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2019-10-09 11:37
(連載2)米中「オピオイド」問題の行方
倉西 雅子
政治学者
アメリカによる国を挙げての「オピオイド」に対する取り締まり強化を中国が台無しにしており、トランプ大統領が怒り心頭に発するのも理解されます。そして、ここで気が付くのは、中国という国の歴史観です。中国人の中には、今日にあっても、19世紀のアヘン戦争を自国の屈辱的な歴史として恨みを抱き続けている層が一定数います。香港は1842年に締結された同戦争の講和条約である南京条約によってイギリスに割譲されました。この事件は、西欧列強による中国の‘植民地化’の始まりとして、歴史教育の中で強調されており、人民の心に深く刻まれています。
ここで、かつての英清アヘン戦争と今般の米中アヘン戦争を比較してみますと、奇妙な類似点が見られます。現在の中国のこの問題における立ち位置は、当時のイギリスに相当するという点です。貿易上、自らに対して不利な政策を採る国に対して、倫理や道徳を無視して相手国の国民を腐敗・堕落させる商品を輸出する手法は、当時のイギリス、あるいは、東インド会社を想起させます。
また、禁輸品ほど莫大な利益を生みますので米中貿易戦争で減少する貿易黒字を中国は簿外で補っている形です。中国が本気になれば、密造者や密輸業者の摘発は容易なはずにも拘らず、対米密輸が減少していないとすれば、それは中国政府が黙認しているとみなされてもしかたがありません。トランプ大統領はさながら、当時の清朝の道光帝に配役されているかのようです。
香港民主化運動が起きる中、中国は、西側諸国にアヘン戦争を思い起こさせるかのようなふるまいを続けています。たとえ過去に許されていたとしても、現代の価値観からすれば今日では許されない行為は多々あります。時間経過による倫理・道徳の発展を自覚して高潔に振る舞うことこそが中国のセルフイメージとしての大国の姿でしょう。決して意趣返しに快感を覚えるようなものではないはずです。(おわり)
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(連載1)米中「オピオイド」問題の行方
倉西 雅子 2019-10-08 18:44
(連載2)米中「オピオイド」問題の行方
倉西 雅子 2019-10-09 11:37
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