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2025-06-28 15:47

(連載1)イスラエルとイランとの間の停戦が一応の合意

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 2025年6月13日に開始された、イスラエルによるイランへの攻撃は一応の停戦が成立した。6月12日の時点で、アメリカとイランとの間での核開発をめぐる交渉は難航し、イランはウラン濃縮施設の新設を発表した。これを受けて、イスラエルは自国の安全保障上の脅威を理由にして、イランの核開発関連施設や軍事施設を攻撃し、イラン革命防衛隊の最高幹部を複数殺害した。イラクは報復として、イスラエルにミサイル攻撃を行った。イスラエルも攻撃対象を拡大して応戦し、中東情勢は一気に不安定化した。双方に多くの死傷者が出ている。
 
6月22日にはドナルド・トランプ大統領がアメリカの戦闘機を派遣して、イラン国内の3カ所の核開発関連施設を攻撃させた。6月24日には、イランが報復として、カタール国内にあるアメリカ軍基地を攻撃した(事前通告あり)。その後、トランプ大統領がイスラエルとイランとの間の停戦合意が成立したと発表した。しかし、イスラエルは、イランに停戦合意違反があったとして、イランに攻撃を行う意思を表明した。トランプ大統領はイスラエルの姿勢に不快感を示している。
 
 今回のイスラエルのイラン攻撃について分析するためには、私は、イスラエルの国内政治状況と中東地域の情勢の2つのステージに分ける必要があると考えている。イスラエルの国内政治状況で言えば、2023年のハマスによる攻撃と人質奪取を受けてのイスラエルによるガザ地区攻撃、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派との戦闘、更にはこれらの勢力を支援するイランとのミサイル攻撃と進んだ事態の連続だと考えている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自身と家族が関わる汚職やスキャンダルのために、訴追され、最悪の場合は有罪判決を受け、収監される可能性があったところに、ハマスの攻撃があった。こうした戦争状態を利用して、首相の座にとどまっている。また、極右派は、戦争を利用してガザ地区やヨルダン川西岸地域を占領することで、パレスティナ問題を「根本的に解決」しようとしている。イスラエルは、アメリカを利用している。
 
 トランプ大統領は事態をエスカレートさせたくない。政権内には核兵器使用まで望む声があるが、そのような強硬なことはできない。そして、イスラエルに対して、一定の統制を行いたいところだ。もちろん、イランの核開発については懸念を持っているが、その懸念を小さくするために、トランプ政権はイランと核開発に関しての交渉を行っていた。第1次トランプ政権時には、バラク・オバマ政権で成立した合意から離脱したが、第2次トランプ政権はその枠組みに復帰しようとしていた。この交渉は頓挫することになる。(つづく)
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