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2012-01-29 08:58
(連載)死角を見過ごしたユーロ・エリア(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
筆者は、かなり早い時期から、ユーロ・エリア参加国には、EMS参加国とは異なり、国際収支節度がかからなくなるという問題を提起していた。2003年、しばらくの間、客員としてハンブルク大学に滞在したが、その折、機会をとらえては、ドイツを中心とする欧州のエコノミストたちにこの問題を提起したが、当時の彼らは、そうした問題をほとんど全く認識していなかった。筆者は、当時から、経常収支赤字の対GDP比を3%以内に抑えるように義務付ける規定(「経常収支の赤字キャッピング」)を安定成長協定に加えるべきであると主張してきた。
今の欧州危機の大きな背景は、別の表現で言えば、ユーロ・エリア参加国は、もはや、経済的には「歴とした国」でなくなったということを意味する。すなわち、一国としてとらえれば、無責任な経済政策をとる存在になってしまったということである。したがって、ユーロ・エリア全体として「単一経済政府」(“one economic government”)を持つ以外に究極的な解決はあり得ないであろう。また、個別の参加国に対しては、経常収支赤字の縛りを入れる枠組みも是非とも必要とされる。各国の国際収支節度が極めて重要だという認識は、欧州においては今日でさえなお、十分であるとは言い難い状況にある。
他方、いまの欧州連続複合危機への対応を通じて、将来の世界経済・金融システムの在り方が示唆されるであろうということもあるであろう。なぜならば、現行の国際経済・金融システムの大きな欠陥が、いまヨーロッパに顕著に現われているという面も多分にあるからである。今回の危機に対して出てくるかもしれない対応としては、例えば、トービン税の導入であり、あるいは格付けシステム改革にも一石が投じられることになるかもしれない。
すなわち、それは、基本的には市場原理主義的なアングロ・サクソン・モデルからの修正であり、日本を含む国際社会は、むしろそうした欧州から出てくるであろう新しい方向性を支持し、さらにともに推進していくという姿勢が肝要である。すべての深刻な危機がそうであるように、今回の欧州連続複合危機もまた、その対応から将来に向けた新たな展開が出てくることになろう。そうした明るい面にもフォーカスしておく必要がある。(おわり)
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(連載)死角を見過ごしたユーロ・エリア(1)
山下 英次 2012-01-28 11:09
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山下 英次 2012-01-29 08:58
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