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2021-09-30 20:21
(連載1)中国が体現しつつある’少数者による資本の私的独占’
倉西 雅子
政治学者
昨今、中国では、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」なる思想が、新たなる指導思想として確立しつつあります。同思想は、2018年には憲法にも明記され、今般の教育省の発表によると小学校からの教育課程にあっても必修化されるそうです。また一歩、中国は、習主席による個人独裁に近づいたと言えましょう。
それでは、習近平思想とはどのようなものかと申しますと、マルクスのような著作があるわけでも、『毛沢東語録』のような小さな語録さえなく、発展、多様化、高度化など、社会・共産主義特有のペダンチックな言葉で飾られた漠然とした思想の集合体です。このため、解釈こそが重要であり、例えば、三位一体ならぬ「五位一体」や「四つの全面」といった難解な言葉で説明されています。
前者は、’経済建設‘、’政治建設‘、’文化建設‘、’社会建設‘、’生態文明建設‘の5つの‘建設’を一体的推進することであり、後者は、’小康社会の全面的実現‘、’改革の全面的深化‘、’法に基づく国家統治の全面的推進‘、’全面的な厳しい党内統治‘から成る4つの‘全面’を全面的に実現することのようですが、これらの言葉の羅列を聞かされても、具体的な国家像は浮かんではきません。用語や表現の難解さを以って‘高級感’を醸し出し、人々を惑わす典型的な悪文のようにも思えるのですが、鬱蒼と繁った枝葉を切り落としてしまいますと、結局は‘経済政策に対する党中央の集中的・統一的な指導を強化する’、すなわち、共産党をも指導する習主席の独裁体制を強化する、ということなのでしょう。
そして、個人独裁体制の盤石化を目指すに際して、習主席がモデルとしているのは、毛沢東時代であるように見受けられます。全人民から超越した立場にある独裁者が、唯一、権力を独占し、他の人民は全て等しく貧しいという体制です。同体制を再構築するためか、習主席は、「共同富裕」をスローガンに掲げるようになりました。平等という価値を絶対視してきた共産主義国家にあって、初めて貧富の格差を是認したと解される鄧小平氏の「先富論」からしますと、180度の転換のようにも見えます。しかしながら、同氏が始めた改革開放路線というものが、中国の統制経済のシステムを根底から改変してしまった点を考慮しますと、中国の脱資本主義は、極めて困難となるのではないかと思うのです。(つづく)
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(連載1)中国が体現しつつある’少数者による資本の私的独占’
倉西 雅子 2021-09-30 20:21
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倉西 雅子 2021-10-01 08:05
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