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2011-07-31 09:31

菅首相の「脱原発」とオバマ大統領の「核廃絶」の共通性

若林 洋介  学習塾経営
 菅首相の「脱原発」声明は、オバマ大統領の「核廃絶」プラハ演説によく似ている。菅声明を批判する論調では「工程表の裏づけも無しに唐突に声明するのはおかしい」ということが指摘されている。しかし、菅首相としては、フクシマ原発事故を体験した日本の総理として、理念あるいは努力目標としての「脱原発」を公言しておきたかったのではないか。                 
 一方、オバマの「核廃絶」プラハ演説も、その後の経過を見る限り、臨界核実験などはしっかり実施されており、「核廃絶」の方向への具体的進展がどこまでなされたかは、きわめて疑わしい。またプラハ演説も、国際的評価は非常に高かったが、米国内では「実現可能性の根拠無き夢物語」との批判も大きかった。オバマの意図は、反テロ対策の意味も込めて、とにかく「核拡散」の流れを阻止したいということであったのだろう。   

 よくよく考えてみると、菅の「脱原発」声明も、オバマの「核廃絶」プラハ演説も、個人的見解・個人的信念の吐露というべき内容でありながら、それぞれに歴史的必然性を背景としているということは言える。菅首相の「脱原発」声明も、再生エネルギー法案の審議を翌日に控えたタイミングでなされたことを考えるならば、何としても再生エネルギー法案を成立させたい、そのために国民的気運を醸成しておきたい、という政治家としての強い信念の表れであったと考えられる。

 現時点では、ポスト菅体制が再生エネルギー法案の成立を最優先課題とするかどうかは不透明であり、来年の通常国会では後回しにされる可能性もある。菅首相としては、それを憂慮しての発言であった可能性もありうるからだ。
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