになりかねません。また政府の姿勢がはっきりしなければ必要な再生可能エネルギー関連のイノベーションに資金が十分に向かわないことになりかねず、そうなってしまえば、日本は大きな成長が見込まれる再生可能エネルギー分野での国際競争力を失うことになりかねません。

 時代を先取りした正しい規制が正しいマーケットを作り出し、そのことが、技術や標準化、規格の面での国際的ルールづくりでのリーダーシップに繋がり、結果的に日本の国際競争力強化につながる。このダイナミズムを政治は軽視すべきではありません。ESG投資といった用語が一般化する中で、先日はノルウェーの国のファンドが石炭はもちろんのこと、石油や天然ガスに関連する企業への投資を順次やめていくという発表もありました。化石燃料に関連する企業は、将来のビジネスリスクが非常に大きいため投資先としてふさわしくないという判断があったようです。日本においても、公的年金の運用をするGPIFがESG投資をリードし、年金基金や保険会社などの機関投資家において長期リスクとしての環境リスクへの認識が高まっています。

 ビジネスにおいて、政策の方向も含めた予見可能性は極めて重要です。政策決定の中で、石炭にこだわることで、あるいは判断・決断を先送りにすることで、日本の企業が本来作れたはずの様々なアドバンテージをみすみす失う事態を招くことは将来に責任を持つ政治家としてしてはならないことだと私は考えます。なかなか動きが遅い日本、とりわけ永田町や霞が関がそうですが、今後エネルギー基本計画の見直しに向けた議論が本格化してくタイミングでもありますので、世界の潮流の中で再び日本が気候変動の分野はもちろん、様々なイノベーションにおいても世界をリードできるような環境づくりに向け、しっかりと頑張ってまいりたいと思います。

習近平が安倍に見せた「笑顔」と軍事パレード   
投稿者:加藤 隆則 (非居住者中国・男性・汕頭大学長江新聞與伝播学院教授・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-28 17:06 [修正][削除]
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3208/3223
 安倍晋三首相は11月11日、訪問先のベトナムで習近平総書記と会談した。日本では習近平が安倍と笑顔で握手する場面が注目され、あたかもそれを日本の勝利であるかのように報じるメディアもあった。大本営発表を垂れ流す、かつての自己検閲報道と変わらない。両首脳の笑顔の握手は、日本の対中政策の成果ではなく、習近平の事情が変わったに過ぎない。安倍は訪中を約束したが、習近平は訪日を明言していない。ハイレベル対話再開の見込みも示されず、手詰まり状態は全く打開されていない。
 
 習近平の「笑顔」は余裕の表れだ。安倍が集団的自衛権の容認や歴史認識の再定義、そして改憲を通じてアジアに脅威をもたらしているというのが中国側の公式見解であるが、それでもなお「笑顔」を演じられるのは、政治的リスクの大きい対日政策で足元をすくわれる憂慮がなくなったことを意味する。トランプ米大統領の訪中が初期の目標を達成し、すっかり自信を深めたのである。習近平が権力基盤を固めれば、日中関係は安定するが、「笑顔」は日本を通り越し、米国に向けられていると考えた方がいい。習近平が目指す「二つの百年」目標は、「反日」どころではなく、日本を超越する「克日」「超日」の思想である。
 
 習近平の権力掌握について、先日、大学の同僚と議論をしていて、2015年9月に行われた抗日戦争勝利70年の軍事パレードが話題に上った。中央軍事委主席の習近平が乗ったのは、全長6.4メートルの黒塗りの国産高級オープンカー「紅旗」だ。吉林省長春の第一汽車が閲兵専用に製造したもので、今年は初めてナンバープレートの位置に国章が置かれた。1959年に初めて閲兵専用の車が製造され、1984年、1999年、2009年と改良を重ねてきた。その都度車の性能が高められているのは言うまでもないが、2015年の軍事パレードで際立ったのは、総指揮官である宋普洗・北京軍区司令の車両だった。習近平と宋普洗はどちらも「紅旗」に載ったが、明らかに習近平の「紅旗」の方が大きい。圧倒的な差を見せつけている。ところが過去の例では、中央軍事委主席と総指揮官の紅旗の差はさほど目立たない。
 
 議論が分かれるのは、習近平の代になって生じた大きなパレード用車両の格差が、なにゆえなのかということだ。ある者は、習近平が進める綱紀粛正で倹約化が浸透し、主席以外の公用車が簡素化されたとみる。またある者は、主席の権威が高まり、その他との落差を強調するためだったとみる。ぞれぞれに道理があるようだが、いずれにも共通しているのは、習近平が軍をしっかりとコントロールできているとの認識だ。軍は権限の源泉である。余裕の「笑顔」の源泉も、こんなところにあるのかも知れない。

(連載2)メディアはSNSとどう向き合うべきか ← (連載1)メディアはSNSとどう向き合うべきか  ツリー表示
投稿者:牛島 薫 (埼玉県・男性・団体職員・20-29歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-25 10:52 [修正][削除]
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3207/3223
 これは、いわゆる「慰安婦」問題に関する一流新聞社の記事撤回を機により顕著な傾向を示すようになった。「報道しない自由」というネットの皮肉った俗語にもあらわれているようにSNSユーザーの間では、これを機にジャーナリズムに対する信用が大きく揺らいだ。かつてはメディアが持つ権威性が匿名ユーザーによる批判に力を持たせなかったが、これ以降潮目が変わった。新聞などのメディアの記事はSNSで容易に(大抵は引用者の批判的な解釈を伴って)伝播し「この情報を流さなかった」とか「あの情報ばかり強調する」とかいった批判が事あるごとに強調され同調するSNSユーザー間でメディアへの嫌悪感が拡大していくようになった。そこにはジャーナリズムに対する信頼というものはない。この傾向は今回の解散総選挙で特に顕在化した。新聞やメディアは森友問題や加計問題などに多くの時間や面積を費やして安倍政権の検証を行ったが、Twitterを始めとしたネット上ではそれが逆に「偏向報道」の根拠として材料化されてしまっていた。

 その結果、多くのSNSユーザーは森友問題や加計問題に耳を貸さない状態になったのであろう。あれほど新聞やテレビが重点報道したにも関わらず、各社の直近の世論調査はどれも同問題を国民が軽視することを示すデータを弾き出した。投票日前から既に与党大勝の世論調査ばかりがでて、メディアの方向性と噛み合わなかった。メディアはこの手の失敗を特定秘密保護法や安保法制でも繰り返しているが、それでもメディアがキャンペーンを張っている最中は世論は大きく反対に傾いていたため、今回の解散総選挙以前は短期的にはメディアの影響力はなおも強力だったのは確かだ。しかし、今回の解散総選挙では当初からメディアの影響力は限定的で世論に影響を与えられなかったことを考えると、エポックメイキングな出来事であった可能性がある。(なお、反安倍政権派の主張も同じような原理でネット上で伝播している。今回の選挙でメディアは希望の党や立憲民主党に対する評価を必ずしも明確に行わなかったが、前者が潰滅的な当選率となった一方で後者が躍進したのもネット上のトレンド推移からある程度説明できる。)
 
 では、新聞やテレビなどの既存のメディアはその歴史的役割を終えたのかというとそうではない。「ネット世論」は多様性がその性質上生まれにくく、是か非かの極論に寄り易い。その上、SNS上に広がる莫大な量の情報の殆どは発信者の都合や目的に合わせて意図的に加工されているにも関わらず、取捨選択して知識として適切に解釈する情報リテラシーがユーザーに十分に備わっているかといわれれば、そうとはとても言えない状況だ。デマや極論、差別や妄想の類が常にネット空間に充満している。なにより取材を結局は既存メディアのマンパワーに依存している場合が多く、現状ではSNSそのものが報道機関の代替物たり得ることはできない。しかし、既にネットユーザーたちが総体として、発信される情報を容易に比較・検証できる力を獲得したことをメディアは胸に刻まなければならないであろう。既存のメディアはこの十年、発行部数の減少や視聴率の低下など主に収益面からインターネット時代の身の処し方を議論してきた。新聞は電子版を発行しポータルサイトに記事を配給している。テレビ局はインターネット上に番組を供給するようになった。これはこれで素晴らしい企業努力だが、しかし、ジャーナリズムの側面からのインターネット時代の身の処し方については大いに課題が残っているのではないか。

 「ネット世論」という新たなダイナミズムが国政選挙にまで影響力を及ぼすまでになった以上、これを無視したり蔑視したりするべきではない。メディアは民主主義に不可欠な社会の公器であるにもかかわらず、困惑し無策に迷走しているのは残念としか言いようがない。あまり難しく考える必要はないのではないか。SNSは究極的には広告業の類で政治領域で威力を発揮したのは意図したものではない。ユーザーも情報交換や精神活動のツールとしてSNSを利用しているに過ぎない。SNSは世論形成のために設計されているわけではないし、SNSユーザーはジャーナリズムなど意識せず集団心理に似た運動をする。そういうSNSの特性を踏まえればメディアが共存する方法はいくらでもあろうと思う。既存メディアはSNS時代の新しいあり方を提示し、力強く世論を啓発してほしい。(おわり)

(連載1)メディアはSNSとどう向き合うべきか  ツリー表示
投稿者:牛島 薫 (埼玉県・男性・団体職員・20-29歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-24 22:31  
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3206/3223
 一ヶ月前、安倍自民党の解散総選挙大勝に日本中どころか世界中が注目した。あれほど退潮著しく見えた安倍自民党が実質増勢となる得票を獲得したことは、先駆けて行われた東京都議選の結果を踏まえればにわかに信じがたいものであった。その裏で、今回特に特異だったのが新聞やテレビといった既存メディアとTwitterを代表とするSNSを介して生まれる「ネット世論」の乖離である。今次の衆院選における、安倍政権に否定的な大手メディアとTwitterなどのSNSを介して形成される「ネット世論」の対立構造は、私のような一般大衆にも非常に分かり易かった。SNSを利用しない国民は全く気付かなかったであろう驚きの現象が電脳世界で起きていたのである。既存メディアに徹底的に反発する「ネット世論」がサイバー空間で躍動していた。終わってみれば幾多の国政選挙を経て不敗の第二次安倍内閣は、既存メディアの猛攻を受け続けたのにも関わらず、またも倒れなかった。未だかつてここまでメディアの論調と選挙結果が乖離したことはなかった。
 
 日本でSNSが普及し始めたのは、米アップル社がiPhone3Gを投入して日本に進出してきたのが契機と言っても過言ではない。後続のiPhone4sが登場した2011年頃には、独自仕様の塊であった日本製の携帯電話は駆逐されてしまった。これはたった6年前のことである。これより更に一時代遡ると、パソコンの時代があった。2ちゃんねるを代表とするインターネットコミュニティはパソコンの普及とともに成長したが、パソコンは高価で専門性が高く何より文字文化でエンターテイメント性が低かった。当時のインターネット環境ではギークのたまり場以上にはならず国政選挙に影響を与える力は持たなかった。

 ところが、iPhoneはインターネットで瞬時かつ簡単に文字だけではなく動画や写真が付属した即時性のエンターテイメントを入手し配信する手段を庶民に与えた。そして現在ではSNSは、ユーザーの「好きな情報」を無尽蔵に供給し続けており多くの日本人がSNSに魅了されている。要するにSNSによって、流動性が低く偏在しがちだった情報は普遍的かつ即時性のものになった。対する既存メディアは、SNSに比して情報伝播力での優位性を失っている。民主党への政権交代が起きる以前は、メディアを敵に回した政権は大抵求心力を失ったが、スマートフォンが普及した東日本大震災以降の政権はその関連性が弱くなっている。ただし、既存メディアが存在価値を失ったわけではない。

 SNSの多くの情報は既存メディアから供給された情報を含んだものだからだ。だが、実はここに今回の既存メディアと「ネット世論」の乖離のミソがある。現代のSNSユーザーは「好きな情報のみ」を浴びることに耽溺する傾向が顕著になっている。というのも、インターネットが世界中のあらゆる情報にアクセスできるからといって、必ずしもユーザーが多様な情報に触れるわけではないからである。人間は自分の信念に合った情報ばかり集め、合致しないそれは無視する傾向がある。これは補強効果といわれ昔から知られているが、SNS上では顕著で、ディアが発信する情報が直ちに無名の人々によって検証され、都合がいいコンテンツであれば過激な表現で引用・補足されてSNS上で拡散される。もちろん不都合な情報であれば無視される。なお、こういうことはインターネット以前からあったことではあるが、かつては知識層、特に学者や記者などのごく一部のステージでしか起こらなかったことが、スマホを持っている人ならば誰でもその現象に自ずと関与するようになったために、そのダイナミズムはかつてない激しさだ。(つづく)

今次ASEAN+3首脳会議の評価   
投稿者:菊池 誉名 (東京都・男性・日本国際フォーラム主任研究員・30-39歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-24 14:34 [修正][削除]
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 さる11月13から14日にかけて、フィリピンのマニラで一連のASEAN関連首脳会議が開催された。同一連の会議については、日本国内でも連日大きく報道されたが、その多くが東アジア・サミット(EAS)にトランプ大統領が欠席したことや、北朝鮮やロヒンギャの問題について話し合われたことばかりに焦点が当てられていた。こうした協議が進展したことは歓迎すべきことであるし、またこれらがASEAN関連首脳会議の一側面を示していることも間違いない。しかし、これら一連の首脳会議、特にASEAN+3(APT)首脳会議は、設立当初から、経済、金融、防災、食料安全保障など様々な分野における機能的協力を推進し、さらに将来的な東アジア共同体構築を目標に、その「主要な手段」となることが首脳間で合意されて本日まで運営され続けてきたものであり、その観点から分析しなければ本質を見誤ってしまうであろう。そこで本稿では、機能的協力と東アジア共同体の観点から、本年のAPT首脳会議の成果を考察し、今後のあり方について若干のコメントを行いたい。

 まず、機能的協力について、今次会議ではチェンマイ・イニシアチブやASEAN+3マクロ経済事務局の一層の強化が確認されるとともに、新たに「食料安全保障に関する声明」が採択され、さらに日本からは高齢者の生活向上を図る「アジア健康構想」が提案されるなど、引き続き域内協力の拡大を期待させるものとなったといえる。他に、APT設立20周年をふまえて、首脳間で「ASEAN+3協力20周年に係わるマニラ宣言」が合意されたことも大きな意義がある。というのも、この宣言は1999年の「東アジアにおける協力に関する声明」、2007年の「東アジア協力に関する第二共同声明」につぐ首脳間の包括的内容の合意声明であるが、歴代の声明がAPT域内の協力を推進する基盤となってきたことを考えると、今後の地域協力の進展にとって大きな成果となることが期待できるからである。

 次に、東アジア共同体について、今次会議で目立ったのは東アジア経済共同体(EAEC)に向けた動きである。EAECは、2012年にAPT首脳に提出された東アジア・ビジョン・グループⅡ(EAVG2)報告書において提起された構想であるが、丁度同じ時期に、日本主導の東アジア包括的経済連携(CEPEA)構想と中国主導の東アジア自由貿易圏(EAFTA)構想が収斂して新たに東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が打ち出されたこともあり、今日まで閣僚・首脳レベルであまり取り上げられることがなく特段の進展がみられなかった。それが今次会議においては、中国の李克強首相が地域統合のためにEAEC構築に向けて進んでいくべきである旨のスピーチを行い、先にのべた「ASEAN+3協力20周年に係わるマニラ宣言」の中でもEAECについて数回にわたる言及がされている。これらの動きから推測すると、今後中国はAPTの中でEAEC構築に向けてイニシアチブをとっていこうとしているものとみられる。この点については、日本として注意が必要になってくるだろう。というのも、近年中国は東アジア運命共同体、AIIB、一帯一路などの地域枠組みを次々と打ち出しているが、そのいずれも、いまのところ透明性や公正性などの観点から懸念が生じているからである。つまり、EAEC構築を目指すこと自体は日本として反対するものではないだろうが、その内容については注意が必要だということである。

 以上のように、今次APT首脳会議を考察すると、機能的協力においてはさらなる進展がみられ評価できるが、東アジア共同体においては中国によるEAEC構想への傾注が顕在化し、それには一定の懸念があるということであろう。それではこうした現状の中で、日本はどのような対応をとるべきであろうか。一つには、これまで日本が、EAS設立に向けて各国の対立が表面化した2004年に打ち出した「論点ペーパー」をはじめ、折りにふれて普遍的価値原則を根本に据えた共同体のあるべき姿を提起し、それがもととなって地域統合を推し進めたという経験にならうことではないか。EAECをはじめ、東アジアを対象とした地域統合・協力構想が次々に打ち出されているなかで、再び日本より普遍的価値原則を根本に据えた共同体のあるべき姿を打ち出し、共同体が追求すべき原則を地域で再確認しつつ、同時にAPTの特徴である機能的協力を強化し、この地域の信頼醸成と統合を進展させていていくことが必要である。

北朝鮮を巡る米中の動向   
投稿者:中山 太郎 (東京都・男性・非営利団体非常勤職員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-24 12:21 [修正][削除]
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 11月23日付けの姉妹e-論壇「百花斉放」に掲載された金井進氏の投稿「杉浦正章氏の『米国による北へのテロ国家再指定で対中圧力』へのコメント」につき、外野からひと言述べる。北朝鮮の核、ミサイル開発への対応につき、西側は、歴代の米の対応の生ぬるさを指摘する声が大きいが、実際は、北の生存権を握る中国の対応が最大の問題なのだ。

 中国は従来、北の核は中国へ歯向かわないと安心しており、日本や米が苦慮するのを高みの見物的な側面が大きかった。だが、今日のようにモンスターが成長まじかになると、そうとは言っておれなくなり慌てだしているというのが現状だ。中国国内の対北議論でも、最近はもっと北に強く当たるべきという声が多くなってきた。だが、北と真に対決して、北を抑えるまでいくかといえば、西側の一部では、「習近平の権力基盤が今回の党大会で強力になった」、「習近平の個人独裁の政治体制」などといわれるが、実はこうした非民主国家の常として、基盤はもろいものを持っている。

 中国がお経の文句のように述べる、「朝鮮半島非核化」への口先だけではない真の実行へは難しい情勢だ。しかし、北の核・ミサイルが精度を増し、中国へも威圧感を持ち出している現状や、北が持てば必ず日本も持つだろうと彼らは条件反射的に考えているので、深刻な状態にある。一方中国は、米国との対応に万全の配慮をし、そこを押さえれば、それに付随する日、豪などへの対応は大丈夫だと踏んでいる。国内では、習近平は今回のトランプの訪中を一応は上手く収めたと見られている。だが、今回の北へのテロ再指定にみられる通り、トランプもさるもので、対中国への圧力を再度かけてきている。

 今後の見通しとしても、一時期は米中何とか妥協点を探り小康状態になるとしても、その先には米中対決激化の構図が予想されるのだ。一方米の国内でも意見が割れており、北の核を黙認し、米本土を狙う長距離ミサイだけでもフリーズさせ手を打つというシナリオも述べられている。これは、日本にとり最悪の事態だ。今後の各アクターの動きが注目される由縁だ。

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