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2025-09-24 18:35

対中政策の凄まじいダブル・スタンダード

倉西 雅子 政治学者
 日本国政府は、近年、中国の軍事的脅威を根拠として、防衛費の増額に乗り出しています。かねてより習近平国家主席は台湾の武力併合を公言して憚らず、同首席の決断次第では、明日にでも台湾有事が起きても不思議はないような雰囲気を醸し出しています。NATOとの協力強化も対ロシアよりも対中対策の一環としての意味合いが濃く、日本国政府の方針は対中脅威論を基本としています。日本国内には在日米軍基地が設けられていることもあり、台湾侵攻を前にして中国が、日本国に対しても工作活動を仕掛けてくることは疑いようもありません。アメリカの台湾防衛戦略にも、前線であれ、後方であれ、既に自衛隊の軍事支援が組み込まれていますので、中国にとりましては米軍のみならず自衛隊も敵軍であり、日本国も‘敵国’となるのでしょう。日本国は、中国から直接的な攻撃を受けるリスクに晒されていると言えましょう。

 中国の軍事戦略からしますと、米軍基地や自衛隊基地周辺の土地の取得は、同盟軍側の軍事活動の妨害や傍聴等を目的としているのでしょうし、昨今、問題視されている中国人による水源や農地取得面積の増加も、あるいは有事に際しての日本国民に対する‘兵糧攻め’の準備であるのかも知れません。もちろん、一般の中国人移住者や事業者を装った、所謂‘スパイ’や‘工作員’というものも、密かに多数送り込まれていることでしょう。有事にあって相手国の戦闘能力を低下させる、あるいは、敗北に導く方法は、内部崩壊を仕掛けるのは常套手段です。第一次世界大戦にあって、キール港の水兵の反乱を機にドイツ帝国が瓦解し、戦局にあっては有利に情勢にありながら敗戦国となったように(同世界大戦での主たる戦場はフランスであった・・・)。

 中国脅威論が事実であれば、日本国政府は、中国人に対しては、それが観光目的であれ、日本国内での居住であれ、入国制限を設けるはずです。ところが、外国人問題への対応を見る限り、日本国政府の対中脅威論は、途端にトーンダウンしていまいます。今般、ようやく見直すこととなった在留資格の緩和も、中国人を呼び込むための政策としか見えませんし、中国人による農地を含む土地や不動産の取得等も放置状態でした。自民党総裁選挙に立候補している茂木敏充前幹事長が外国人問題への対応のために視察した先も、クルド人問題が深刻化している埼玉県の川口市です。クルド人が日本国の安全保障上の脅威となる可能性は殆どありませんが、中国人の場合には、全国レベルの問題ですし、桁違いの人口パワーとマネー・パワーがありますので、有事平時共にそのリスクは計り知れません。しかも、中国人問題については、マスメディアやSNS等でも規制がかかっている節もあるのです。

 日本国政府の態度は、右手で拳を振り上げながら、左手では手招きをしているようなものです。真逆の政策が同時に遂行されているのですから、国民の政府に対する不信感は募るばかりです。この凄まじいダブル・スタンダードぶりは、同盟国であるアメリカの要請に応える一方で、中国、並びに、グローバリストのマネー・パワーにも屈している、日和見主義とも言うべき、今日の日本国政府の姿でもあります。否、実のところは、両者は裏では結託しており、米中対立の演出によって、自らの利益となるように日本国を上手に利用しているのかも知れません。日本国政府の中国に対する‘ちぐはぐさ’は、日本国の主権喪失の危機の現れでもあります。日本国は国民主権の国ですので、主権喪失とは、民主主義の形骸化をも意味することになりましょう。二枚舌に騙されたり、自滅に誘導されることなく、日本国の独立性を保つためには、先ずは日本国民の多くが知性と洞察力を磨き、政界の現実を見据えることこそ肝要なのではないかと思うのです。
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