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2025-09-26 18:24

(連載2)岐路に立つ大学経営

岡本 裕明 海外事業経営者
 今夏、私の会社でインターンシップとして受け入れた日本の学生と話をしていたところ、「自分は経済学部なので日本語の授業だが、工学部に行った同期は全部英語の授業なので今や、英語アレルギーがなくてペラペラしゃべっている(ように聞こえる)」といったのが非常に印象的でした。学生の才能をいかに引き出すかが大学経営の要となりそうです。その中でちらちら見えてくるのが大学のM&A。M&Aが起きるのは経営不振になった大学を救済目的で買収することも多いと思います。名前は言えませんが、ある大学が医学部進出を狙い、既存の医大買収を画策しています。また同じM&Aでも大学全部ではなく、一部の学部が欲しいというケースも出てきそうです。

 一方、大学のM&A的価値とは何か、これを数値化するのは案外難しいのかもしれません。あるターゲット大学の買収価値はいくらかを計算するには所属学生数から割り出す方法が一般的かもしれません。ただし、それには今いる教授陣の体制が維持され、学生数に影響がないのか、という点と新経営陣がどれだけ投資余力があるか次第であります。海外の大学の場合、卒業生が多額の寄付行為をします。富裕層ならば卒業大学への億円単位の寄付は驚く話ではありません。我が母校にもある方から10億円規模の寄付が入ったりしています。それは卒業生が社会人として成功し、その恩返し的な意味合いがある訳です。ですが、極端な話、Fランク大学だとそれがほぼ期待できないとも言えるのです。とすれば大学経営側の投資余力には限界があるとも言えそうです。

 女子大賛否論も面白いと思います。経営難の大学の一部では女子大を共学化する動きがあります。「背に腹は代えられない」というわけです。一方、女子大は使命を終えたか、といえば私には女子大ならではの強さがあると思うのです。かつては女子短大が花嫁修業予備校と揶揄され、短大閉鎖が相次ぎ、4大に統合化するなど経営の効率化を図った大学も多くなっています。また4大の新設学部では看護科など女子学生をターゲットにした学部が増えています。一方、女子大の理工新設といったユニークな方針を打ち出すところもあり、二極化しそうな勢いです。

 現在女子大は78ほどあるかと思いますが、最終的には1/3-1/5ぐらいまで絞られ、その時点で質の高い女子大が生き残るのでしょう。驚きは日本最大の女子大である西宮の武庫川女子大が共学化を発表したことでこれは学校関係者に衝撃を与えました。また京都の女子大御三家の一角、京都ノートルダムが募集停止の発表にも関係者からため息が聞かれたようです。企業経営も大変だけど大学経営はもっと試練の戦いになりそうな気配がします。多分ですが、教育理念ばかりではなく、ビジネス経営的にノウハウの導入も必要になりそうです。大学経営陣には銀行出資者が幅を利かせているところもあり、我々の知る大学のイメージは大きく変わりそうな気配があります。(おわり)
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