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2025-07-31 10:34

(連載2)タイ・カンボジアで戦争勃発の背景とは

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 このユネスコの世界遺産では、歴史的な遺産であると同時にその内容が政治的に利用される場合があり、日本の通称軍艦島などでも様々な政治的な利用がされてしまっている。このプレアビヒア寺院も同じで、2008年7月、タイ軍兵士が国境を越えてカンボジア領に侵入し集結した。同時に、カンボジア軍もタイとの国境地帯に数百人規模の部隊を配備した。同年10月、両軍間はプレアビヒア寺院から数キロしか離れていない国境地帯で銃撃戦を進め、カンボジア兵2人が死亡、タイ兵7人が負傷する衝突に発展することになる。

 2011年末の衝突後、ICJは2013年に改めてカンボジア側を支持し、プリアヴィヒア寺院周辺の領有権問題を法的に決着させた。2012年7月、両軍は国境の紛争地域から撤兵し、2013年11月、カンボジアの提訴を受けた国際司法裁判所は寺院周辺の土地もカンボジアに帰属すると判断し、懸案の領有権問題は一旦終結した。

 しかし、2023年以降、タイ国内の与野党対立激化や政権交代の混乱を背景に、JBC協議は長期停滞している。そして今回2025年7月24日、両軍は未画定地帯で小火器と迫撃砲による砲撃戦を再開し、タイ軍12人が死亡・負傷、カンボジア軍1人が戦死する衝突に至った。タイ空軍はF-16戦闘機6機を投入し、カンボジア軍拠点を空爆したと報告される一方、カンボジア側は「タイ軍が先制砲撃を行った」と主張している。両国は国境通過制限や電力・物資輸入停止などの経済制裁を相次いで発動し、国際社会(ASEAN、国連)の即時停戦要請が相次いでいるという事態に陥っているのである。

 さて、ここで見てみればわかるように、また両国に中華系民族の流入がありまた、タイの政治的な混乱も中国の経済的な介入なども見られる。また、そこにある観光ブームなどでの経済効果もあるのではないか。ある意味で世界の紛争にすべて「経済的な問題」や「外国からの介入」が見られる。その内容をしっかりと精査しなければ真の平和はあり得ないのではないか。(おわり)
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(連載1)タイ・カンボジアで戦争勃発の背景とは 宇田川 敬介 2025-07-30 10:27
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