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2022-04-16 10:15
(連載2)ウクライナ危機で露呈する日本のエネルギー問題
倉西 雅子
政治学者
風力発電の分野においても、国際市場にあっては凡そ中国系企業並びに欧米系企業によって世界市場のシェアが占められておりますので、同分野にあっても海外依存体質が深まる一方となります。発電地は国内ですのでエネルギー自給率が上がるようにも見えるのですが、その実、海外依存性においては化石燃料による発電と変わりはないのです。
第二に、太陽光発電も風力発電も、輸入依存度が高いという問題点に加えて、天候リスクというもう一つの欠点があります。前者では、曇り空や雨空では発電量が減少しますし、既に問題視されているように、台風の来襲や暴風雨といった状態になりますと、設置パネルが吹き飛んだり、施設そのものが土砂崩れや河川の氾濫などで崩壊するリスクもあります。後者の場合には、風が吹かなければ発電量がゼロとなるのは言うまでもありません。
そして、第三の問題点として挙げられるのは、太陽光発電や風力発電の耐用年数です。火力発電所の場合、老朽化が懸念されているとはいえ、現在、35年を超えて稼働している施設が全体の4割に上る耐久性の高い設備です(東京電力)。また、原子力発電所の場合には、耐久年数は40年とされております。もっとも、アメリカでは、原子力発電所の9割以上が60年運転許可を行使済みとされており(80年運転許可を得た施設も…)、設備としては物理的に長期運転に耐えられるようです。その一方で、太陽光発電も風力発電も、その耐用年数は、凡そ20年とされております。言い換えますと、長期的な視点からしますと、後者の方が建て替えコストがかかる上に、処理費用を要する大量の産業廃棄物が生じるかもしれません(太陽光パネルなどは最終的な処分方法に問題が指摘されています)。
以上の諸点を考慮しますと、太陽光発電も風力発電も、日本国の主力電源には適さないように思えます。原子力については上述したように新型の原子炉やイノベーティブな技術の開発に努めるべきでしょうが、再生エネルギーに関しても、最低限(1)低い輸入依存性(2)低い天候依存性、(3)長い耐用年数、の三つの条件を満たす必要があるように思えます。例えば、日本列島は複数の火山帯を抱えていますので、地熱発電の方が永続的な安定供給源となりましょうし、四方を海に囲まれていますので、潮の満ち引きを利用した潮力発電なども有力候補となりましょう。日本国政府は、自国に適した’持続可能’な電源の開発・実用化にこそ取り組むべきなのではないかと思うのです。同方向性に向けた努力は、技術立国としての日本国の復活への道を開くかもしれません。そして、エネルギー自給率の向上は、延いては日本国の政治的立場をも高めるのではないかと思うのです。(おわり)
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投稿履歴
(連載1)ウクライナ危機で露呈する日本のエネルギー問題
倉西 雅子 2022-04-15 23:00
(連載2)ウクライナ危機で露呈する日本のエネルギー問題
倉西 雅子 2022-04-16 10:15
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