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2025-09-17 15:02

(連載1)ロシア・ポーランドドローン侵攻の真意は何か?

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 9月10日にロシアのドローンがウクライナポーランド国境を越境し、ポーランド国内に侵攻したことについて、その内容を分析してみることにしましょう。もちろん、ロシアのプーチン大統領の心の中まで見えるものではないので、現象から内容を想像するという手法を取りますが、それでもある程度しっかりと中を見てゆこうと思います。さて、まずは何よりも「戦争とはどのようにして始まるのか」という事であろうと思います。今回の件でロシアとポーランドが、またロシアとNATOが戦争になるのではないかというような報道が多く聞かれました。実際に戦争の危機であることは間違いがないということになりますが、ではそんなにすぐに戦争が発生するのでしょうか。

 戦争は国際法上、国家による武力行使の開始として扱われ、その正当性は国連憲章や慣習国際法の枠組みで厳格に制約されています。以下では、法的構造を段階的に整理し、戦争開始のメカニズムを解説します。国際法では「戦争」という用語は次第に「武力紛争(armed conflict)」に置き換えられています。武力紛争は国家間の国際的武力紛争と、政府と非国家主体間の非国際的武力紛争に大別されます。いずれの場合も、国際人道法(ジュネーヴ諸条約など)が適用され、民間人保護や禁止兵器が規定されます。

 国連憲章第2条第4項は、加盟国間における武力行使および威嚇の全面禁止を定めています。この原則により、国家が他国に対して先制的に軍事行動を起こすことは違法とされます。例外は憲章第51条の自衛権行使に限られ、安保理の事後報告が義務付けられています。国家が武力攻撃を受けた場合、以下の条件を満たせば個別的・集団的自衛権の行使が認められます。

 必要性:現に攻撃が進行中、または差し迫った脅威が存在すること
 相当性:自衛行動が受けた被害と均衡を保つこと
 即時性:遅滞なく行使されること
 安保理への報告:措置を講じた後、速やかに国連に通知すること

 歴史的には正式な「宣戦布告」が戦争開始の儀礼でした。現代では書面による宣言は少なく、外交抗議やUltimatum(最後通牒)による事前警告が一般的です。この宣戦布告に関する内容は日本においては真珠湾攻撃が宣戦布告よりも前か後かということで大きな問題になったので、その歴史を知っている人にとってはかなり問題視する人も巣食あくないのではないでしょうか。

 9世紀までは戦争は国家の権利とみなされていましたが、第一次大戦後に不戦条約(1928年)や国連憲章(1945年)が成立し、戦争は原則として違法化されました。しかし「予防的自衛権」や「人道的介入」を名目に武力行使を正当化する事例が相次いでいます。サイバー攻撃や経済封鎖を含むハイブリッド手法も法のグレーゾーンを突く形で用いられ、国際司法の判断を待つ事例が増加しています。戦争開始は国際法上、武力行使禁止の原則と自衛権の例外規定が中核を成し、宣戦布告や事前警告を含む政治的プロセスを経て実行に移されます。歴史的に戦争は制度的に違法化された一方で、現代はハイブリッド戦や情報戦が先行し、法的正当性の境界線が曖昧化しています。では今回のロシアのポーランド侵攻は「故意に行ったのか」または「宣戦布告はどのようになっていたのか」ということなどが重要になってくるのです。(つづく)
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