国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2025-05-30 00:13

(連載2)原油価格の行方

岡本 裕明 海外事業経営者
 実際、アメリカのリグ数を見ると2019年代は1000を超えていたもののコロナで激減し300台にまで落ち込みます。その後、復活するも700台後半を上限に2024年初頭からずっと減少の一途を辿り、5月23日のリグカウントはついに600ちょうどまで下げてしまったのです。トランプ氏が掘れ、掘れというのと真逆の状態にあるのが見て取れます。実際、アメリカの投資会社のGoehring &Rosencwajg のレポートはシェールオイル枯渇説を主張しています。ただし、アメリカのシェールオイルが不調でもシェールガスは当面安定的に増えるとみられています。
 
 トランプ氏がカナダいじめをしている中でカナダの原油にも関税を課しているのですが、これはトランプ氏はカナダオイルの特性を十分理解していないかもしれません。アメリカンシェールは軽質油、カナダのオイルサンドは重質油なのです。この違いは大きいのです。軽質油は揮発性が高いわけでLPガスやガソリン向きである一方、重質油は価格が安い一方、用途が機械、発電所とか船舶向けになります。つまり使う目的が違うわけでアメリカは原油がとれるからカナダの原油はいらないという話は短絡的すぎるのです。事実、私は1-2か月前、カナダの原油会社の株式に結構な金額で投資しました。理由は需要は必然だからです。
 
 アメリカンシェールは投資家が継続的にお金を投資し続けることで機能しますが、統計を見てもそのピークははるか前に終わっており、世界に影響力を与え続けることはないとみています。とすればサウジが再び価格統制力を持つ可能性はあるのでしょう。もちろん、世界が脱原油となれば別ですが、世界の全ての内燃機関のエンジン、自動車から航空機、産業機械、発電所、タンカー/船舶さらには道路のアスファルトなど全て脱原油になることはないでしょう。また原油精製の過程では好む好まざるにかかわらず5種類の精製品ができてしまうのです。(ガス、ガソリン、灯油、軽油、残油⦅重油⦆ また、原油の質、つまり重質、軽質によりその比率が変わりWTIとブレンドは軽質油が多いため価格が高いとされます。)
 
 よって原油の世界需要は景気に左右されますが、一定の下支えはあります。コロナの時のような相場は現実の需要と乖離したものであり、冷静に考えれば無意味な相場だったとも言えます。その中心値は概ね70㌦程度というのが今の世界経済を考えた心地よい水準というのが私の解釈であり、それを下回る今は値ごろ感があるという見方もできるわけです。(おわり)
  • <
  • 1
  • 2
  • >
>>>この投稿にコメントする
  • 修正する
  • 投稿履歴
(連載1)原油価格の行方 岡本 裕明 2025-05-29 00:09
(連載2)原油価格の行方 岡本 裕明 2025-05-30 00:13
一覧へ戻る
総論稿数:4721本
東アジア共同体評議会