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2020-10-26 01:11
(連載2)米大統領選を巡るメディアの情報統制と統計操作
斎藤 直樹
山梨県立大学名誉教授
この背景には複雑な事由があるように思える。世論調査機関から質問を受けた有権者である回答者はその機関の政治姿勢を予め理解していて、あたかも機関に忖度するかのような回答を行っている事例もあるであろう。また調査機関が調査対象者の政治志向を予め掴んでおり、その上で調査対象者を抽出して調査を行っているのでなかろうか疑いたくなる。現在の情報社会では有権者の政治志向などが調査機関に把握されていると考えた方が正しいかもしれない。しかも調査機関が巨大IT企業から有権者の個人情報の提供を受けている可能性も考えられないわけでない。さらに調査機関が作為的に統計に操作を加えている可能性がないわけでないであろう。もしもそうしたことが起きているとすれば、問題外である。とは言え、調査機関の中には一貫してトランプに甘い機関がある一方、決まってトランプに辛い傾向がある機関があるのも現実のようである。「リアル・クリア・ポリティクス社」は複数の機関による調査の平均値を掲載していることから、トランプに辛い調査機関の予想を多く掲載すればするほど、結果的に平均値はバイデンよりになる。比較的信憑性がある同社でもこうした状況の下で、他の世論調査会社の予想は最初から信憑性に欠けることになろう。こうしたからくりがあることを斟酌して、世論調査を読み解く必要がある。そうでなければ、読み手が数字にいいように操られることになりかねない。大手メディアだけでなく世論調査会社さらには調査機関までが多かれ少なかれ反トランプであるとすれば、現実と全く相反する予想が氾濫しているのではないかと疑問になってくる。
この結果として、統計上の誤差が大きく出るだけなく、誤差で済まされない問題を引き起こしかねない。このことは世論調査では判明しない「隠れトランプ」票となって投票日に表れるのでなかろうか。「隠れトランプ」支持者とは4年前の大統領選において反トランプの空気の中でトランプ支持を明言できなかった支持者層を指す言葉であるが、「隠れトランプ」は反トランプ傾向の強い調査機関による誤った予想によって引き起こされたのではないかと疑われる。確かに「隠れトランプ」支持者が相当数いたことは確かであったにせよ、上述のとおり調査機関が恣意的な予想を行ったため、実際のトランプ支持票が少なく見積もられていたのではなかろうか。言葉を変えると、「隠れトランプ」票を多数作り出したのは他でもない調査機関による誤った予想であったのではなかろうか。これが4年前に「ラスト・ベルト」と称されるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコシンで起きた現実である。これらの州の世論調査では投票日直前までヒラリー・クリントンの圧倒的優勢を伝えていたが、選挙結果は予想と似ても似つかぬものとなった。これらの州でトランプはいずれも平均値で1%以下の僅差ながら、各州に割り当てられた選挙人を総どりしてしまったからである。この結果、トランプが獲得した選挙人総数が過半数の270人に達したわけであるが、その立役者は「隠れトランプ」支持者の存在ということで当時、済まされた。しかし、それだけではなく事前に行われた調査機関の予想にも問題があったのであろうと思われる。あれから4年、残念ながら改善されたとは程遠い。もし11月3日の投票日にまたしても予想と逆の結果が出ることがあれば、どういう言い訳をするつもりなのか聞きたくなる。
上述の大手メディアが反トランプ感情むき出しの記事を報道し、その大手メディアと委託契約を結ぶ世論調査機関がメディアの意向を忖度して選挙予想を行うようでは予想自体が信頼も信用もできない。しかし残念ながらこれが今、起きている現実でなかろうか。そうした中で、「オクトーバー・サプライズ」がもう一つ炸裂した。今度はバイデン親子のウクライナ関連の汚職疑惑である。10月14日に「ニューヨーク・ポスト紙」が報じたものであるが、これを受け、保守系の「フォックス・ニュース」が報道しているが、反トランプの大手メディアは何故か沈黙を保ったままである。「フェース・ブック社」や「ツイッター社」などIT企業も箝口令を敷いているようである。そうした中で、トランプが自身のツイッターで連日、バイデンの汚職疑惑を追及することにより、多くの米国民の知るところとなっている。何ということであろうか。醜聞と言えば、決まってトランプ関連で、その度支持率をトランプは落としてきたが、この度のバイデン親子の醜聞は驚くべき内容である。トランプ曰く、バイデンはアメリカ合衆国の歴史上、二番目に汚職まみれの政治家ということになる。ここぞとばかりにバイデン親子の醜聞をトランプが追及しようとしている感があるが、それにしても投票日の11月3日に迫ったこの時期に何故、この醜聞が出てきたのか、あまりのタイミングの良さに驚かざるをえない。10月23日に行われたテレビ討論会でトランプがバイデン親子の疑惑を厳しく追及しようとしたが、バイデンにのらりくらりと逃げられてしまった感がある。
「私はバイデンと闘っているだけでなく腐敗したメディア、巨大IT企業、ワシントンの沼と闘っている。11月3日にジョー・バイデンに驚異的な敗北を浴びせ、これらの裕福なリベラル偽善者達にメッセージを送る時が来た!」と、10月22日にトランプはツイッターに書き込んだ。この書込みにはトランプが支持者に届けたい真意が凝縮している。今相手にしているのはバイデンだけではなく、バイデン支持を公言する大手メディアや上記の巨大IT企業、はたまた米民主党議員達であるとトランプは言わんとしたのであろう。トランプとすれば、信じられるのは支持者だけということになろう。そうした劣勢の中でトランプは活路を見出させるであろうか。11月3日の投票日はいよいよ迫ってきた。(おわり)
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(連載1)米大統領選を巡るメディアの情報統制と統計操作
斎藤 直樹 2020-10-25 23:24
(連載2)米大統領選を巡るメディアの情報統制と統計操作
斎藤 直樹 2020-10-26 01:11
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