国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-11-13 11:27

(連載)北朝鮮の変化に中国はどう対処するか(2)

武貞 秀士  防衛省防衛研究所統括研究官
 その4 北朝鮮の内部動向を注視する中国に対して、東北工程が絡んでの関心ではないか、と韓国は懸念を抱いている。「高句麗は中国の地方政権であった」という「根拠」が中国の北朝鮮への軍事介入の根拠になる、という指摘をする韓国人専門家もいる。韓国の懸念を中国がどう配慮するかは不明である。

 その5 韓国は中国と国交があり、中国と韓国の経済関係は、いまや北東アジアを動かす大きな要素である。中国が軍隊を北朝鮮に送る決断をするとき、韓国の民族意識を刺激してしまい、中国と韓国の関係が一挙に冷却することを、中国は知っているだろう。韓中関係が破綻することのリスクは、北朝鮮の危機状態収拾に乗り出し、成功したときの果実を考えると、計算が合わないことを中国は知っているのではないか。

 その6 90年代までの朝鮮半島と、現在の朝鮮半島では条件が異なる。北朝鮮は2006年10月9日に核実験を終えて、核保有宣言をした。そのとき「100パーセントわれわれの技術で核実験を実施した」と発表をしている。これは「中国とロシアに依存しない兵器を保有するに至った」という意味であり、「中国とロシアから軍事的に自立した」という宣言でもあった。北朝鮮の大量破壊兵器開発の背景には、北朝鮮の中国とロシアに対する民族主義がある。中国の北朝鮮への軍事介入を北朝鮮がやすやすと受け入れるとは思えないし、北朝鮮が受け入れてくれると中国は思っているのだろうか。

 その7 南北の関係を考えよう。南北首脳会談が2度実現して、韓国の南北協力基金が機能している。韓国が「危機管理状況下の北朝鮮」という状況を前に、米国、中国、日本の介入を許すだろうか。6か国協議が米中、米朝主導で進むときでさえ、韓国は心穏やかでなかった。北朝鮮内部の異変という事態を迎えたとき、韓国が最初に心配するのは、韓国が除外されることなのである。

 その8 北朝鮮の異変に際して、中国は迷うことなく積極介入するという議論があるが、「大事な友好国であり、唇歯の関係であるが、もっとも理解困難なイデオロギーを持った国家」と中国は見ている。良くわからない所に軍を投入し、首尾よくいって「もともと」で、うまくいかないときの軍事、外交上のダメージが計り知れないことは、容易に想像がつく。中国はその計算ができない国だろうか。

 その9 以上のことを考えると、北朝鮮の内部政治が急速に変化し始めるとき、中国の動きだけが突出するのではなく、韓国と中国の対立とけん制、米国と中国のかけひき、それに北朝鮮の内部変化が絡みあう、という複雑な様相が浮上するのではないだろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会