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2014-03-11 10:37

イギリスにみる軍事介入後の復興の難しさ

川上 高司  拓殖大学教授
 アメリカは2014年後もアフガニスタンに駐留するかもしれないが、粛々と撤退を進めている国もある。アメリカの同盟国として派兵してアフガニスタンの復興に尽力してきたイギリスは、「立派な国を作る」という夢破れて失意とともにアフガニスタンを後にしつつある。

 アフガニスタンではタリバン政権崩壊後、地域復興チーム(Provincial Reconstruction Team:PRT)を立ち上げて地域の再建に取り組んできた。道路の建設や学校、病院の建設などを実施し、アフガニスタン人の生活向上を目指した。イギリスが担当したのは南部ヘルマンドである。ここはタリバンを構成するパシュトゥ人が多く住んでいてケシ栽培が盛んな地域である。外国軍への反発は強くそのため治安も悪くイギリス軍は治安維持とケシの撲滅に取り組んできた。彼らは本気でこのヘルマンドを「美しい大地」にしようと理想に燃えていた。

 今ヘルマンドは以前に増してタリバン勢力が強くなって治安は悪化、ケシ栽培は増加の一歩を辿っている。電力は不足し人々は栄養失調に陥っている。10年近く経ってもなにも変わっていない。それでもイギリスはヘルマンドでのPRTを「アフガニスタン復興の理想的モデルとなった」と強弁する。確かに病院や学校、空港は建設された。ヘルマンドの州知事は、その功績を認めつつも「PRTがいれば建設など雇用がある。去ってしまえば失業者が増えるだけだ」と心配する。イギリス軍はアフガニスタンを去ってしまえばそれで終わる。だが地元の市民はそれでも生きていかねばならない。残された者にとっては重すぎる「理想」である。

 2014年後のアフガニスタンはどうなっているだろうか。イギリス政府は今後もヘルマンドには支援を続けると表明しているがいつまで支援を続ける覚悟があるのだろうか。他国への介入は何世代にもわたって責任を引き受ける覚悟を自覚しなくてはならない、ということを我々は忘れてはならない。
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