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2011-11-18 09:50

印越枢軸は中国の穏健化に役立つか

岡崎研究所  シンクタンク
 ウォールストリート・ジャーナル9月22日付で、英King’s College LondonのHarsh V. Pant教授が、南シナ海に印越枢軸が出現しつつある、中国は勿論それに反対であるが、印越がしっかりしていれば、これは中国の穏健化に役立つかもしれない、と論じています。

 すなわち、インドの国営石油ガス会社の南シナ海進出に対して、中国は、これは中国の許可を要することだ、との警告を発したが、そうした中国に対し、今度はベトナムが、1982年の海洋法を盾にベトナムの権利を主張した、インドは、そうしたベトナムに対し、中国に対する抑えとなる安全保障上の役割を期待している。それに、インドもベトナムもソ連技術の武器を使っているので、インドにとってベトナムは比較的援助し易い。また、両国とも米国と協力出来る可能性を秘めている、と述べ、中国は印越接近を妨げようとしているが、印越が確固たる態度を示せば、これは中国の穏健化に役立つかもしれない、と言っています。

 ベトナムは強悍なる独立国家です。モンゴルの征服を許さず、自力でフランス占領軍を駆逐し、米国に勝ち、中国軍の侵入も退けてきました。その一方、独力でも戦う用意はありますが、同盟国が必要な場合は、例えば独立戦争の時は中国、ベトナム戦争の時は中ソなどからの援助も利用してきています。今回のインドとの接近も、対中国という観点からは、ベトナムとして厭うところではないでしょう。

 こうしたベトナムは、中国の興隆に対抗する東アジア戦略を考える時に、最も頼りとなる独立国家の一つです。米国にとっては、ベトナムが今でも共産党一党独裁国家であることや、ベトナム戦以来のしこりがあるために、協力関係に入りにくい面がありますが、昨年ヒラリー・クリントンは敢えて訪越し、南シナ海問題を取り上げています。今後の見通しとしては、インドが中国の脅しに屈する、あるいは、中国との間で何らかの政治的妥協に達して南シナ海から引き揚げない限り、印越協力は、南シナ海の国際バランスの一要素となると思われます。
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