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2009-10-09 10:14
第二ラウンドに入る東アジア共同体論争
舛島 貞
大学准教授
日本の民主党政権が東アジア共同体の形成を政策目標に掲げ、東アジア共同体をめぐる議論が再び活発になっている。東アジア共同体をめぐる第二ラウンドの幕開けといったところだろう。だが、数年前の議論とは条件が異なってきている。金融危機などに直面し、地域協力の必要性は増しているものの、中米関係が比較的緊密になり、また民主党政権下の日本は対米関係の梃子として、つまり牽制要因として東アジア共同体を求めている面があるのである。これは中国が対米関係への梃子として東アジアを用いていた第一ラウンドとは状況が異なる。
日本側の提案に、中国側は当初歓迎の意向を示していた。民主党政権成立直後、中国外交部スポークスマンは日本の提案を歓迎し、日中協力さえも示唆していた。しかし、ニューヨークでの首脳会談では、特に言及がなかった。まして、9月28日に上海でおこなわれた日中韓外相会議では「東アジア共同体構想は元来中国側が主導していた」との対日牽制もあったとの話もある。中国では、胡錦濤がAPECやG20 などのG××を担当する。ASEAN+3は、これまで温家宝がハンドルしてきた。そうした意味では、次の鳩山総理の訪中が試金石になるのかもしれない。
最大の問題は、日本側の提案する東アジア共同体の中身だ。具体的に何をやるのか。アメリカへの牽制要因としてのスローガンだけでは限界があろう。もし、鳩山総理が「友愛」を、「さまざまな対立や矛盾を乗り越えて相互に対話し、和解していくこと」という博愛の意味で用いるのなら、その友愛外交のシンボルとなるような提案ができれば、中国をはじめ各国からもサウンドが生じるかもしれない。一般論としては、民主党の(比較的)長期政権となる可能性のある中、日本として長期的な視点に立って将来の外交や豊かな生活を阻害するような要因に対する予防措置を採ることが望ましい。そうすると、東シナ海問題+歴史認識問題+金融協力+食品衛生協力…といったことのパッケージになろうか。
中国側の反応では、NHKの「クローズアップ現代」における王逸舟教授の発言が注目される。日中協力を強く謳ったように聞こえたからだ。実際、知識人の中には対日協力の強化を述べる人も少なくない。いずれにしても第二ラウンドの第一セッションが、次の鳩山総理の訪中ということになりそうである。それに対する具体的な提案が関係者に求められていよう。
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