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2011-04-13 22:10
大震災の機に見えてきた東アジア諸国の We-feeling
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
今般のわが国の希にみる大自然災害と原発事故から完全に立ち上がるには、かなりの長期にわたるオール・ジャパンの復興・再建への取り組みとともに、國際的支援を必要とすることはいうまでもない。すでに日米同盟を基盤とする米国からは、眼に見える力強い支援が寄せられているが、ASEAN+3および東アジア・サミットのほとんどすべての構成国からも、迅速にそれぞれの国力に応じた暖かい救援の手が差しのべられたことは銘記すべきであろう。
自然災害時の支援は、東アジア共同体構築に向けての重要協力分野である所謂「非伝統的安全保障」協力の柱の一つである。日本と東アジア諸国との間には、2国間では、領土問題をはじめとする難問も存在するが、韓国と中国は、今次災害発生後間髪をいれず、救助チームを派遣し、それぞれ宮城および岩手において救援活動を行った。他の構成国についても、インドネシア、シンガポール、インド、豪州、ニュージーランドが救助チームを派遣し、その他の国も、救援物資・資金の供与ないし申し出を行った。共同体のメンバーは、他の構成員の大災害の際は、日頃係争問題を抱えていても、すばやく救援に駆けつけたり、救援の手を差しのべることが求められる。それは、地域の連帯意識ないし We-feeling に基づくとされるが、今回のわが国大災害に際する東アジア地域諸国の救援・支援活動は、はからずも、あたかも地域共同体の一員に対する自然発生的な真摯な救援活動の様相を見せたといって良いであろう。
一方、上記2国間救援・支援活動とともに、マルチ・レベルでも、重要な動きがみられた。その1つは、災害の最中でも日中韓3国の協議メカニズムが機能していることが確認されたことである。地震発生後、諸外交行事が取り止め、延期される中、3月19日、京都で日中韓外相会議が予定通り開催された。松本外相は,中韓両国からの緊急援助隊派遣及び支援物資提供に深い感謝の意を表明し、3外相は防災及び原子力安全の分野における協力を強化していくと共に、幅広い分野における3国間協力を継続することおよび日中韓協力のための常設事務局を韓国に本年早期に設立されるよう期待し、本年日本で開催される第4回日中韓サミットの成功に向けて準備を加速していくことで一致した。
他の1つは、日ASEAN間の対話の枠組みが、行動志向の枠組みに次第に発展しつつあることである。すなわち、4月9日ジャカルタで開催された日ASEAN緊急外相会議では、議長声明に東日本大震災へのASEANとしての今後の支援の方針が示され、これまで加盟各国が個別に行っていた支援活動を、ASEAN事務局が取りまとめ役となって調整を図り、より日本のニーズに合った効果的な支援を行っていくこととなり、松本外相もASEANの支援に謝し、ASEAN事務局との連携を強化する姿勢を示したという。
しかし、他方において、福島原発事故にかかる放射能関連情報については、韓国、中国等より迅速な提供を強く求められており、また、災害直後にロシアの戦闘機がわが国防空識別圏に侵入したり、中国の航空機がわが国護衛艦に異常接近する動きを示すなど、「伝統的安全保障」面では、関係諸国の従来からの厳しい対日姿勢にはいささかも変更もなさそうだ。
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