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2008-11-12 16:04

(連載)北朝鮮の変化に中国はどう対処するか(1)

武貞 秀士  防衛省防衛研究所統括研究官
 北朝鮮の指導者、金正日国防委員長の健康異変説に関連して、北朝鮮指導体制が急変する可能性、そのとき中国はどう出るかに関心が集まり、様々な議論が出ている。人民解放軍の単独軍事介入説、傍観説、米国、韓国との協調介入説などがあり、欧米メデイアが紹介をしている。北朝鮮情勢が短期間で激変するとき、中国はどう出るか。「北朝鮮指導部の異変、朝鮮半島情勢流動化、人民解放軍の北朝鮮介入」という話を聞くことが多くなったが、この点に関して、少なくとも、次の9つのことを踏まえておく必要があろう。

 その1 中国と北朝鮮の間には、1961年9月に発効した、中朝友好協力相互援助条約が存在する。条約に従えば、北朝鮮が侵略されたら中国は介入することになっている。第2条には、「両締約国は共同ですべての措置を執り、いずれの一方の締約国に対するいかなる国の侵略をも防止する。いずれか一方の締約国がいずれかの国又は同盟国家群から武力攻撃を受けて、それによって戦争状態に陥つたときは、他方の締約国は直ちに全力をあげて軍事上その他の援助を与える」とある。この条項は現在も有効であるが、北朝鮮内部の変化という事態に際して、この条約は適用されない。

 その2 中国の多くの専門家は中朝条約が同盟条約ではないと言う。たしかに、中国は平和5原則を対外政策の基本にしている。すなわち、主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存という原則の下で、全ての国と友好協力関係を確立、発展させることを目標としている。その原則のもとに、「独立自主の原則を終始履行し、如何なる大国或いは国家集団とも同盟締結及び軍事集団の形成をせず、軍備競争に参加せず、軍事拡張を行わない」という政策を堅持している。このことから、中朝友好協力相互援助条約が同盟条約であれば、平和5原則に矛盾してくる。

 そして、「覇権主義に反対し、世界の平和を擁護する。大小、強弱、貧富を問わず、全ての国家は国際社会における平等な一員である。国家間の紛争と衝突は、交渉を通じて平和的に解決すべきであり、武力威嚇と武力行使はあり得ず、如何なる口実による他国への内政干渉もしない」という方針を明確にしている。北朝鮮が内部混乱状態に陥ったときであっても、中国が軍事介入するなら、この原則に反することになる。

 その3 ただ、中国が「北朝鮮の求めに応じて、人民解放軍を送る場合」はどうなるか。「他国への内政干渉をしない」というときの「他国」に北朝鮮が該当するかどうかも微妙である。高句麗が栄えた地域は、中国にとって「完全な外国」ではないという見方もできよう。そのため、韓国と中国は「高句麗帰属論争」がきっかけで、東北工程の狙いや、長白山(朝鮮半島では、白頭山と呼ぶ)周辺の開発などをめぐり、緊張する場面があった。この東北工程には北朝鮮も警戒をしている。(つづく)
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