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2011-07-22 10:04
米下院外交委員会で台湾問題公聴会が開かれたことの意味
岡崎研究所
シンクタンク
6月16日、米下院外交委員会で久々に台湾問題に関する公聴会が開かれ、冒頭で、共和党のIleana Ros-Lehtinen 委員長および民主党のHoward L. Berman 前委員長が、揃って自由・民主主義の台湾支持を表明し、F-16 戦闘機の売却を支持しました。すなわち、レイティネン委員長は「今回の公聴会は『興隆する中国の現実は認めなければならない』という対中宥和の雰囲気が最近生まれているだけに、特に必要だ」と述べて、F-16 の売却を支持し、さらに「台湾の安全への議会のコミットメントが誤って解釈されないよう、台湾関係法を強化する法案を提出するつもりだ」と言っています。
ついで、バーマン前委員長が「米台関係は、冷戦時代はアジアにおける共産主義の拡大防止が目的だったが、冷戦が終わり、台湾が民主化したことで、共通の価値観を有する国家同士の関係に変わった。その台湾の戦闘機が老朽化しているので、台湾関係法に基づいてF-16 を売却すべきだ」と述べ、「中台間の経済、文化関係の進展は歓迎するが、台湾側の緊張緩和の努力にも関わらず、中国が軍事的脅威を縮小しなければ、中国の武力放棄は期待出来ない。台湾の過去60年間の変化は、一党独裁体制の他のアジア諸国に対する模範となるものだ。来年の台湾の選挙は台湾の政治的成長の証しであり、中国本土が中台関係の将来を強制的に決めることはできない、というメッセージを中国本土に送ることになるだろう」と言っています。
レイティネンが「宥和」と言っているように、昨今、米国の政府、有識者の間では、中台経済交流の進展に期待し、中台は自ずから統一に向かうという希望的観測に基づく政策論が強くなってきた感がありますが、これは、それに対して「自由・民主の台湾を守るべきであり、そのためにはF-16 を提供しなければならない」と、はっきりクギを刺している証言です。台湾の民進党政権時代、米国では、台湾が独立の方向に走り、米国が中台間の紛争に捲きこまれるのを怖れる気分が強く、そのため中台の経済関係の緊密化によって事態が自ずから解決されるのを期待する雰囲気がありました。しかし、これは、所詮希望的観測に基づく政策論であり、台湾海峡の危機は、元来、想定の範囲から外せない問題でした。2010年以降、クリントン国務長官らが中国に対して強硬な姿勢を示していたことから、いずれ、それは米国の対台湾政策にも及ぶと予想していましたが、果たして今回議会でレイティネンのような声が出て来ました。
もともと、米政府、有識者がいかに中台経済関係強化による自然統合論に期待しようが、中国が台湾に対して武力の行使もしくは脅迫を行い、台湾が抵抗の意思を示した場合は、自由を守る米国の伝統から言っても、議会は圧倒的に米国の軍事的介入支持に傾くだろうと思われます。つまり、今回は、たまたま、外交委員会委員長が共和党の親台湾派だったことからこうした公聴会が実現しましたが、潜在的には、米国の世論、すなわち米議会の絶対的多数は、台湾人が反対する限り、いかなる形であっても民主台湾が一党独裁の中国に吸収されることには、反対するだろうと考えて良いように思われます。
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