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2009-08-19 10:14

(連載)英語一本の国際化は大丈夫か?(2)

松本 和朗  大阪学院大学外国語学部教授、元ハンガリー大使
 勿論、こうした改革を進める上で克服すべき課題は少なくない。対象とする第二外国語をどう選択するか、その教材をどう用意するか、また第二語学の教師をどう養成するか、等々の体制や運用に関わるさまざまな問題を詰めていかなければならない。しかし、英語の圧倒的覇権のもとで日本の第二外国語学習がここまで追い込まれている現在、どこかで大胆なイニシャテイブをとらなければならないであろう。まず第一歩を踏み出すということであれば、高校カリュキュラムで第二外国語学習を大幅に強化することを提案したい。

 冒頭、ドイツ語を学ぶ学生が減少していると述べたが、第二外国語の選択は大きな問題である。現在、ヨーロッパ系第二外国語以上に、中国語、韓国語の人気が高まっているといわれている。大きな流れとしては、大学の外国語学科でも近隣のアジア系語学への需要がさらに増えていくものとみられる。とくに、日本社会の高齢化に伴い近隣諸国からの労働力の流入が見込まれることや、中国、韓国からの日本への観光ブームなどを考えると、今までと違った外国語需要が出てくるのは当然のことであろう。

 そうした流れに対応する複数言語の要請は、日本が当然進めていかなければならない国際化の一つであろう。また、複数言語主義の立場から、できるだけ異なる多様な言語選択を可能とする仕組みも考えていかなければならないであろう。ヨーロッパの複数言語学習では、言語体系の異なる複数言語を奨励する考え方も強いとわれているが、このような視点も十分取り込んでいく必要があろう。

 いずれにしても、日本で進展している英語一本での国際化は、危険な方向であり、少なくとも第二外国語学習についての活発な議論が深まることを期待したい。(おわり)
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