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2009-04-01 07:53

攻守ところを変えた麻生と小沢

杉浦正章  政治評論家
 首相と民主党代表の3月30日の記者会見は、はっきりと明暗を分けた。麻生太郎が「解散も辞さぬ」構えを見せたのに対して、小沢一郎は「衆院選挙に影響するなら、進退も再考する」と述べた。攻撃と防御が逆転した。政局はこの構造変化を基礎に分析する必要があるが、いよいよ解散含みで推移し始めたと見るべきだろう。発言から見て、麻生のポジションははっきりしている。2009年度補正予算・関連法案の成立に野党が抵抗すれば、解散の判断をするということだ。「補正に反対するかどうか、60日間要してもやるか、打ち切って選挙をするか、その時の状況で判断する」とは、そういう意味だ。通常国会中の解散については、公明党代表・太田昭宏も3月28日のCSテレビで「いつ何時あっても、ということで準備する」と述べており、麻生と完全に一致している。

 小沢に「解散に追い込む」というかっての勢いが消え、麻生が解散の主導権を握ったことになる。自民党内の「麻生降ろし」も元幹事長・中川秀直と武部勤が事実上撃ち方止めを宣言して、急速にしぼんだ。
誰も言わないが、その背景には“小沢続投”による与党支持率回復基調が消えないうちがチャンス、という党利党略があることは言うまでもない。そこで今後の日程を見てみよう。補正予算案の審議入りは5月の連休明けとなる。衆院通過は5月中旬となるだろうが、問題は野党が実権を握る参院の審議。麻生が指摘するように、こじれて関連法案の成立が遅れ、60日条項での成立となれば、6月3日までの会期延長が必要となる。これでは景気回復の至上命題に逆行する。麻生の言うように「審議を打ち切って」解散で国民の信を問う、という流れが台頭するだろう。

 しかし“小沢ショック”で牙を抜かれた民主党が、強硬姿勢を貫けるかというと疑問だ。現に幹事長・鳩山由紀夫は3月30日「こういう経済状況だから、その意味での協力はしたい」と述べ、審議を引き延ばす考えはないことを強調している。逆に野党が補正の早期成立に協力すれば、事実上の“話し合い解散”的な状況も成り立つ。つまり、補正も、関連法案も、会期中の成立を野党が保証し、与党がこれに応じて、解散に踏み切るわけだ。これは会期末解散となる。民主党は小沢が踏ん切りをつけて早期に辞任し、清新な代表に変われば、まだ“勝負になる”選挙戦を展開することができるだろう。

 問題は、選挙分析で自民党が大敗するという空気が依然残っているときだろう。麻生としては7月8日のサミットを越えて、任期満了選挙を選択せざるを得ない状況もないとは言えない。しかし解散は「天の時、地の利、人の和」を活かして断行する最高の政治決断。小沢の秘書逮捕という政治状況を図りにはかって作り出したかどうかは別として、衆院議員の任期が切れる9月10日までに、この千載一遇のチャンスがまた到来すると見ては、間違うだろう。ここは麻生も勝負どころだ。
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