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2025-09-25 15:05
(連載2)環境問題解決へ一歩ずつ
ドノバン 咲弥
早稲田大学国際教養学部生
2.脱炭素化への障壁
「問題解決をしなければ」と言っても、何から始めるのが良いのだろう。環境問題を解決するにはまず、脱炭素化が必要である。しかし、その取り組みへの障壁があるのが現状だ。今回は2つの問題について考えたい。1)どの程度脱炭素化が進んでいるのかは結果が見えにくく、現状がよく分からないこと。2)本当に日本の行なっている政策に意味があるのか、という疑問について。
(1)まずはどの程度脱炭素化が進んでいるか、という点である。「日本の脱炭素化は世界に遅れている」、という報道がされることがある。しかし、温室効果ガス排出量という観点では必ずしも「遅れている」という言葉では片付けられなさそうだ。
温室効果ガスの排出量とGDPは正の相関となる、と一般的には言われている。しかし、日本は実質GDPを成長させながら温室効果ガスの排出量を減らしており、ディカップリングが実現されている。経産省が2025年4月に発表した情報を見ても2013年度から2022年度までの10年間で実質GDPが+4.5%、「温室効果ガス排出量・吸収量」の項目は−26.6%である。また、実質GDP当たりの温室効果ガス排出量は、2013年度以降11年連続で減少し、2023年度が過去最小であった。EU全体やドイツと比べてみても大幅な遅れは取っていないこともわかる。
(2)次は日本が脱炭素化を行うことの意味についてである。日本の温室効果ガスの排出量は世界的全体の2.9%であり、地球温暖化政策に消極的な中国とアメリカを合わせた44.6%に比べれば僅かである。また、世界の温室効果ガス排出量は未だに増加傾向にある。これらのことを踏まえると「日本が脱炭素化を進めたところで何の意味があるのか」、と疑問に思う人もいるのも理解できる。コストの大きい脱炭素化を進めたところで脱炭素化を無視して成長する他国に遅れをとるだけであるので、世界ではなく日本国の利益を主体で考えるべきであると言う。
しかしそのロジックで考えると、どの国も脱炭素をせず、永遠に温室効果ガスは増え続けることになる。地球温暖化と気候変動のもたらすリスクは計り知れず、多くの命を犠牲にし得る。しかし、気候変動政策のリスクは命を脅かすほどではないだろう。それだけでなく、経済的に良い影響も与え得るのだ。例えば、再生可能エネルギーは以前よりも安くなっており、再生可能エネルギーへの転換でエネルギー産業にかかる費用を抑えることも可能になる。脱炭素への移行は短期的に見ればリスクもあるが、長期的に見れば利益ももたらすのだ。逆に、地球温暖化は短期的に見ればローリスクであっても、長期的にみたらハイリスクであるのが厄介な点だ。我々の社会・経済活動は長期的な利益よりも短期的な利益を求めるものなのだ。
まとめると、日本の脱炭素化は必ずしも遅れているわけではなく、2050年温室効果ガスの排出ネットゼロに向かって取り組みを続けている。また、日本が地球温暖化対策をすることは無意味ではなく、長期的に見れば日本の利益にもなり得るのだ。地球温暖化の解決は何か大きな改革一つで実現するものではなく、今それぞれの国や地域でできる対策をし続けて、試行錯誤しながら解決に持っていくものではないのだろうか。(おわり)
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(連載1)環境問題解決へ一歩ずつ
ドノバン 咲弥 2025-09-24 15:02
(連載2)環境問題解決へ一歩ずつ
ドノバン 咲弥 2025-09-25 15:05
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