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2008-10-15 12:29
(連載)ガバナンスは、21世紀最重要の課題(6)
廣野 良吉
成蹊大学名誉教授
第三は、政府を含めた組織においてガバナンスに関する基本方針・施策・実施体制が欠如しており、そのための指導力や説得力が欠如していることである。最近のわが国では、上述したように、基準値を上回るメタミドホスを検出した工業用輸入米を食用米として流通させ、不当な利益(1キログラム9円を125円で売却)をあげた業者を農水省が、取り締まらず、監督できない(しない?)。社会保険庁の職員個人や組織ぐるみの不正行為を厚生労働省が監督できない。地方自治体や教育委員会が住民や子どもの信頼を裏切る反市民的行為をしているのに、それらを監督すべき文部科学省が何もできない。
基本方針・政策を実現するという指導力・説得力が強固であれば、その政策の個別の施策に対する評価はいざ知らず、いかなる既得権益者の反対にも拘らず、一応の成果を挙げることができるということは、戦後のわが国の事例を見れば一目瞭然である。吉田総理の再軍備費を最低限に抑えた経済再建優先政策、池田総理の所得倍増論、田中総理の列島改造論、中曽根総理の国鉄、電電公社、専売公社等公企業の民営化、小渕総理の対人地雷廃絶国際条約の署名、小泉総理の規制緩和、郵政民営化で明確である。
同様なことは、地球温暖化対策上からもいえるであろう、現在の対策では2050年までに、温暖化は一層進み、グリーンランドの氷床がかなりの規模で溶け、北極海の氷が完全に消失し、100万種以上の生物種が絶滅すると予想されている。そのような中で、2050年までの温室効果ガスの削減は現状の50%では不十分であり、80%削減を政策目標とするように、大半の科学者は警告している。 しかし、国際競争上自己の利益を優先する個別企業や物質的豊かさや快適な生活条件を追い求める個人の声が大きいときには、温暖化対策を優先させる地球規模の新しい取り決めの策定を推進する強固なトップ指導力による規制措置や経済的手法の導入、そのための国民的・国際的合意作りがなければ、その実施は不可欠である。(つづく)
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