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2008-09-18 16:12

(連載)外交政策の一環としてのODAの戦略性(9)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 新JICAの誕生を契機に、従来のようにわが国のODA政策の形成と実施が無償資金協力、技術協力、円借款という形でそれぞれ個別に供与されるのではなく、国別・地域別援助計画という中で統合的に計画・実施されることは望ましい。そうすることによって、従来のような援助供与形態別の縦割り体制からくる不透明性、非効率性を排除でき、わが国と被援助国両者における無駄な援助要請・検討手続きなどの行政上の取引費用を削減できる。

 1983年に外務省が設置した「経済協力評価検討会」の指導の下で、援助効果の改善のために無償資金協力、技術協力、円借款の有機的連携を強化する諸々の方策が講じられてきたが、1990年代初頭に始まった国別援助調査研究プロジェクトの勧告に基づき、また主要援助国、国際機関に習って、90年代後半以降には国別援助計画の策定が進んできた。現在では、わが国の主要な被援助国については既に第一次、第二次援助計画が策定されている。

 被援助途上国の主要援助国や国際機関に対する不満は多々あるが、その最大の苦言の一つは援助国・機関間における援助申請手続きの多様性と複雑性であり、近年OECD/DACで合意されたパリ宣言を中心に申請手続きの調和化が、ハノイ、ガーナでも議論されてきているが、同じ途上国の不満はわが国へのODA申請手続きについても投げかけられている。無償資金、技術協力、円借款はその資金源泉や実施期間、用途から、それぞれ異なった申請手続きがあり、この簡素化ないし共通化に対する途上国の要請は、頻繁である。特に、弱小途上国の場合には、国家公務員の数や質も限られており、申請手続きの多様性、複雑性は、大きな「行政費用」、「取引費用」である。わが国の援助実施機関は、被援助国の対日担当官に対する援助行政手続研修を通じて、この問題に対応しているが、苦情は後を絶たない。(つづく)
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