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2006-12-20 18:10
「不可逆的な東アジア地域統合の流れ」への反論への質問
上辻 宏
大学院生
7月21日付けの私の投稿「不可逆的な東アジア地域統合の流れ」に対し、四条秀雄氏から「戦前グローバリズムの失敗に学べ」(7月23日付け投稿)および「グローバリズムには『小さな政府』で対応できる」(10月17日付け投稿)の2つの反論をいただきました。2度の投稿に答えるべく何度も投稿を読ませていただきましたが、四条氏の意見が明確ではなく、理解できない点が多々あり、今回は反論ではなく、質問という形で投稿させていただきました。このことにより論点がさらに明確になることを期待しております。
第一に、四条氏は7月23日付け投稿において、現在の財・サービス・資本、そして労働力までを含んだ市場統合が第2次世界大戦前にもあったとした上で、今後「物も金も人も移動を終えます」と主張されています。ゆえに各国が変動に対応できる時間が必要であり、そのようなことができるのはアメリカしかないと主張は続くのですが、なぜ「物も金も人も移動を終えます」と結論されるのでしょうか?市場の統合が進めば国と国の間の壁が低くなり、財・サービス・資本・労働力は国内同様自由に移動できるようになるのではないでしょうか。
次に、日本が目指すものについて、四条氏は「東アジア共同体構想」ではなく「日米同盟や日米EPAというような保守的思考」が未来を開くと主張していますが、その根拠として変化の時代には「不動点や原点やゼロ点に出発点を与えること」が必要であるからと述べられています。この原点もしくは現状を土台として思考を開始するという考え方については、異論はありませんが、そこからなぜ「日米EPA」支持や「東アジア共同体」反対などの結論が出てくるのでしょうか。その理由の説明がまったくありません。
第三に、四条氏は10月17日付投稿において、「戦後のアジア危機」(おそらく1997年のアジア通貨危機を指していると思われますが)の際対GDP比10%相当の資金が流出したことを根拠にして、「日本の危機への対応は、資本に関しては25兆円超の資本移動が起こる」可能性があると推測しておられます。四条氏の挙げられておられる数値については検証しませんが、そもそも市場統合の高まりとともに日本に発生するリスクを検討するのに、なぜホットマネーの急激な流出で引き起こされたアジア通貨危機を、しかもそれのみを、根拠にして議論されるのでしょうか?
最後に、四条氏は、日本とその周辺で地域統合ができない理由として「台湾以外にパートナーがいない」ためと主張されています。「まずEU型共同体のパートナーになる可能性があるのは、韓国と台湾のみ」と述べたあと、韓国もまたハングル化による文化的孤立と共産主義の伸張がおこる可能性があるため、統合のパートナーとしては不適格であるとしていますが、この点についてなぜASEAN諸国や中国は統合のパートナーとして不適格なのかを明らかにしていただきたいです。日本企業はこれら地域に進出し、製造業における国際分業ネットワークがすでに構築されています。ASEAN諸国や中国にとって日本が必要であるのと同様、日本にとっても彼らが必要です。このネットワークをスムーズに稼動させるために、この地域をすっぽり覆う「東アジア共同体」が構想されているのではないでしょうか。四条氏のASEAN諸国や中国・韓国についての主張は偏見と独善に満ちていると判断せざるを得ません。客観的な根拠を示さずに一方的な結論のみを宣言するのでは、他者を納得させることはできません。
以上、四条氏の展開する議論(とくに、私の投稿への反論)の4点について、質問させていただきました。四条氏から、だれでもが理解できる客観性のあるご説明をいただければ幸甚です。
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