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2010-02-11 10:32

国際社会をどう「世渡り」するか

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 自分のすることに自信が持てなくて、絶えず人の顔を見ているというタイプは、何も個人に限ったことではない。早い話が、わが日本国などというのはその筆頭で、自ら意味があると思う途上国援助を黙々とやっていれば良いのに、「顔の見える援助でなくてはならぬ」と人の目の映りを気にする。「テロとの戦いは日本の国是だ」といえばよいのを、「インド洋給油中止は国際世論がどう見るだろうか」とくる。「移民労働力の確保は、少子高齢化時代に向けて必須であるのみならず、東南アジアの高学歴失業者救済に役立つ」として政策化すれば良いのを、「世界先進諸国に較べて移民(あるいは難民でも良い)の受け入れ実績が余りに低すぎることもあって」と言い添えないと、安心できない。

 もっとも、わが途をゆくのが唯一無二の正義で、恬として恥ないのみならず、ただひたすらにその路線を邁進する、というのに較べれば、どちらがどうとも言えないのかもしれない。そんな路線を採用する国の筆頭は中国とアメリカだろう。「食品に対する違法添加物などわが国にはない」といったら、「ない」のだし、「人権抑圧などとんでもない。国法に背いた輩にしかるべく対処しているだけの話に過ぎない。温室ガスなどというのは、先進工業国が途上国発展を疎外しようとしている悪だくみに過ぎないから、そんなものは気にしないし、資源確保の要請の前には、人道問題や政治腐敗など問題とするに足りない。加えて、お膝元の腐敗などというものは、人様にとやかく言われる筋のものではない」と言って、経済成長路線を突っ走るのが中国ならば、「アメリカン・ウェイの民主主義こそが唯一至上である」として、風土・経済力なんぞは無視して、その押し付けに狂奔し、識字率が一割そこそこの国に「普通選挙制さえ導入すれば、世の中が良くなる」と迫り、「正義と人道のため」と警察官さながらに送り込んだ軍隊が、地元民衆の信を完全に喪って、本来の目的が達成できなくなっても、なお信念に忠実であり続けるのが、米国であろう。

 例えば、アフガニスタンだが、イラクの泥沼から早く抜け出して、憎さも憎いアルカイダを掃蕩すべくNATOと語らって攻め込んだところまでは良かったが、地上戦での志願兵の消耗を最小限にしたいこともあって、空爆が多用され、年間1万2千回に及ぶ空爆をして、そのうち約三分の一が誤爆になるという。要するに、武装勢力でもなんでもない一般市民を巻き添えにしている。だから、パキスタンのアフガニスタン国境地域の住民は、これは「米国の戦争だ」と思っているという(数字・コメント共に2月4日の日本紛争予防センター第21回講演会におけるオクラザイ退役陸軍中将の講話から)。

 わが途をゆくのも困ったものだし、人の顔ばかり見ているのもいささか。となると、世を渡るのもなかなかだということになろうか。
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