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2008-12-18 10:01

(連載)日本人の英語力について(1)

辻 正寛  会社役員
 いまさら指摘するまでもないが、東アジアにおいて、特に高等教育を受けた人口層で比較した場合、英語力でいちばん引けをとっているのは日本であろう。植民地化された過去を持たない歴史的経緯からして容易に説明がつく話である。宗主国の言葉を強いられたことがない上、日本語がたくみに他の言語や文化を吸収できる特性を持つ以上、必然的にそうなったという考え方には、一理がある。それに対し、このような現状に危機感を募らせる向きは、英語力の強化を訴え、幼少からの徹底した英語教育、そして一部では英語公用語化までも提唱している。むろん、そのような傾向を警戒し、国語教育の重要性を訴える「常識派」もいる。

 他方、植民地化され、否応なく宗主国の言葉を学ばされた過去を持つ多くの途上国では、英語あるいはフランス語といった欧米語を習得することは、過酷な現実の要請であり、日常であり、また時には独立を賭けた闘いの手段でもあった。彼らには、望ましい外国語教育とは何かをめぐり、あれこれ議論する余裕はなかった。だからこそ、とにかく彼らはその言語をマスターしえたのだ。その結果、いつしか途上国の人間のほうが、日本人よりも国際的に発信力が強くなったという歴史の皮肉を生んだ。たしかに彼らは英語あるいはフランス語で雄弁に語り、そしてしたたかな議論をしてみせる。そのような中、日本人が多少とも気圧されたとしても仕方がないだろう。

 とはいえ、世界は着実に動いている。そう悠長に構えておられないことも事実だ。たとえば人材育成だが、現在、留学生の意味づけはコペルニクス的転換を遂げつつある。どの国も、国籍を問わず有能な人材を獲得し、自分の国の発展に役立てるべく、非常な努力をしている。東アジアの国々とて、もはや発展途上という水準に甘んずることなく、優れた才能を世界中から発掘し、その育成に努めている。オックスフォードやMITといった欧米の一流大学がアジアにキャンパスを作り、優秀な学生には潤沢な奨学金をつけて青田刈りをする、ということも現実化している。先進国・途上国問わず「世界のフリー・エージェント」とでもいうべき若年層が誕生しつつあるのだ。(つづく)
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