国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-02-17 20:06

“一つの中国”は両刃の剣ー台湾主導もあり得る

倉西 雅子  政治学者
 アメリカのトランプ大統領が中国の習近平主席との電話会談において“一つの中国”の原則を尊重すると述べたことから、中国は、「褒めたたえたい」としてもろ手上げてこの発言を歓迎しております。トランプ政権発足に際して中国の最大の懸案事項は台湾問題であっため、中国としては安堵の気持ちを表現したのでしょうが、中国は、“一つの中国”の原則に喜んでいられるのでしょうか。

 中国側の発想では、“一つの中国”とは、中華人民共和国による台湾の併合を意味しています。国共内戦の勝利者としては、台湾は、いわば、敗者である国民党が逃げ込んだ最後の砦であり、この地を陥落させれば、共産党による“全土支配”が完成すると考えているのでしょう。しかしながら、“一つの中国”とは、必ずしも中華人民共和国による台湾の併合のパターンに限定されるわけではありません。

 当初、中華民国の国名を名乗ったものの、国民党による一党独裁から多党制に移行した今日の民主国家台湾と中華民国との関係は曖昧です。中華民国よりも、現在の台湾人は、独立国家としてのアイデンティティーを強く意識できる台湾という国名を好む傾向にあるようです。とはいうものの、中華人民共和国が“一つの中国”を主張する以上、台湾にも、“一つの中国”を主張する権利が生じます。即ち、台湾による中華人民共和国の併合も、論理的にはあり得ないわけではないのです。

 中国大陸では、共産党一党独裁に対する不満が燻っており、それ故に、中国は、民主化を求める活動や体制批判的言論を弾圧し、各地で頻発している政府に対するデモなども治安部隊で押さえつけています。強権によって一先ず政権が維持されていますが、仮に、中国が台湾に対して武力併合を試みるといった有事が発生した場合には、中国国民の中には、台湾に与して共産党支配の打倒に立ち上がる人々も出現するかもしれません。加えて、台湾とアメリカとの準同盟関係は、このシナリオの実現性を高めています。中国の歴史では、民衆の反乱が王朝崩壊の引き金を引く事例が多々ありますが、“一つの中国”の原則は、中国にとりまして両刃の剣であると思うのです。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会