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2025-03-19 17:26

(連載2)備蓄米入札は最低価格で落札すべき

倉西 雅子 政治学者
 因みに、備蓄米の放出方法については、無償で全国民に配布すべきとする意見もあります。確かに、無償配布であれば全ての世帯にお米が届きますので、国民生活は助かります。政府は、全くこの手段には関心がないようなのですが、それでは、有事に際してどのようにして国民に備蓄米を配ろうとしているのでしょうか。この点は、疑問となります。

 いささか脱線しましたが、政府、あるいは、農林水産省も口達者で、最高値落札に対する批判を予測してか、予め予防線を張っています。今般の備蓄米の放出の目的は、「流通の目詰まりの解消」にあると説明しているからです。お米の価格は需給のバランスで決まるので、高値であれ安値であれ、流通量さえ増やせば自然に米価が下がるという理屈です。つまり、備蓄米放出によって即時的に米価を下げる効果はなくとも、長期的には米価を下げる効果があるのであるのだから構わない、という言い訳を、最初から準備しているのです。

 しかしながら、この説明では、合目的性に照らして最適の方法を、意図的に避けたことを認めたことにもなります。A案が最適でB案がこれに劣る場合、B案の効果を説明はできても、何故、より効果的なA案よりB案が優先されたのか、その説明にはなっていないのです。つまり、政府は、国民には正直には言えない何らかの別の目的があり、敢てA案を選択せずにB案にもっともらしい理由を付けて採用したと考えざるを得ないのです。

 お米の供給不足につきましては、先ずもって(あ)減反等による失政説と(い)利益目的の人為説に分かれます。さらに(い)の人為的不足説については、(A)巨額損失を抱えた農協犯人説、(B)先物市場での投機に関連した価格操作、(C)相対取引に介在する転売ヤーの介在、(D)官民一体の輸出優先策、(E)将来的な高値売却を目的とした農家の売り渋り・・・など、様々な説が飛び交っています(そもそもお米が不足しているのかどうかさえも判然としない・・・)。何れにしましても、落札価格を見る限り、備蓄米放出効果は限定的かつ遅効的になりそうですので、政府が本気で米価を下げるつもりはないことだけは確かなようなのです。全ての落札事業者も公表しないのですから、秘密主義的な態度は、どこかにやましいところがあるからなのでしょう。そして、この態度は、政府の本心が、自らを含めて上記の供給不足の犯人と疑われている人々、あるいは、特定の勢力を護ることにあることを強く示唆しているとも言えるのではないかと思うのです。(おわり)
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(連載1)備蓄米入札は最低価格で落札すべき 倉西 雅子 2025-03-18 17:13
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