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2025-04-09 02:51

(連載2)「トランプ ショック」の落としどころ

岡本 裕明 海外事業経営者
 北米ではそもそも景況感にやや疲れが出てきた中で今回、トランプショックで一気に背中を押しているというのが私の見立てです。この週末には全米50州で1300近いデモが開催されたと報じられています。ターゲットはトランプ氏とマスク氏。そのトランプ氏は相互関税は予定通り引き上げると述べているため、私は国民の不満は次のレベルである暴動になる可能性すら否定できないとみています。全米が荒れに荒れ、政権トップに危機感が募れば関税のフリーズや撤回というシナリオはあり得ると思いますが、すべてはトランプ氏個人の判断に委ねられます。

 リーマンショックやコロナの際の市場の大暴落と違い、今回はトランプ氏が明白なる犯人であり、人為的であります。トランプ氏の主張する関税の壁を作ることでアメリカ国内に製造業が回帰し、国内生産が潤い、雇用も増えるというシナリオを論じる経済学者の話を私は聞いたことがありません。パウエル議長は4日の段階ではまだ判断できないと述べています。個人的に考えるアプローチとしては物価上昇率から関税による恣意的な物価上昇率を補正し、調整後の数字がFRBが目指す2%に近づいているか計算するしかないと思います。各種関税はこれからようやく施行されるわけで統計値に出てくるには2-3か月先になります。FRBは市場の動向をみて予防的利下げをする可能性はありますが、本格的な判断は6月とか7月にならないとできないとみています。

 今週の株式市場は大荒れになると思われ、特に東京市場は心配性の個人投資家の買い手に支えられてきた中、海外機関投資家が利益が出ている銘柄を見境なく売却することから防御の手段はなく、崩落しやすいとみています。信用売買をしている個人投資家には追証が発生しやすくなるとみています。一部では売られ過ぎ、底打ちという専門家の意見もあるし、実際、大バーゲン価格をつけ始めている銘柄が多数出てきていますが、パニックの時には平常な判断力が無くなり、市場からの撤退が主眼となるため、何らかのきっかけがあるまでは厳しい状態が続くと思います。トランプ関税は経済学の歴史に残る愚策となるはずです。更に想像を膨らませ、悪いシナリオを描くならここから世界不和が始まり、国家間の信用関係にひびが入るような事態が起きればとそこから先は目も当てられないことになります。

 トヨタがアメリカで販売する車の価格を変えないと述べています。これは消費者にはすさまじく勇ましい話ですが、トヨタの利益率が大きく下がるのみならず、自動車市場において歪みを生じさせ、他の自動車メーカーとの共存共栄にヒビが入ることになりかねず、マイナスの影響にも注視しています。関税問題はどこかで収まるかもしれませんが、アメリカ不信というレッテルが貼られたのは大きいでしょう。世界から市場はアメリカだけではない、という動きも出かねず、しばし、その落としどころを探る展開となりそうです。また、中国が笑っているとされますが、それが明白な傾向となった時、トランプ氏はどのような顔をするのでしょうか?(おわり)
 
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(連載1)「トランプ ショック」の落としどころ 岡本 裕明 2025-04-08 02:43
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