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2008-10-30 22:18

(連載)資源保有国は強者で非保有国は弱者か(1)

袴田 茂樹  青山学院大学教授
 最近、ある会合で国際エネルギー問題に詳しいマスコミ関係者の話を聞く機会があった。その専門家は、要約すると次のような見解を述べた。
 
 最近はエネルギー保有国の資源ナショナリズムなどが強まり、お金を出しても資源が買えないという状況も生じている。日本の企業がある国から資源を購入しようとしても、「日本は金持ちだから、どうぞ他の国から買って下さい」と断られることもある。資源を持たない日本は、資源保有国に対して苦しい対応を迫られている。したがって、日本は資源大国ロシアに対する対応を考え直す必要がある。たとえば、北海道を超えて、ロシアの択捉島や千島列島、さらにはサハリンなどとの経済協力を、もっと推進する必要がある。その先には、シベリア、極東の豊富な資源が存在しており、日本にとってそれは死活的に重要なものである。北方領土問題にあまりこだわるべきではない。

 これに対して私は、択捉島などで経済協力を進めるということは、事実上ロシアの主権を認めることになる、ということを確認したうえで、領土問題を離れて次のような見解を述べた。
 
 今の話によると、今後もずっと「資源保有国は絶対的な強者、非保有国は絶対的な弱者」ということになる。もしそうであれば、資源価格は永遠に上昇し続けることになる。しかし、実際にはあるところで価格は均衡し、状況によっては下落する。資源保有国の強さは「高価格を享受できる」ということであり、市場システムのもとでは、強さはこの高価格にすべて表現される。また非保有国の弱さは「高価格に耐えなくてはならない」ということである。強さ、弱さとは、それ以上でも以下でもない。高価格を享受する資源保有国は、その時点で独自の弱みを持つことになる。つまり、資源輸出国は経済体制も資源輸出インフラも、この高価格を前提にして整備が進む。そうすると、資源価格が下がること自体が、その国の経済や資源産業にとって脅威となるからである。もちろん、他の資源保有国との競争は常に存在する。顧客を他の国に取られることも、常に売り手にとって脅威である。(つづく)
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