国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-02-04 19:18

北朝鮮に対しては、無視が最善の策

李相哲  大学教授
「寝耳に水」ということばがある。韓国では「就寝中の殴り棒」という。突然、想像したこともないことで問い詰められたり、突然、とんでもないことを言われて驚く場合に、口にすることばである。北朝鮮の脅しがエスカレートしている。1月17日、朝鮮人民軍総参謀部スポークスマンを名乗る軍人が、軍服の姿でカメラの前に立ち、北朝鮮語特有のアクセントも気にせず、これから南朝鮮傀儡徒党(韓国)と「全面対決体制に入る」、「強力な軍事的な対応をする」と一方的に宣言した。いつもの狼少年だから、韓国の李政権も、オバマ政権も、日本も驚かないばかりか、それらしき反応すら見せなかった。それに腹を立てたのか、今度は祖国平和統一委員会の名の下、声明を出した。「1991年南北基本合意書および付属合意のなかのNLL条項(軍事関連合意)を廃棄する」と宣言したのである。

 祖国平和統一委員会とは、朝鮮労働党の一部署である。軍も、何とか委員会も、金総書記の指図を受けているのは間違いないが、今回はみえみえである。脳出血で脳のどこかが損傷をこうむったのか、今回の挑発はタイミングも、方法もよくないし、意味すらない。まず、軍や一委員会が一方的に2国間合意を無効にすることはできない。声明文を逆によめば、彼等はいままで認めていなかったこれらの合意やNLL境界線(西の海にある北と南の境界線)を認めたことにもなる。それは、彼等の一貫した主張とは相反する主張である。今回の発表で意味があったとすれば、偉大なる将軍さまはともかく、軍や労働党は怒っているぞ、と言うことを知らせることができたことくらいだろう。この脅しが本当であるならば、北朝鮮が半島の西海で何らかの挑発をするかもしれない。

 南でまともに反応したのは、暇な専門家連中のみであった。韓国政府は逆に、「親切な対応」に一貫している。すると、北は今度は鉄砲を持ち出してきた。2月3日、全長30メートルもあるデポドンを持ち出して、嚇そうとしている。「今度こそ本気だぞ」と謂わんばかりに、それを発射基地に運び込んでいる。デポドンは撃つのかもしれないが、どうせ海に向かってしか撃てないだろう。どこかに一発ぶち込みたい気持ちは分かるけれど、いくら悪い子供でも、その後どうなるかを知っているから、怖いのである。「そこで、遊びはおわりになる」という恐怖心がいつも付きまとっているだろう。事実、偉大な将軍さまにはそのような胆力がないと、彼を教育した体験をもつ黄長ヨブ氏は証言しているのである。とは言っても気になる。ほっておくと躾に悪いし、構うにはばかばかしい。

 また、万に一つ、デポドンが予定した距離や方向に行かないことだって考えられる。北朝鮮が作ったものだ。なぜ、今、韓国も、日本も、アメリカも、経済問題で北朝鮮のことなど忘れているときに、また、アメリカから支援米が届いているときに、脅しをかけてきたのか。まさに、そのタイミングに注目すれば、北朝鮮の真意がわかる。大人は忙しくて、子供が少々いたずらをしても、悪いことをしても、構おうとしないからである。「どうせ自分で疲れてしまって、あるいは面白くないと感じて、静かになるだろう」と読んで、ほっといるのが、事の発端だと考えればいい。ややこしいのは、韓国や、日本、アメリカは、何事にも国内輿論を気にせざるを得ないことだ。

 万が一、ちょっとしたこと(海でのいざこざなど)が起こったら、北の脅しを無視した政権に批判が集まる可能性だってある。北に対してではなく、自分の政府に対して、非難の声を上げる可能性がたかい。それに、民主主義国家のマスメディアは騒ぎが好きである。金正日がそこまで読んでいたとすれば、大したものである。どうすればいいか。方法は、一つしかない。北朝鮮が嫌がりそうなこと、怒りそうなことは、そのままやり通せばいい。ある芸能人が「健康の秘訣は何ですか」と聞かれて、「体の嫌がることをすることです」と答えるのを、耳にしたことがある。「北朝鮮に対する政策で、一番効果的な政策はなんですか」と聞かれたら、僕は躊躇せずに「北が嫌がることをやることだ」と答えたい。例えば、今なら、北に怒らないことが、北にとっては一番いやなことのはずである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会