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2014-08-08 17:59

スパイ問題でますますドイツの不信感を買うアメリカ

川上 高司  拓殖大学教授
 スノーデンの盗聴問題からおよそ1年が経ち、ドイツメルケル首相のアメリカへの不信感はいまだに消えていない。そこへドイツの連邦政府機関の職員2名がCIAに情報を流していたという事実が発覚し、再びドイツではアメリカへの不信感が募っている。ドイツ政府はCIAに対して即刻国外退去を求めるという厳しい対応を取り、事態の深刻さをあらわしている。メルケル首相はアメリカに対して同盟国でのスパイ活動を止めるように求めている。

 イギリスでは、各国の情報活動を監視する「Five Eyes」というグループの会合が定期的に開かれている。イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国の議員の代表が集まっているのだが、そこへドイツも参加してもらおうと7月7日、会合前のレセプションパーティにドイツの議員を招待した。だが、手違いからドイツの代表団は会場ではなくまったく別の場所へ連れて行かれ、代表団はそのままパーティを欠席してしまった。

 一方アメリカをはじめとするメンバー国は、招待客が一向に到着しないのでドイツ団はボイコットしたと捉え、ドイツの怒りの深さに不安に陥ってしまった。そこへちょうどCIAスパイ問題が発覚し、アメリカは対応に追われている。ウィーンでは折しもイラン核問題を巡る6カ国協議が開かれていた。ケリー国務長官はドイツのステインマイヤー外相と仲の良さをアピールし、「ドイツとアメリカは良き友人で、政治的な協力関係は不動」と強調した。またステインマイヤー外相も「両国の信頼関係は盤石」と述べ、スパイ問題の影響を否定している。

 だがドイツ国民の感情は異なる。ドイツ・スピーゲル誌の世論調査によれば、アメリカと距離を置くべきと答えたのは57%に上る。ロシアと距離を置くべきと答えたのが50%であることから見れば、ドイツ国民の「アメリカ不信」が生まれつつあるのかもしれない。ブラジルでは、ワールドカップ決勝戦の観戦に訪れたメルケル首相と、やはり観戦に訪れたロシアのプーチン大統領が会談を持ちウクライナ問題を話し合った。東ドイツ出身のメルケル首相と、ソ連時代に東ドイツに駐在していたプーチン大統領の間に、なにか通じるものがあっても不思議ではない。ドイツでは、オバマ大統領への人気が世界各国の中でも抜きんでて高かった。そのため裏切られたという思いがひときわ強い。アメリカはドイツに対して言葉を尽くして、盗聴、スパイ活動について説明すべきであろう。
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