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2013-09-23 13:30
東アジアの現情勢は重要な「調整期」と評価すべき
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
東アジア地域情勢の現状については、悲観的見方が多い。これを深刻に突き詰めて考え、尖閣や南シナ海における領域紛争をめぐり、軍事衝突へ一触即発の前夜の事態ととらえる論者も少なくない。筆者も最悪の危機的事態の可能性を念頭に置かないわけではないが、少なくとも現状を客観的に総合的に把握した場合、次の諸点からより積極的見方が可能ではないかと考える。
第一に、東アジア諸国間の関係は、現在、日中間、日韓間をはじめ、ASEANの一部諸国と中国などの2国間関係のように、とくに政治指導者間の直接対話の機会を欠いたり、不十分であるなど決して円滑とは言いがたい面もあるが、ASEAN+3諸国間の2国間関係は、日中韓をはじめとして実務的関係は、正常に機能し、かつASEAN+3の地域協力の多数国間枠組みは、健在であり、定期的首脳レベル会合も円滑に開催されてきている。第二に、もっともギクシャクした関係にあると見られがちな日中韓間についても、その3国間の協力の効率的促進のため2011年9月から日中韓三国間の協力案件を促進・運営するために活動を開始した日中韓協力機構のソウルに置かれた常設事務局も健在であり、初代事務局長の韓国の申鳳吉(シン・ボンギル)事務局長の後をついで、我が国の岩谷滋雄元大使が本年9月1日から第2代目事務局長として2年の任期をもって就任したばかりである。同事務局は、今後とも日中韓外相、首脳会議の開催の任に当たる。第三に、南シナ海の領域紛争をめぐる中国とフィリピン、ベトナム、マレーシア等ASEAN関係国間の緊張関係打開のための「行動規範」取り決めを話し合う、中国とASEAN間の交渉も9月中国で開催され、話合いが進行中である。また。日中韓FTA、ASEAN+6のアジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉も並行的に進行している。さらにセカンドトラックの東アジアシンクタンク・ネットワーク(NEAT)、1.5トラックの東アジアフォーラム(EAF)の本年会合もそれぞれマレーシアおよび本邦で開催された。
上記の通り、東アジア地域における地域協力の枠組み・インフラは、しっかりと根を下ろし、健在であり、重要な経済交渉や政府間、セカンドトラック間の通常の対話も、business as usualとして格別の遅滞なく行われていることは、改めて認識する必要があろう。もとより、日中韓においては、我が国特定水域沿いには、相変わらず中国公船が頻繁な巡航を続けているが、大規模な反日デモは当局によって抑えられているようであり、靖国参拝もその後大きな問題化していない。
しかも、このような情勢下で、我が国及び関係国においては、政府のみならず、民間経済界において、これまでの中国への依存、偏重傾向の見直しの見直し、投資先のASEANへの転換等ASEAN市場の再認識が行われ、また人的交流面でもASEAN諸国から我が国への観光客の大きな流入現象などの注目すべき変化が観取される。これらは、ASEAN+3の総体的パワーバランスにおいて、中国のウエイトの過大な点を他の関係各国が是正する方向への静かながら重要な「調整」効果をもたらす好ましい動きと考えるべきであろう。
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