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2025-07-26 08:40
(連載1)石破首相の‘私とトランプ大統領発言’の問題
倉西 雅子
政治学者
関税率は15%まで引き下げられたものの、日米関税合意については、日本国内では必ずしも歓迎一色ではありません。凡そ80兆円の対米投資に加え、農産物や自動車等の市場開放並びに航空機の大量購入なども約しており、日本国側の大幅な譲歩が、日本経済にダメージを与えかねないからです。
通商政策では、防衛や安全保障政策とは異なり、国内にあって必ずやマイナスとプラスの両面の効果が及びます。アメリカ国内でも、自動車産業を中心に懸念の声が上がっており、日米共にマイナス影響が及ぶ産業分野が、日米関税合意の内容に反対するのは当然の反応です。このことは、関税をはじめ、交易条件について他国の合意するに先だち、国内にあって、複雑に絡む利害調整を済ませなければならないことを示しています。さて、日米関税合意で揺れる中、対米交渉に当たった赤沢経済再生相からの説明を受けた後、石破茂首相は、記者団を前にして「私とトランプ大統領でこの合意を確実に実施していくことが重要だ」と述べたと報じられています。同首相の発言は、今日の通商政策の問題を浮き彫りにしているように思えます。
第一に、上述したように、他国との間に通商協定等を結ぶに際しては、国内の利害関係の調整、即ち、国内的なコンセンサスを形成する必要があります。言い換えますと、対外交渉である以上、交渉の窓口は一つにしなければなりませんので、政府の役割とは、国を代表して外国政府との話し合いの席に臨む交渉役ということになります。あくまでも、交渉役は、国内にあって成立した合意事項に縛られますので、交渉が途中で行き詰まったり、同合意事項を修正する必要が生じた際には、一端交渉を中断し、‘国に持ち帰る’のが筋となります。
ところが、TPPやRCEPをはじめ、近年の事例を見る限り、通商交渉の場では、政府に一任してしまう一種の‘独裁’と秘密主義が蔓延しています。今般の日米関税交渉にあっても、石破首相、あるいは、赤沢経済再生相への全権委任の如くです。秘密主義については、防衛や安全保障の分野では、国家の命運に関わる国家機密もありまので、それなりの理由があるのですが、通商政策とは、生産者であれ、消費者であれ、全ての国民が当事者となるのですから、交渉内容を非公開とする正当な理由がありません。これらの傾向は、日本国のみならず、‘グローバルレベル’で見られる現象であり、グローバリストの独裁志向の方向性とも一致しているのです(国家のトップのみをコントロールすれば目的を容易に達成できる・・・)。(つづく)
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倉西 雅子 2025-07-26 08:40
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