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2008-11-07 14:35

(連載)旧日本軍はそんなに立派だったのか(1)

大江 志伸  江戸川大学教授・読売新聞論説委員会特約嘱託
 前代未聞の「妄言」論文を寄稿の形で公表し、解任された田母神俊雄前航空幕僚長の一件について、主要新聞各紙はそろって厳しく糾弾する社説、論評を掲げた。擁護に回ったのは「歴史観封じてはならない」の社説を掲載した産経新聞のみであった。その中で秀逸だったのが、日本経済新聞(11月3日付)の「田母神空幕長の解任は当然」と題した社説である。「三自衛隊には四文字熟語を重ねてそれぞれの体質を冷やかす表現がある。陸は『用意周到・優柔不断』、海は『伝統墨守・唯我独尊』、空は『勇猛果敢・支離滅裂』がそれである・・・・田母神氏は典型的な航空自衛官だったのかもしれない」とある。

 田母神論文「日本は侵略国家であったのか」を一言で評するならば、日経社説の「支離滅裂」に尽きる。多くの識者が指摘しているように、田母神論文の論旨、視点とその論拠は、いわゆる「自虐史観」を唾棄する民族派論客のそれのつぎはぎに過ぎず、本来論評にも値しないものである。だが、執筆者が現職の航空自衛隊トップとあっては、随所に看過できない内容があることは否めない。ソウル、北京、バンコクに駐在し、歴史の現場を比較的多く見聞してきた私自身の視点から、いくつかの点について意見を述べたい。

 田母神論文は、「多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している」と断定しているが、事実誤認も甚だしい。旧日本軍の虐殺行為があったシンガポールやベトナムの反日意識はなお根強い。バンコクの古老からは、タイに進駐した旧軍の軍紀紊乱ぶりを聞いた。親日国とされるインドネシアのあるジャーナリストは、東京駐在中に旧軍のアジア侵略の実態を知り、「対日観が一変した」と肩を落とした。近年、東南アジア諸国の対日感情は、確かに良好である。だが、それは戦後日本の平和外交と現地の人々と真摯に向き合う駐在員など民間の努力の結果であることを、田母神氏は知るべきである。(つづく)
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