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2019-02-13 09:24

(連載2)中国の苦境

岡本 裕明 海外事業経営者
 例えばアリババの創業者、ジャック マー氏が実は共産党員だったということが12月頃に驚きをもって報じられていましたが、国家の成り立ちと同社の成長ぶりからすれば当然であったと言えます。これがもたらす弊害とは自由競争が阻害され、14億の人口に基づく潜在能力を実質1億足らずの公平感を欠いた経済に頼ることに他なりません。つまり、残り13億人を格差し、その持てる能力は埋もれ、将来も確約されたものではない、ともいえるのです。

 これは、習近平国家主席が主導する権力型国家運営が機能しないことがいよいよ表面化してきたことを物語っているかもしれません。2007年頃までは北京五輪、上海万博で中国が絶頂期にあり、都市部で人が不足し、地方労働者が出稼ぎに来るスタイルはごく当たり前でした。私も当時それを実際に目にしました。

 今は作りすぎた製品や住宅にもかかわらず、沿岸部では欧米の価格を凌駕するような物価水準をつけるのはどう考えてもつじつまが合わないものでした。その上、見せかけの雇用確保を通じて安定政権運営をするため、従業員の首は切れない(正確には切りにくい)制度を強化し、否が応でも製造を進め、在庫の山を築くのです。その在庫に日本電産のモーターも採用されていた、ということであります。その在庫の山をトランプ大統領が揺すり、崩れたことが永守会長の「尋常ではない変化」という発言につながるのでしょう。

 中国が陥っている罠とはかつてソ連が破たんした原因の一つである計画経済において世の需要と供給を無視した政府主導のコントロールと同様としても過言ではありません。ここでは説明は省きますが、計画経済は経済がインキュベーション(孵化)状態のときには機能します。また極度な不況の時にも機能します。(それ故、ソ連は1930年代の大不況を計画経済で上手く乗り切った唯一の主要国です。)勿論、ソ連の計画経済と今の中国経済とは根本が違いますが、結果として同様の道のりを歩んでいるように見えます。その共通点とは経済を国家運営の手段としていることであり、市場の需給を放置している点でしょう。中国の苦境はそう簡単に脱せないように見えます。(おわり)
 
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(連載1)中国の苦境 岡本 裕明 2019-02-12 11:05
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