その他研究会の活動

日中研究交流
「『質の高い』社会構築に向けた日中協力のあり方」

2019年9月~2020年3月
東アジア共同体評議会事務局


日中研究交流「『質の高い』社会構築に向けた日中協力のあり方」研究会

かつて、日中関係においてODAが中心的な政策課題であった時代は、両国間の平和は前提であった。しかし、現在はそれすら考えなければならないほど、両国関係の前提は変化している。両国で価値、規範、発展を共有し、「共に未来を創る」という概念を相互に確認してゆかなければならない時代となっている。日中関係は、国際社会、特にアジアの繁栄や安定を担う責任を持った国家同士として、新たな協力関係を築いてゆく必要がある。

グローバル化の進展にとない各地で保護主義・内向き志向が顕著となっている一方で、中国はかつての経済発展のために資金や技術、また人材などを世界から「迎え入れる中国」から、グローバル・ガバナンスに積極的に貢献する「世界に打って出る中国」へと発展の方向を転換している。しかしその中国は、「一帯一路構想」における所謂「債務のわな」の問題、デジタル化の進展にともなう監視社会リスクや知的財産侵害のリスク、日本以上に急速なペースで進む高齢化、さらには食の安全や海洋をはじめとする環境汚染など、多くのリスクを抱えている。こうした中で、日中が、これらのリスクに対応できる「質の高い社会構築のあり方」を探り、具体的な協力・政策を進展させ、さらにはそのなかから、日中で「質の高い社会」における国際的なスタンダードをうみだすことができるのであれば、国際社会にとって極めて重要な意義をもつことになるといえる。

以上のような問題意識のもと、当評議会は2019年度、「『質の高い』社会構築に向けた日中協力のあり方」をテーマとする研究チーム(主査:加茂具樹・慶應義塾大学教授、顧問:高原明生・東京大学公共政策大学院院長)を組織して調査・研究に従事し、その成果として以下の政策提言を発表し、さらに同提言を骨子とする報告書を取り纏めた。


【政策提言】


【日中関係全体について】

●かつて、日中関係においてODAが中心的な政策課題であった時代は、両国間の平和は前提であった。しかし、現在はそれすら考えなければならないほど、両国関係の前提は変化している。そうであるがゆえに、安定した日中関係の実現のためには価値、規範、発展の共有を大きな目標と位置付け、「共に未来を創る」という概念を相互に確認してゆかなければならない時代となっている。日中関係は、国際社会、特にアジアの繁栄や安定を担う責任を持った国家同士として、新たな協力関係を築いてゆく必要がある。

●日本の政治が「経済成長の果実を配分する政治」から「経済成長の代償(すなわちリスク)を配分する政治」へと変化した経験があるように、中国の政治もまた、「経済成長の果実を配分する政治」から「経済成長の代償を配分する政治」を追求する段階へと変化する途上にある。国民が求める国力は経済的規模ではなく、生活水準(幸福度)の高さとなる時代に入っている。日中両国は、「質の高い社会構築に向けたポストODAの協力」を模索し、両国が共通して直面している「リスク」に対して、どのように「協働対処」するかを検討していくべきである。

●ただし、「質の高い」、「リスク」という概念は、国家の規模や国家の経済水準の到達度によって微妙に異なる。日中で「質の高い」、「リスク」という概念の意義と重要性を共有できたとしても、その具体的内実についての関心は異なるはずである。両国でそれら概念に対する議論を進めるべきである。


【質の高い社会構築に向けた日中研究交流について】

●少子高齢化に伴う共通のリスクに対して、ヘルスケア分野においては、①介護保険および医療介護連携に関する制度研究、②ケアサイエンスの発展に向けた共同研究、③コミュニティケアの資源開発、④老年市場の発展に向けた介護関連産業の育成等に関する協力、⑤子どもを生み育てやすい環境と制度の構築に向けた共同研究、等を進めるべきである。

●食品安全におけるサステイナブル・シーフード分野のリスクに対して、トレーサビリティなど、食品衛生の管理や制度などを両国で協力して強化していくことが重要である。


【報告書】

最終報告書(政策提言含む)