なぜこのような違いがあるのかと言えば、事情が違うから、である。国際社会の総意は、事情が異なる事例に、強引に画一的なやり方をあてはめようとしても、うまくいかないなだけでなく、かえって混乱が広がる、というものである。この状態で、中国の台湾侵攻に対抗するための「集団的自衛権」の発動を宣言することができるのだろうか。それについて考えるためには、まず国際法上の国家の承認には、「宣言的効果説(Declarative theory of statehood)」と「創設的効果説(Constitutive theory of statehood)」の二つの理論があることを知らなければならない。前者は、他国の国家承認は、事実としての国家の存在を「宣言」して認めるものに過ぎない、という理論である。国家は事実として成立し、承認は法的形式をそろえるものにすぎない、という考え方である。後者は、他国の国家承認を受けて初めて、国家は国家として存立しうる、という理論である。他国から国家として認められていない存在は、国家として存立することができない、という考え方である。