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2020-04-11 20:03
「拉致問題」足踏み望む日本と北朝鮮の実利の一致
岡本 裕明
海外事業経営者
北朝鮮の動きがさっぱり読めません。3月に突如、短距離ミサイルを4回発射すると同時に朝鮮人民軍が通常の活動を再開したという報道もあります。世界が新型肺炎問題で自国の対策で精いっぱいである今、戦略的意味が不明瞭な短距離ミサイルの4回の発射は何だったのか、であります。私が考えるメッセージは4つです。1)北朝鮮は新型肺炎に毒されておらず、通常の状態に戻っているというアピール。2)韓国の4月15日の選挙への揺さぶり。3)経済的危機感が高まる韓国に対する心理的打撃を狙った威嚇。4)在韓米軍のソウル地区からの後退を受けた北朝鮮の攻めの姿勢の現れ。金正恩氏はトランプ氏と11月の大統領選までに再度会談する可能性があるか、といえば私はないとみています。金氏は米国との協議を何らかの形で望んでいると思いますが、アメリカにとって今は北朝鮮よりも優先すべき課題が山積みになっています。そうだとすれば5)アメリカの気を引く、ということもあるのかもしれません。韓国との関係においては、北朝鮮とすれば文政権の方が苛めるには与しやすいと思います。その点からすれば4月15日の選挙結果は、現与党の「共に民主党」の安定多数が望ましいのでしょう。ただし、金正恩氏は文大統領の能力を見限っており、どのように役立てるかは不明瞭です。
ところで日本も北朝鮮問題に対して積極的だとは言えません。理由は「拉致問題」という明白な線が一つあるからです。ですが、私にはこれは高等な言い訳のように見えるのです。金正恩氏は拉致問題を解決できるとは思えないし、そもそも詳細すら知らないかもしれません。いわゆる「拉致問題」は、金日成が日本を含む世界から多様な人々を拉致しスパイを養成するという政策によって発生しました。仮に金正恩氏がそれを知っていたとしても、拉致被害者がスパイやその養成に携わっていた人なら秘匿すべき内容を知っているでしょうから、拉致問題を解決するのはデメリットが大きすぎます。だいたい、拉致被害者が北朝鮮にいるかどうかすらわかりません。日本に潜伏している可能性だってないとは言えません。
それでも日本は拉致問題を盾のように前面に置く理由は何でしょうか?私は対北朝鮮の第二次世界大戦の清算が終わっていないことへのリスクヘッジなのだろうと考えています。日本が韓国に1965年に行った総額5億ドルの経済支援パッケージの規模を考えてみたらわかるでしょう。これは当時の韓国の2.5年分の国家予算で、1965年の日本の大蔵省の予算は3兆6500億円です。その比率を当てはめる意味はないとご批判を受けるかもしれませんが、今ならどれぐらいの規模になるのか、誰も計算したくないでしょう。そんなものは到底日本国民に賛同されるわけがありません。だから、そもそも近寄らない理由を解決困難な拉致問題にしているというふうに見えます。
ちなみに北朝鮮は世界160カ国以上と国交があります。国交がない主要国は日米韓などに限られます。ただし、大使館を置く国は24カ国のみです。日本政府は、本質的に北朝鮮に近づきたくないはずで、今後、どんな総理大臣が現れたとしても北朝鮮とまともなディールは困難でしょう。それなら今の状態が続いてくれた方がよい、と考えているのかもしれません。しかし、その間隙をついて北朝鮮が日本に何か仕掛けてきたとき、日本は無防御な状態になる点は考えておく必要があるかもしれません。今回の一連のミサイル発射が日本へのメッセージだとは思いませんが、いつ何が起きるかわからないというのが世の中であります。
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