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2026-06-03 15:53
(連載2)防衛費増額は本当に絶対正義か
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
そもそも「GDP3.5%」の中身の議論をすっ飛ばして、予算増額だけを求めていくというのも、かなり乱暴な話である。日本は中国を仮想敵とみなし始めているが、他のアジア諸国が同じように中国を仮想敵とみなしている経緯はない。日本ですら、万が一、政権交代がなされて、中国との和解がなされれば、事情は一変する。ロシアとの敵対関係についても、同じ事情があると言えるだろう。
さらに指摘すれば、お金を沢山使うと、それに比例して軍事力が向上する、という保証があるわけではない。たとえば、必要性が低い中古の兵器を、アメリカから言い値の高額で購入し続けたら、どうなるか。軍事力の向上が図られないまま、軍事費ばかりが高騰していく事態となる。さらに突っ込んで指摘すれば、「必要性が高い兵器」は、精緻な分析に基づいて評価した脅威に対抗するための精緻な政策の構築があって初めて、認定できるものだ。分析が精緻になればなるほど、「必要性が高い兵器」の評価は、相対的になっていく。たとえば安価なドローンによる攻撃に、高額の地対空迎撃兵器で対抗していたら、費用の非対称性が著しく高まり、軍事作戦の合理性が失われてしまう。つい最近もイラン対アメリカ・イスラエル戦争で示された点だ。
果たして日本に、防衛費の執行の指針になるような、精緻な兵器購入計画を導き出す防衛政策に関する議論が、行われて様子があるだろうか?5年間で2倍になった防衛費が、どのような追加支出を行うようになったのか、どれだけの日本国民が知っているだろうか?「防衛費が2倍になった」ということだけで、もう何かを達成したかのような気になる人がほとんどではないだろうか?2倍になった防衛費を支える防衛政策を説明している国際政治学者らが、どれだけ存在しているだろうか?
「中国は脅威だ、だから防衛費を増やさなければならない」ということだけを繰り返し主張している「専門家」ばかりだ、という状況になっていないだろうか?増えた防衛費の中から相当額が、「中国の認知戦への対抗」に充てられる。防衛費の増額に異論を唱えるようであれば、「媚中派」として「認知戦対策」の対象に指定されてしまいかねない。そんな怪しい雰囲気を感じているのは、私だけだろうか。(おわり)
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(連載1)防衛費増額は本当に絶対正義か
篠田 英朗 2026-06-02 15:46
(連載2)防衛費増額は本当に絶対正義か
篠田 英朗 2026-06-03 15:53
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