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2014-04-28 12:50

ウクライナ情勢に慎重なオバマ政権とロシア

川上 高司  拓殖大学教授
 ウクライナ東部では親ロシア系住民の中にはロシアへの編入を希望する声が高まりつつあり、ウクライナは分裂の危機を迎えている。東部の都市ドネツクでは独立か、ウクライナに留まるか、ロシアへ編入かを決める住民投票を行おうという機運が高まっている。ドネツクの近くのクラマドルクスには、ウクライナ暫定政権の軍が投入され親ロシア側への鎮圧に乗り出したとの情報も流れている。

 もっとも東部の大半の住民は、平穏に生活しており一部が親ロシア自警団を結成して対抗しているにすぎないようである。鎮圧に来たウクライナ軍の中にも自警団側に立場を変える者が出たりと現地はかなり混沌としているようである。ウクライナ軍の出動によって内戦へ突入する危機とロシア軍の介入が取り沙汰されているが、ロシアは介入には慎重な姿勢を見せている。

 一方アメリカのオバマ政権も、ウクライナ情勢には距離を置いている。マケイン上院議員やウイズリー・クラーク元NATO司令官は、アメリカがウクライナ暫定政権へ軍事支援をするように強く求めている。暫定政権の軍は装備も貧弱であり、防弾ベストや通信機器など基本的な装備の支援を必要としている。アメリカはそれらの装備を支援するのはもちろん、より積極的な支援に乗り出しロシアの脅威に備えるべきだというのが彼らの主張だ。だが、オバマ政権はそれらの軍事支援はロシアを刺激しかねないと慎重な姿勢を守っている。そもそもウクライナへの軍事支援がアメリカの国益なのかどうかという議論もまだない。また現在のNATO自体も暫定政権ではなく、5月25日の選挙を経て正当な政権が確立するまでは支援を控えるという慎重な対応をしており、それがウクライナ暫定政権の不満を高める要因となっている。

 シリアの内戦においても反政府側を支援する国、政権を支援する国が関与してきたため戦闘は長引き政治的解決が困難になっている。ウクライナでも双方を外国諸国が支援すればシリアと同じ道をとりかねない。最初の一歩は小さく気軽に踏み出すがやがて泥沼と化す。ディンプシー統合参謀本部議長がシリア軍事攻撃の際にいみじくも語った「軍事介入をする時は出口戦略を立ててから」という言葉をかみしべるべきである。
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