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2009-10-20 10:21
台湾は入っているか―東アジア共同体の陰で―
舛島 貞
大学准教授
10月16日の台湾の『中国時報』に、国立台湾大学の石之瑜教授の論説が掲載されていた。強引にまとめれば、論旨は、日本の民主党政権の東アジア重視政策と日中韓首脳会談での論調、そして日米中枠組みという場(これが実際に実現するかは別にして)を形成しようとする動きがある中で、台湾が忘却されていることを指摘し、そうした「大国」に掬いあげられない「地域」がいかに発言権を維持するかといった問題提起をおこない、さらに台湾はすでに中国、日本、アメリカという三者に囲まれ、また歴史的にそうした国際政治そのものを内在化させているのだから、事実上、国内状況として東アジア共同体を実現させているようなものだ、というシニカルな内容であったという印象だ。
民主党政権にとっても、あるいは中国にとっても、政治的な「東アジア共同体」というスローガンは、ある意味でアメリカをけん制する外交用語として機能する面がある。実質的に、アイデンティティや組織、機能を兼ね備えた共同体が、それも通貨統合などの相互に主権に踏み込まねばできないことまで到達するのは、遥か先のことということは、誰もが承知している。だからこそ、金融危機への対処や、環境問題を中軸とした持続可能な発展、さらには食品問題など国民感情を悪化させるものをコントロールする枠組みなど、喫緊の、そして実質的な課題を積み上げることが、共同体に向かう第一歩だということになっている。つまり、理想として、あるいは政治用語としての東アジア共同体と、その実質的な中身の間には依然としてかい離があり、どちらかといえばアイデンティティや組織化よりも、地域ガバナンスの形成に力点が置かれているのが現状である。
地域協力の枠組みを形成する上で、金融にせよ、環境にせよ、衛生にせよ、台湾という存在をブラインドにして放置することは全く得策とは考えられない。SARSの感染ルートなどを見れば明明白白である。もちろん、台湾問題は中国の国内問題、あるいは当事者同士の問題であるし、内政不干渉を旨とするASEAN WAYを重視する路線では、台湾問題に踏み込むことは難しい。だが、民主党政権が、日中韓を重視したかたちでの共同体形成を目指すならば、台湾問題をいかに扱うのか、について定見がないというのも、いかがなものか。WHOをめぐる問題の時のように、日本が一定程度のサポートをするのか、それとも中国と台湾の間の諸「協定」の締結を待って動くのか、一定程度の決断が必要だろう。
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