政策本会議

第112回政策本会議
「高市政権の外交戦略とアジア地域協力の新展開」
メモ

2026年7月13日
東アジア共同体評議会(CEAC)事務局


報告のようす

第112回政策本会議は、坂本正弘日本国際フォーラム上席研究員・元経済企画庁経済企画審議官を報告者に迎え、「高市政権の外交戦略とアジア地域協力の新展開」と題して、下記1.~7.の要領で開催された。


  1. 日 時:2026年7月13日(月)16時より17時30分まで
  2. 開催方法:日本国際フォーラム会議にて対面およびZOOMウェビナーによる併用
  3. テーマ:「高市政権の外交戦略とアジア地域協力の新展開」
  4. 報告者:坂本正弘日本国際フォーラム上席研究員・元経済企画庁経済企画審議官
  5. モデレーター:菊池 誉名
            東アジア共同体評議会常任副議長 / 日本国際フォーラム常務理事
  6. 出席者:33名
  7. 審議概要

(1)高市政権の誕生と日本政治の転換

長年にわたり人口減少や少子高齢化が進み、デフレ経済も続いたことで、日本全体に閉塞感や悲観論が広がっていた。また、中国の急速な台頭や国際情勢の変化も重なり、日本は政治、経済、安全保障のいずれの面でも大きな転換を迫られていた。こうした状況の中で誕生したのが高市政権である。自民党として初の女性総裁が誕生したことに加え、公明党との連立を解消し、日本維新の会との連立政権を発足させたことは、日本政治の大きな転換点であったと考えている。自民・維新両党が取りまとめた連立合意には、憲法改正、安全保障関連三文書の改定、国家情報局の創設、スパイ防止法の制定、防衛装備移転の見直し、外国人政策の強化など、これまで十分に実現できなかった政策課題が幅広く盛り込まれた。これらは単なる政治的スローガンではなく、その後の所信表明や総合経済対策、予算編成にも反映され、実際の政策として具体化が進められている。また、高市政権は「責任ある積極財政」を基本理念として掲げている。従来の財政再建一辺倒の考え方ではなく、国民生活への支援、危機管理への投資、成長分野への投資、防衛力・外交力の強化を一体的に進めることにより、日本経済の再生と国家の競争力強化を目指している点に特徴がある。

(2)「責任ある積極財政」と安全保障政策

高市政権の政策の柱となっているのが、「責任ある積極財政」である。経済成長と財政健全化は対立するものではなく、経済を成長させることによって財政の持続可能性も高めることができるという考え方に立っている。具体的には、AIや半導体、造船などの先端技術への成長投資に加え、食料、エネルギー、経済安全保障など危機管理分野への投資を重視している。政府と民間が連携し、2040年度までに17分野・62製品技術を対象として総額340兆円規模の投資を進める構想であり、日本経済の競争力を中長期的に高めることを目指している。また、民間企業が安心して投資できる環境を整えることも重要である。政府による予算の予見可能性を高めるとともに、行政改革や社会保障制度改革を進めることで、民間投資を後押しする政策運営が必要になる。財政運営についても、従来のプライマリーバランス黒字化だけを目標とする考え方から転換し、GDPに対する政府債務残高の推移を重視する考え方へ見直している。経済成長を実現することで、結果として財政の持続可能性を確保していくことが重要である。安全保障については、防衛費をGDP比2%超へ拡充するとともに、安全保障関連三文書の改定、国家情報局の創設、スパイ防止法の制定、無人機や長距離反撃能力の整備など、安全保障環境の変化を踏まえた政策を進めている。強い経済を基盤として、外交力と防衛力を一体的に強化することが、高市政権の基本的な考え方である。

(3)高市政権の外交戦略と国際社会における日本の役割

外交については、高市首相は就任直後からASEAN首脳会議、日米首脳会談、APEC首脳会議、G20サミットなど主要な国際会議へ積極的に出席し、短期間のうちに各国首脳との信頼関係を築いてきた。とりわけ、イタリアのメローニ首相との緊密な関係や、日韓関係の改善に向けた取り組みは、国際社会からも一定の評価を受けていると考えている。対中外交については、台湾問題を含め、主張すべき点は明確に主張しながらも、対話の窓口は維持する姿勢をとっている。対立一辺倒ではなく、協力すべき分野では協力を進めるという現実的な外交姿勢が、日本に対する国内外の信頼につながっている。また、政権発足後に実施された衆議院総選挙で、自民党が安定した議席を確保したことにより、日本外交にも継続性と安定性が生まれた。各国にとっても、日本政府との中長期的な協力関係を展望しやすくなり、日本の発言力や存在感は以前にも増して高まっている。外交は経済、安全保障と切り離して考えることはできない。経済力があってこそ外交力が生まれ、防衛力の裏付けがあってこそ外交交渉にも説得力が生まれる。高市政権は、経済政策、安全保障政策、外交政策を相互に連携させながら、日本の国益を実現していくことを基本方針としている。

(4)ホルムズ海峡危機への対応とアジア地域協力

今回のホルムズ海峡危機では、日本は約240日分の石油備蓄を確保していたことに加え、サウジアラビアやUAEなどホルムズ海峡を経由しないルートからの調達体制も整備していたため、国内経済への影響を最小限に抑えることができた。しかし、重要なのは日本だけが危機を回避することではない。エネルギー安全保障はアジア全体の課題であり、日本が周辺国と連携しながら地域全体の安定に貢献することが重要である。その一環として進めているのが「Power Asia」構想である。フィリピンやベトナムなどに対する石油備蓄や調達体制の整備、金融面での支援などを通じて、アジア全体のエネルギー安全保障を強化するとともに、日本と地域諸国との信頼関係をさらに深めることを目指している。また、G7においても重要鉱物やエネルギー資源の安定供給に向けた国際協力を提唱してきた。危機が発生した際には自国だけを守るのではなく、地域全体の安定に貢献する姿勢を示すことが、日本外交への信頼につながると考えている。

(5)不安定化する国際情勢と今後の日本外交

現在の国際社会は、イラン情勢やウクライナ戦争の長期化、中国経済の停滞などを背景に、不安定さを増している。一方、日本は比較的安定した政治基盤を維持しており、この強みを生かしながら国際社会で役割を果たしていくことが重要である。今後の日本にとって最も重要なのは、持続的な経済成長を実現することである。そのためには、政府による投資だけでなく、民間企業による積極的な設備投資や海外展開を促し、日本経済全体の活力を高めていかなければならない。海外との関係では、日本企業は単に製品を輸出するだけではなく、現地生産や技術協力、人材育成を重視してきた。また、政府開発援助(ODA)についても、相手国の発展を支える姿勢を一貫して維持しており、こうした積み重ねが日本への信頼につながっている。防衛装備品の移転についても、日本は単なる武器輸出ではなく、技術移転や現地生産を組み合わせながら相手国の能力向上を支援している。こうした取り組みは、日本独自の国際協力の在り方として評価されていると考えている。日本は歓迎される国であっても、警戒される国ではない。この強みを生かし、経済、外交、安全保障を一体として推進することで、アジア地域の安定と繁栄にこれまで以上に貢献できると考えている。高市政権が今後どのような成果を上げるかは、外交だけではなく、経済政策を着実に実現できるかにもかかっており、その動向を引き続き注視していきたい。

以上
文責:事務局