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2025-08-04 08:29

米中摩擦について

真田 幸光 大学教員
 カナダで開催された主要7カ国(G7)首脳会議は、不安な中東情勢とウクライナ戦争の終戦問題が大きな焦点でありましたが、中国本土によるダンピング輸出と市場秩序かく乱を巡る問題も大きく取り上げられていました。中国本土が巨額の補助金をバックにダンピング攻勢で世界の市場を乱し、レアアースなどの分野で他国を脅すことへの対応が必要であるとの認識があります。

 議長国カナダのカーニー首相は、「G7首脳は中国本土に市場歪曲と供給過剰の自制を要求した。」と述べていました。また、一時、米国のトランプ大統領の関税政策に対抗して、中国本土と共同戦線を組むことも模索していた欧州連合(EU)も、態度を変え、フォンデアライエン欧州委員長は、「そもそも2001年に中国本土を国際秩序である世界貿易機関(WTO)に加入させたこと自体が問題の根源であった。」とまで述べ、中国本土に対して厳しい姿勢を示すまで態度を変えていました。「ルールに基づく国際秩序を守る意思のない中国本土を国際機関であるWTOに加盟させたことが問題であった。」という指摘をトランプ大統領ではなく、EU首脳が行ったのは意外でもありました。そして、フォンデアライエン欧州委員長はトランプ大統領に対して、「我々は互いで戦うのではなく、中国本土という共通の脅威に対応すべきである。」とまで発言、共同戦線を張ることを求めたのであります。これに対して、中国本土は当然に強く反発しました。即ち、中国本土政府は、「G7首脳会議で示された主張は事実とは異なるものであり、中国本土に対する偏見とダブルスタンダードに反対する。中国本土はWTOのルールを順守しており、補助金ではなく実力で競争力を高めてきている。」と反論しました。
 
 フォンデアライエン欧州委員長は、世界経済を巡る会合でも。中国本土を批判し、「協力相手が互いに争うのではなく、私たちを脅かす実質的な挑戦に対応する方向にエネルギーを集中すべきである。トランプ大統領、あなたは正しかった。本当に問題は深刻である。」と改めて述べています。フォンデアライエン欧州委員長は、「中国本土は知的財産権に対する保護を弱体化させながら、巨額の補助金で全世界の製造業とサプライチェーンに対する支配力を高めてきた。これは市場競争ではなく意図的な市場歪曲である。景気が低迷する中、政府による補助金で価格を下げた製品を過剰生産し、世界市場に送り込み、チャイナショックを起こした。こうした国家主導の成長による影響について、もっと責任感を持つよう中国本土に働きかけるべきである。」と指摘、中国本土が自国の経済危機を世界市場に転嫁しているとの認識を示したとも言えます。

 トランプ・アメリカと欧州の不仲の中、中国本土が漁夫の利を得るとの見方もありましたが、欧州の先進国は方針を変更してきているように見えます。そして、これが中露対欧米の構図を更に顕在化していくかもしれません。但し、ここに来て、ウクライナ、ガザと言う、二つの戦争の終結に漕ぎつけられないことなど、外交政策を思った通りには展開出来ないトランプ大統領が、一旦は中国本土に歩み寄り、ロシア叩きに動いてくるのであるかもしれないと私は見始めています。さて、その場合、日本は中露や欧米の狭間で巧みに泳いで行けましょうか?
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