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2025-09-18 15:35

(連載2)ロシア・ポーランドドローン侵攻の真意は何か?

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 さて、まずはロシアがポーランドまたはNATOと戦争をしたいのかということを考えてみましょう。2022年2月に始まったウクライナ侵攻は、少なくともクレムリンの感覚から考えればすぐに終わると思っていた戦争が、実際はかなり手こずっており3年経過しても終わらない状態になっています。その背景にはウクライナにNATOが支援しており、義勇軍や武器・弾薬の供与ということが上げられます。まだNATOに加盟していないウクライナに、これだけ多くの国が支援するということはまったく想定外であったということがあげられますしまた、ロシアの兵がウクライナの首都キーウを落とすことができなかったということもかなり大きなことになったのではないでしょうか。

 ポーランド政府はこの事態を「意図的な侵略行為」と断じ、北大西洋条約第4条に基づく同盟国間協議を要請。東部各地に航空管制や空域制限を導入し、NATO東側前線の防空体制を強化しました。ウクライナ全面侵攻開始(2022年)以降、NATO領空にドローンを送り込んだのは初の事例です。ロシアはこれによって、ポーランドが送る兵器・支援物資の供給に対する抑止と、同盟の結束度を試す狙いを示したとみられます。さて、NATO加盟国への攻撃決断は、プーチン政権内の強硬派が主導権を握り、戦況低迷による国内の不満を外向きの軍事行動でかわそうとする構図を浮き彫りにしています。

 攻撃後、ロシア外務省は「意図的な侵略ではない」と侵入事実を否定しつつも、同時に軍事的プレゼンスを誇示。国内的には強さのアピールと対外的批判回避がせめぎ合う、政権内部の焦燥が透けて見えます。逆に言えば、ロシアは「戦争の打開を何らかの形で謀らなければならない状態」に陥っているということが言えます。実際にロシアの国内経済はすでに戦時経済状況を通り過ぎて、かなりの不況担っておりまた、ウクライナの製油所攻撃などによってガソリンなどが枯渇してしまい(原油はあるけれども精油ができないので、石油製品として軽油やガソリンがない状態)、そのことで国内の状況も管理悪化しているということが報告されています。

 このように考えれば「膠着した状況のウクライナ情勢を、何らかの形で変化させなければならない」ということになり、そのことがロシアにとって必要であるということになるのではないでしょうか。そのうえ上海協力機構や、中国の軍事パレードへの参加など、中国との関係を「確かめなければならない」状態にあったということも挙げられます。実際に「アメリカから見れば」中国とロシアと北朝鮮は悪の枢軸国であるかのような感覚で見えますが、実際に中国とロシアと北朝鮮はそれほど仲が良いわけではないのです。これは第二次世界大勢当時の日本とドイツであっても、三国同盟などと言っていても、中国では中華民国を支援するドイツと、中華民国と戦う日本で対立していたし、ドイツは日本のことを完全にバカにしていたということがあります。動揺に中国とロシアは、2004年まで国境腺も決まっていなかった関係であり、その関係は今も尾を引きずっている。それが「反米」で同盟を組んでいるということになれば、当然にロシア派その戦線を拡大して、中国の真意を見なければならない。そのような事情もポーランド侵攻には考えられるということになるのです。単純に「間違ってポーランドにドローンが行ってしまった」というのではなく、その内容がロシアやその同盟国にとってどのような意味を持つのか、そのことをしっかりと見なければ真の国際情勢は見えないということになるのであります。(おわり)
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(連載1)ロシア・ポーランドドローン侵攻の真意は何か? 宇田川 敬介 2025-09-17 15:02
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