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2026-01-25 16:46

第3期習近平体制の人事的特徴⑥

松本 修 軍事アナリスト(元防衛省情報本部分析官)
 2026年1月24日、中国国防部は、中国共産党中央軍事委員会の張又侠副主席(政治局委員)と劉振立委員(聯合参謀部参謀長)の2名を重大な紀律違反と法律違反の疑いで調査することを決定したと発表した。これは、昨年10月の第20期中央委員会第4回総会(4中総会)で、腐敗汚職問題を理由に党籍剥奪処分を受けた何衛東の副主席更迭、後任の副主席として張昇民委員(軍紀律検査委員会書記)の「増補」内部昇格を決定した人事に続く重大な処置となった。今後、調査の結果、腐敗汚職問題の事実が確認されれば、張又侠、劉振立の2名の更迭は決定的であり、中国の最高軍事指導機関である中央軍事委員会は、2022年の第20回党大会において「チャイナセブン」7名体制(習主席以外軍人6名)で発足した当初から、昨年10月時点での「四人組」4名体制(同軍人3名)を経て、軍の「総指揮」最高司令官である習近平主席(党総書記)と思想政治工作・紀律検査担当の張昇民副主席の2人体制(同軍人1人)へと激減するという異常事態となってしまう。その実態は一体何なのか、以下みていこう。

 先ずは、巷間噂される現行の軍指導体制下で、「台湾有事」台湾統一のための準備や、実戦的な訓練演習は可能なのか、あるいは来年2027年8月の人民解放軍創設100周年という重大な節目となる記念式典や軍事活動を行えるのかという内外の懸念に対しては、2016年以降10年間をかけて断行された「習近平の軍事改革」の成果を指摘したい(2025年10月24日付拙稿参照)。かつて軍務全般に関する執務機構であった「四総部」(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を解体し、それぞれ保持していた職能を15部門(弁公庁、聯合参謀部ほか6部、紀律検査委員会ほか3委員会、国際軍事協力弁公室ほか5室・局等)に再編成して軍事委員会内部に全て「ビルトイン」したことから、たとえ聯合参謀部参謀長や政治工作部主任といった要職が不在、あるいは「無力」・「無能」でも人民解放軍は「機能不全」とはならず、副職や下位の実務者によって円滑に遂行される軍指導体制が一応確立されているのだ。まして「総指揮」習近平主席が健在であれば、昨年末の対台湾大規模軍事演習「正義使命ー2025」も順当に実施されたと言えよう。

 問題は今後の後継人事であろう。本年中に開催が予定されている中国共産党の第5回中央委員会総会(5中総会)等で中央軍事委員会等の補充人事がなされれば、それが50~60歳代の若手になると「ポスト習近平体制」をも見据えた人事となる。この点、昨年末に行われた上将昇任人事で楊志斌・東部戦区司令員と韓勝延・中部戦区司令員が中将から上将へ昇任した。いずれも空軍出身で、一連の不祥事の中で問題にならなかった軍種にあたり、楊司令員は12月の「正義使命ー2025」演習を準備・指揮し、韓司令員は9月の「軍事パレード」大閲兵を指揮したことから、論功行賞を兼ねた「シロ」認定の昇格人事であったことが考えられ、両者を含め今後の人事動向が注目される。しかしながら、中国にとって本当の正月に当たる2月の「春節」旧正月を前に、習近平体制下の中国共産党、中国人民解放軍には激震が走ったと言え、2026年の中国も相変わらず「内憂外患」に苛まれるのであろうか。
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