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2008-10-03 10:15

入山氏の「阿南前中国大使の講演を聴いて」について考える

中山 太郎  団体非常勤研究員
 最近の中国問題を考える上で、新進気鋭の川島真東大准教授が最近のブログで「阿南大使の対中批判的な論述に驚いた」旨のコメントを述べ、そして入山映氏が10月1-2日付けの本欄「百家争鳴」への投稿「阿南前中国大使の講演を聴いて」で、最後では「めきき役としての活躍を望む」とは述べつつも、全体のトーンとしては、批判的に(私にはそのように受け止められた)述べておられる。私も講演を聞き、『学士会報』にも目を通したが、異なる意見を持った。阿南氏の講演者としてのパーフォーマンスは、誠実味に欠けると見られなくもない。「下手だな」と思った。しかし、その内容は、前大使としてギリギリのところを述べ、日本国民へ中国を考える上でのメッセージを与えていたように思う。

 政府発表の嘘、投下資金の使われ方の不透明性などについてであるが、前者について言えば、最近になってやっと騒がれだした食の安全については、中国で仕事をした多くの人間が前から問題にしていたことであった。後者については、知人の音楽関係者が中国でクラシックの公演を実施し、中国側が高い入場料を設定し、客が入ったのに、だいぶ赤字になったとこぼしていた。私からすれば、何をいまさらという気持ちだ。阿南氏は、中国の脆弱部分を強調している。自分が悪者になっても、日本と中国の心ある人たちに真実を語り、双方がより成熟した考えを持つよう願っているといるように思われる。欧米と異なり、日本と中国は隣国であり、うまく折り合いをつける以外、生存の道はない、と説いているように思われた。

 最近の週刊誌で、売れっ子の女性評論家が、外務省の中国支持派として同氏を挙げ、不支持派に別の人を挙げていたが、こうした黒か白かの二元論がわが国では通りやすい。言葉だけの世界にいて、現場の空気・実践に欠けるところがある。国際情勢、各国の実態、その対応策は、そう単純に割り切れるものではない。経済がこれほど相互に絡み合う関係の中で、経済交流は中国の軍事力増強に役立つ部分もあるが、中国の民生に役立つ面もあることを忘れてはならない。阿南氏の夫人は元米国人で、中国の環境問題、古代・中近世史、また仏教の日中交流などに貢献されている。NHKで放送されたので、ご存知の方も多いだろう。阿南氏は、あの小泉対中外交の逆風の中で、5年間も日中関係最悪化を防いだ。実践を伴わない、言葉だけの中国批判ではないのだ。工夫した対応が、日本の様々な場面での対中対応に求められる。阿南氏の論述は、その一助になるものだと思う。
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